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ブックレビュー:「限界のタワーマンション」今の日本にタワーマンションは必要ない?

個人的にはタワーマンションは好きなのですが、違った見方も知ってみようと、タイトル通り「タワーマンションは限界にきている」と主張するこの本を読んでみました。

榊 淳司 「限界のタワーマンション」2019年

筆者の言う3つの「タワーマンションの限界」

筆者は一貫して「日本にはもうタワーマンションは必要ない」という主張をしています。その論点は主に下記の3点です。

1.タワーマンション建築により社会問題が発生する

<筆者が挙げている社会問題>
・駅や電車の異常な混雑
・保育園や小学校などの不足
・郊外の空き家を増やし、ニュータウンの高齢化を助長
・近隣住民への日照阻害、風害問題

2.タワーマンションは30年後には廃墟化する

筆者は下記のように述べています。

「タワーマンションに限らずマンションは15年に1度程度、大規模修繕工事が必要となる。建築コストが日々増大しているし、30年後となると区分所有者も高齢化している。エレベーターの交換には1基につき数千万円の費用が想定され、配管の取り換えなど工事費用は1回目の1.5倍程度となり、その実効性は疑わしい。
タワーマンションの場合は、上層階の外壁修繕に大きな課題があり、ノウハウを持った企業は限られており、これから修繕ラッシュとなっていった場合に、発注が集中することによっても価格は高騰するだろう。」

もちろん、すべてのタワーマンションが廃墟化するわけではなく、管理組合がしっかり機能していれば、長期的視野に立って運営を行い「ヴィンテージ化」して価値をあげるタワーマンションもあると言及しています。

3.タワーマンションは災害に弱い

・長周期地震動や長周期パルスなど、「新耐震基準」でも安全性が確保されていない地震が起こる可能性
・エレベーターの停止
・電力停止による断水
・タワマン住民で避難所があふれる

いくつかタワーマンションに限らない事例も記述されていますが、大地震が起きてエレベーターが止まり、断水したとき、タワーマンションは怖いという思いは私にもあります。以前マンションが火事になり3階から避難しましたが、これが30階から階段を降り、途中住民達で混雑したら危ないなとちょっとぞっとします。

もちろん「住居選び」はその人の価値観によるもの

この本には、上記以外にも、タワーマンションで育った子供は学力が低い傾向があるとか、階層意識が強いとか、健康被害が報告されているとかそんな話も出てきます。
(個人的にはちょっと言いすぎかなと思ったりします。)

この本で記述されている問題が、「タワマン」の問題なのか、日本や特定行政庁の住宅政策の問題なのか、経済合理性に傾倒しているディベロッパーの問題なのか、しっかり意識して読み進めたほうがよさそうです。

リスクを理解して対策を取る

何よりも高層階からの眺望を重視する人や、コンシェルジュのいるホテルライクな暮らしを希望する人もいます。それによって達成感や満足感を得られるのであれば素晴らしいことです。
上記のリスクを認識して対策を取り、タワーマンションを選択することも私はいいと思います。住居選びはその人の価値観によるものだからです。

ただ一つ言えるのは、日本社会全体にとってマンションをどんどん建築していくフェーズではないということです。そりゃ新しい設備の新しい家に住みたい気持ちはよく分かります。結婚と同じく長い間それが「幸せのかたち」とされてきていることもあります。でもそれは、高度経済成長期、住宅が不足していた時期の価値観なのではないかとふと気づくことがあります。

日本の住宅政策は転換期に来ていると思います。各住宅会社やディベロッパーが次の時代の価値を積極的に模索するのももちろんですが、政治的にも住宅政策を思いっきり変えるような勢いがほしいですね。

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