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拍手笑いで祝福を

これは私が漫画編集者をやった2年間の話
あくまで漫画
ですが、バンド好きの方が読むならバンドの業界だと思って、
アイドル好きが読むならアイドルの世界のことだと思って読んでください
そう、たとえばお笑い好きが読むならお笑いの世界のことだと思ってもいいかもしれません。

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漫画の出版社で働き始めてわりとすぐ、自分が編集者として単行本を売りたいと思う漫画家さんを決めていいという機会をいただいた

私は迷わず、私を漫画編集者になりたいと思わせてくれた漫画家に声をかけた

結論から言うとその単行本はあまり売れなかった
でもとてつもなく面白い漫画だった
私は夢が1つ叶って心底嬉しかったけど、原稿料をまともに支払えなかったことは心残りだった

そこから好きな漫画家に次々に声をかけて単行本を作った
webでそこそこ見てもらえて原稿料が支払えたものもあった

もっと返したいと思った
もっと原稿料を支払う価値のある漫画だと思っていた
私の発信の仕方や、ともするとわたしのパッケージングがよくないのだと思った
漫画家自体はとても面白いのに、私がもっと見てもらえる単行本にできていないのだと思った

しかしそんななか、編集長だか副編集長だか偉い人に間接的に言われた言葉にショックを受けた
そんなに原稿料の支払えない漫画など作る意味がないと言われたのだ

私は悔しかった
ある意味ではその通りだともわかっていた
だがそれはあくまで、自分のやり方次第なのだからもっと頑張れと言われているのだと思っていた
なぜなら漫画家自体は絶対に面白い漫画を描ける人であり、それを世の中に伝えられていないだけなのだから。
漫画家が面白いということは疑いようのない真実であり、それを否定されることなんてある訳ないと思ってた
いつかこの面白さが伝われば、初期の段階から単行本を出していたこの出版社自体にお客さんがたくさんつく未来が必ずあると信じていた

だけどそれは違った
その偉い人は、そういう意味で言っているのではないと知った
そんな売れない漫画家の漫画は、存在自体価値がないのだとどうやら思っているようなのだった
信じられない まじですか?
さあ?本心は今でもわからない
だって直接言ってくれることなんて一度もなかったから
せめて文句があるなら私に直接言ってほしかった
中間の人を介して伝えられた時点でそれは、バイアスがかかって屈折した意見として私に届いている可能性が十分にあるとわかっている
だけど私には、「直接伝えて指導しない」ということ自体がもうメッセージとして伝わっていた

私には直接意見してもらえることもなく、
私の意見を直接聞いてくれることもなく、
私が直接意見しに行ったところで今度は「厄介なやつ」として扱われることは目に見えていたし、
よく考えたらそういう会社だったんですよね、
重宝されるのは事勿れ主義でそもそも新しい漫画を作ることの1つもしやしないクッションみたいな人間で、
私だって成長しているのにその成長ぶりを認めたり考えを改めたりしてくれることもなく、

ただ現在の数字だけを見てどこかで何かを言っているらしいという存在が私のほんとうの敵だった

だけど私にはそんなことどーでもよかった!
だって私は
まずこの漫画を面白がってくれるお客様(読者)のためにこの漫画を作っていたし、
次にその漫画家さんのためになる漫画を作ろうとしていたし、
ついでに自分が面白いと思うものを少しでも世界に増やしたいから自分のためにやっていた

会社のために作ろうなんてこれっぽっちも思っていなかったですよーーー!

米津玄師だって、ハチ名義の1番最初の曲からバチクソ売り上げていましたか?

じゃあだからって、ハチの初期の頃には何の価値もないと会社は言いたいのでしょうか?

私はまっっっっったく、そうとは思いませんけどね!!!!!!!!!!!!!!!

そんな折、突然私は他の業界からご縁をいただくこととなった
転職活動を自らの意思でした訳ではなかったのだが…
そこらへんの事情は省くが、色々あってこのまま漫画編集者を続けるか、それとも他の業界一本でやっていくかを選択しなければいけなくなった

そうなった時、漫画家さんのことは大変惜しく愛おしく美しく思っているのだけれど、
もうこんな信用できない会社に居続けてこんなに面白い漫画家さんの漫画を任せていただく必要はないと思った

同時に、何にも頑張れない自分が嫌になって余計頑張れなくなってしまった
これはずるい言い訳かもしれないけれど。

私なんかが頑張らなくても、面白い漫画家の面白い漫画はずっとこの世界にあり続けるのだと思い込むことで呼吸を楽にすることを覚えてしまった
事実ずーっと最初っからそう思っているんだし

11月からOLになります
漫画編集者ではないけれどエンタメを作るお仕事の端っこにはいると思うので
またどこかでお会いできたら嬉しいです
裏表紙の端っこから、
ライブハウスの暗闇から、
インターネッツのどこかしらから
あなたを応援しています

この仕事でわかったことが1つある。
私の仕事への価値観だ
人生の価値観といってもいいかもしれないね
明確にわかってよかったと思っています

世界中の人がいいと言っているナンバーワンの漫画を私はあんまり面白いと思えない気がするけれど、
(ワンピースもちゃんと読んだことがない)
それよりも私が面白いと思うものを大切にしていきたい
もっと大切にする強さを、手段を、身につけたい
それは今はまだ、そしてもしかしたらこの先も世界中の人が共感できるような物語じゃないのかもしれないけれど
私にとっては最高の物語であって人生でしかない
世界一以外の物語にも、存在する価値は絶対にある
それが世界一になった時には意味がないとか言ったやつざまあ見やがれ!と言いたいところだけど…みんなで笑って拍手笑いで祝福してください

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これが私の漫画編集者としての人生を生きて感じたこと
読んでくれてありがとうございました

あくまであくまで漫画の世界の物語でしたが

もしそれ以外のジャンルを好きな方が読んでくださったのならその業界に重ねて読んでいただければと思います

あくまでも私が感謝を伝えたいのはその私が関わった漫画家さんですが
念のため以下有料記事にてその漫画家さんのお名前を…(儲けるつもりなし、買ってくれた方にはジュースおごって返します、あくまでネット上に鍵をかけた状態で置いておく意図)

とかも考えましたが逆に迷惑になったりしてしまいたくないのでやめておきます

読んでくれたあなたが、心の中で想像してください。
そしてあなたも、あなたの面白いを大切に生きてください
いい世界にしましょう…死ぬまで生きるこの世界を。


都築つみ木 改め お茶飲みOLレイナ

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