「子どもに良い昔話絵本を……」との願いがこめられた、「子どもとよむ日本の昔ばなし」シリーズ～当時の担当者から、こだわりを聞いてみた～

「子どもに良い絵本をあたえたい」
親にとって、大きな願いの一つだと思います。

私も、今3歳と0歳の子どもがいますが、子育てをする中で、特に夫婦で迷っていたのが、「昔話絵本の選び方」でした。

今、昔話は、アニメや現代風のものから、昔なつかしいような絵柄のものまで、幅広く出版されています。いったいどれを選んだらいいのやら。

ベテラン社員からは、くもん出版の「子どもとよむ日本の昔ばなし」シリーズ（全30巻）をすすめられたので、とりあえず数冊買って読み聞かせていたところ、驚いたことがおきました。

3歳の息子が、お気に入りの『かさじぞう』を自分で開いて、声に出して読んでいたのです。まだ、ひらがなは読めないはずです。

「えっ、ひらがな読めるの？」と聞いたら、
「ううん、知っているの（たぶん、覚えているといいたい）」というから、びっくり！

たしかに、くり返し読み聞かせしていましたし、読んであげている最中に、気に入ったフレーズを声に出していましたが…
１人でページをめくって、その部分を読めるとは、信じられませんでした。

なぜ、絵本を覚えられたのか、不思議に思っていたところ、当時の担当編集者が、偶然、私の目の前に座っている社員だったので、聞いてみた話をまとめました。

▲ひらがなは読めないのに、音で覚えて声に出す息子。『かにかにではれ』の「かに」が動いている様子「やざもざやざもざ」という表現も大好きです。

【担当編集にききました①　くり返し読み上げられて作られた絵本】

このシリーズの制作にあたっては、まず再話者の小澤俊夫先生、小澤先生が主宰する「昔ばなし研究所 再話研究部」の方々、くもん出版担当者の全員が、読み上げられる文章を耳で確かめていきました。
昔話の語り口がきちんと守られているか、それぞれの場面がクリアーに頭の中で思い浮かべられるか、リズム・テンポがよいかなどを厳しくチェックしていきます。
そして、書き直された文章を、また読み上げます。こうした作業を一冊につき何度も何度もくり返して、文章を確定させていきました。
また、各地に伝わる何百とある昔話のなかから、対象年齢や、話のバリエーションという観点で、シリーズの30話が選ばれました。決定した話は、それぞれの土地の言葉で語られているので、監修者である小澤先生と「昔ばなし研究所再話研究部（当時）」の方々が共通語に再話されていきました。

子どもにこのシリーズを読んだとき、とても読みやすかったと感じました。その秘密は、読み上げることにこだわった、丁寧な作られ方にあるのかもしれません。

【担当編集に聞きました②　昔話を表現する絵のこだわり】

昔話を絵本にするには、昔話の性質を理解し、語りの世界を再現できる絵が重要です。小澤先生の著書や小澤先生の主宰する昔ばなし大学で、昔話の語り口やこめられたメッセージを学びながら、編集制作にあたりました。また、子どもたちに様々な絵に触れてほしいという願いから、墨絵あり型染ありと、様々なタッチの12人の画家を選びました。
さらに、「語り口を無視した目立ちすぎる絵にならないよう、画家の方々には、二次元のリアルさを追求していただく」「絵も小澤先生に監修に入っていただき、建造物から、衣装などの小道具に至るまで、細かくチェックしていただく」など、絵本としての軸や、当時の生活がきちんと描かれるという点もこだわりました。
絵と文章が合わさったあと、「耳で確かめる」ということを基本に、最終確認が行われました。耳で聞いてわかりやすく、声に出して読みやすい文章が、このような過程でようやく確定し、徹底的に吟味された文章と、絵が織りなす昔話の世界が完成しました。

読み聞かせをしていると、息子からは、
「これなあに？（かさじぞうのかさを指して）」
「いまのおうちと違うね」
という問いかけもありました。
そんな息子との会話を楽しみながら、読み進められるこの絵本は、絵も本当に魅力的だと感じました。

【子どもたちには、良いのものをあたえたい】

「子どもとよむ日本の昔ばなし」は、携わったすべての人がこの思いのもと、「子どもがはじめて出会う本」のひとつとして作り上げ、世に出すことになったシリーズだったということがわかりました。

このシリーズのこだわりを知り、わが家の日本昔話にこのシリーズをむかえて本当に良かったです。楽しみながら、そろえていきたいと思います。

もし、子どもにどんな昔話をあたえるか迷ったら、ぜひおすすめしたいシリーズです。

「子どもとよむ日本の昔ばなし」シリーズ　全30巻
●判型：Ａ５変型判／上製カバー装／各48ページ
●定価：各495円（税込）
※セットの販売もしております。
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