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『大人になるってどういうこと?みんなで考えよう18歳成人』 ためし読み①~親の同意なしにどんな契約もできる~

2022年4月から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
今回は、『大人になるってどういうこと? みんなで考えよう18歳成人』(著:神内聡)の「第3章 18歳成人で変わること、変わらないこと」の一部をご紹介します。


普段の買い物も立派な契約

18歳で成人すれば、親の同意がなくても原則として一人でどんな契約でも結ぶことができるようになるんだ。
でも、未成年者だって一人で契約を結んでいるって思った人もいるんじゃないかな。例えば、スーパーやコンビニで一人で買い物をする、お昼ご飯を買う、お金を忘れたときに友達に借りる、といったことだ。確かにこれらも立派な契約だ(売買契約、消費貸借契約)。

しかし実を言うと、これらは未成年者一人だけの意思決定で結んだ契約ではないんだ。民法では、保護者が目的を定めて処分を許した財産であれば、その目的の範囲内で子どもが自由に処分することができると定めている。要するに、未成年者でもお小遣いやお年玉で買い物が好きにできるのは、保護者の許可のおかげということなんだ。

親に内緒で隠れ家も

でも、18歳になってお金さえあれば、高価なものも一人で買えるし、クレジットカードもつくれる。車の免許があれば、車も買える。知り合いに保証人になってもらえれば、アパートだって借りられる。

もしかしたら、あなたが18歳になったことを知った友達が、あなたの名義で高価な買い物をしたり、アパートを借りて親に内緒で「隠れ家」にしたいと頼んできたりするかもしれないよ。

でも覚えておいてほしいのは、あなたが結んだ契約は原則として取り消せないということ。
すなわち、あなた一人でどんな契約も結べるということは、未成年のとき以上に責任をもって行動しなければならないということなんだ。

大きな借金に要注意

成人すれば、高校生であっても、親の同意なしにお金を借りることだってできる。でも貸す側からすれば、いくら頼まれても返済能力の乏しい高校生にお金を貸すのはリスクが高い。だから、銀行などの健全な金融業者は同意の代わりに親に保証人になってもらうなどするので、事実上本人だけでお金を借りることは難しい。

しかし、中には保証人が不要で、返済能力の審査が緩い学生用ローンがある。そういう業者とは18歳でも単独で借金の契約が結べてしまう。その結果、高校生が返済できないほどの大きな借金を抱えてしまう恐れがあるんだ。学校が校則で生徒がお金を借りるのを禁止にはできる。でも、校則を破って借金しても、返済を免れるわけではないので要注意。

結婚に親の同意は不要

実は結婚も契約の一種なんだ。したがって、他の契約同様、2022年3月までは18歳は未成年なので、結婚には親の同意が必要。それ以降は、新郎新婦だけで結婚が可能だ。結婚できる年齢も男性が18歳以上、女性が16歳以上と男女で差があったものが、男女とも18歳以上に変わったんだ。結婚は高校生同士に限らず、学外で付き合っている大人とでも構わない。なお、親は、子どもが知らない間に婚姻届を出したとしても、取り消すことはできないので注意しよう。

近年では「主夫」として家事に専念する男性も増え、男女とも結婚を機に会社を辞めることを「寿退社」と言うことがあるけど、結婚を機に学校をやめる「寿退学」が出てくるかもしれないね。

ただし、学校が「学業に支障がある場合は在学中の結婚を禁止する」「在学中に結婚する場合は学校と相談しなければならない」といった校則をつくることは十分考えられる。

(『大人になるってどういうこと みんなで考えよう18歳成人』(著:神内聡)第3章 18歳成人で変わること、変わらないこと 42ページ~43ページより引用)

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神内聡
1978年、香川県生まれ。弁護士、兵庫教育大学大学院准教授。東京大学法学部政治コース卒業。同大大学院教育学研究科修了。中高一貫校の社会科教師として勤務しながら、各地の学校のスクールロイヤーとして活動している。テレビドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」の法律考証や、「公共」の教科書執筆なども担当。著書に『学校弁護士』(角川新書)、『スクールロイヤー』(日本加除出版)など。