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【佐藤亮子さんインタビュー⑤】くもんのカードが愛されるわけ。ママ・パパへのメッセージ付き

豊かな教育実践で注目される「佐藤ママ」こと佐藤亮子さんが、これからの子どもたちに一番大切な力だという「読解力」。
佐藤さんには、「読解力」を育む育児、幼児教育とは……という視点で子どもたちへの働きかけや学習を振り返り、その実践方法を子育て中の保護者の方々へのエールとして盛り込んだ『我が家はこうして読解力をつけました』を執筆いただきました(2021年3月)。
インタビュー最終回は、くもんのカードのことをお聞きしました。
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―佐藤さんとくもんのカードの出会いを教えてください。


長男が生まれたときに、『童謡カード』を全部そろえたことがきっかけです。正確な歌詞で歌いたいと思って、『童謡カード』を見ながら歌っていました。そうすると今度は『童謡カード』の中に書かれているひらがなに興味を持ったので、『ひらがなことばカード』を買いました。その流れで、次に数字に興味を持ち、『かずカード』を与えるといった具合で、自然とくもんのカードが増えました。

調べてみると、くもん出版はたくさんの種類のカードを開発していますね。全部のカードが同じ大きさで、非常に扱いやすいです。子どもが触っても危なくないよう角は丸くなっているので、私は安心して子どもたちに渡していました。いろいろなカードを買いましたが、子どもが癒される、まるで絵本の中から抜け出したようなイラストが多いので、楽しく使え、安心して与えられました。
また、小さな子どもはカードを次々めくるので、絵本のように使えます。楽しみながら見るので、自然に何となく覚えてしまうのです。字の大きさも程よく、子どもにちょうどいい。結局、どんどん買い足して、全部使いました。
くもんのカードはよく利用して馴染みがあるので、思い出深く、今でも親子の話題にあがります。

―カードを使うポイントを教えてください。


親も子どもにたくさんの言葉がけをしたいけれど、どんな言葉をかけていいのか分からなかったりします。そんなとき、カードを持って「このカードは、〇〇だね」と話しかけると、話が膨らんでいきます。

親子でコミュニケーションをとっていると、子どもも「これは、何?」と聞いてきたりするので、お互い会話が増えます。
例えば、「(読んだ)絵本に△△が出てきたよね」と絵本に登場したものと、カードを結び付けると、より知識が深まります。コミュニケーションツールとしても使えますし、カードにあるひらがなを覚えることもできます。

ひらがなは単体で覚えるのでは意味がありません。つまり、「あ」や「い」だけでは意味がなく、「あり」や「いぬ」という固まりで覚えてはじめて、子どもは理解できるのです。

そうなると、ひらがなは五十音で覚えるのではなく、単語で覚えることが効果的なのです。そこでカードが活躍し、カードで見慣れたものを、さらにくもんのプリントなどに書いて覚えるという、自然な流れが作れます。ぜひカードを活用してみてください。

―おすすめのカードや実際にどのように使われたかを教えてください。


最初におすすめしたいのは、この『ひらがなことばカード』1~3集です。これを買ったとき、「あし」(足)など、まず子どもたちにとって一番身近な、自分の体の部位のカードを見せました。「あし」(足)「て」(手)のように、子どもにとって馴染みあるものから見せてあげれば、見せる順番は気にする必要はありません。

イラストを見ると分かるのですが、例えば、手なんて小さくてかわいいですよね。当時、私は実際に子どもたちの手と比べていました。子どもは自分の身近にあるものを見せると、すごく喜びます。「くち」(口)「はな」(鼻)……など楽しめるカードは、いくつもあります。そう、子どもって鼻を触ることが大好きですから、遊びながら盛り上がりますよ。

そして次に、身近な食べ物を見せてみましょう。
「りんご」などは馴染みがあっていい題材ですよね。また、このイラストも小さな子にも分かりやすくて、お気に入りでした。そして、何と言っても、くもんのカードの一番の魅力は、この穴だと思うのです。これは非常に便利です。
なぜかといいますと、このカードを10枚持って行こうと思って、10枚用意しても、外出先でバラバラになってしまうことがよくあったからです。そこで、私は文房具コーナーなどで売られている「リング」を使って、この穴に通し、それをカバンの中に入れて、自宅以外でも頻繁に持ち歩いて使っていました。リングに通してカードをまとめると、子どもでも簡単にめくれ、バラバラになりません。いつでもどこでも、何度も何度も繰り返しでき、絵本の代わりにもなるので、非常におすすめです。

りんごが好きな子がいたり、みかんが好きな子がいたり、子どもが興味をもつものは、実にさまざまです。このカードを使えば、まずイラストが目に入り、そしてつい、文字も見てしまいます。「目に入った」という自然な流れが、「なんとなく覚えちゃったな」という感覚で、大人が覚えなさいと言うよりずっと子どもたちの知識につながりやすいのです。我が家はこのカードを使って、楽しく遊んでいました。ひらがなはこのカードを使って楽しく覚えられるといいですね。

次におすすめしたいのが、『俳句カード』です。俳句は日本の文化の1つですので、私は子どもたちの耳に残したいと思い、『俳句カード』を買って、子どもたちにたくさんの俳句を読みました。
くもんの『俳句カード』は、表面に俳句の出だしの文字や、情景がイメージできるイラストが描写され、そして裏面は大人が読めるよう、俳句の全文と簡単な解説が書いてあります。このカードを見れば、意味もきちんと書いてあるので、大人が調べたりする必要もなく、なるほどなと思うわけです。
私が一番気に入っている一句は、「梅一輪 一輪ほどの 暖かさ(服部嵐雪)」です。
実は我が家にも梅の木があり、本当に一輪ずつ、寒い冬に咲いていくので、子どもたちに「梅が咲いたよ」と教えると、子どもたちも「“梅一輪 一輪ほどの 暖かさ”って本当だね!」と返してくれるのです。「あぁ、春が来るな」と身をもって感じることができるので、必ず自宅の梅の木と一緒に、『俳句カード』を見せていたものです。そういった意味で、私にとって非常に思い出深いカードです。

さらに私は、子どもに俳句を通して「日本の豊かな四季を心から感じとってほしい」、また、それを「言葉として感じとってほしい」と願っていました。
俳句にうたわれているその言葉自体が、高尚で気品のあるものなので、それを子どもたちに伝えたいと思うと、子どもにとって見やすいイラストも大切な要素です。まずは視覚を通して「なるほど」と理解しやすくなりますし、さらに俳句は短く読みやすいので、繰り返し読んであげることで、耳の中に音声として残ります。それが子どもたちの教養につながるのです。教養豊かな子どもに育てるためにも、ぜひ家庭で俳句を読んでいただきたいなと思います。

俳句は短い言葉で第三者に伝えるという、すばらしい日本の文化だと思います。限られた言葉で人に伝えるためには、洗練されていないとうまく伝わりません。『俳句カード』には洗練された言葉がイラストとともに丁寧にまとめられているので、それらを子どもの耳にたくさん入れることによって、子どもたちの言葉の文化も、またさらに洗練されていってほしいと願っています。

―今回のインタビュー連載も最後となりました。ママ・パパへメッセージをお願いいたします。


子育て世代のご家庭は、常にバタバタといそがしく、毎日大変かと思います。子育てはなかなか思い通りにはいきません。実際、子どもに「これをしなさい」と言っても、なかなかしてくれないという保護者からの悩みはとても多く、私も頻繁に耳にします。
仮に、大人が子どもに対して10個してあげたからといって、その10個すべてが役に立つことはほとんどありません。やってはみたけど、子どもが「覚えなかった」「楽しまなかった」「効率がよくなかった」などという話は、よくあることです。

大体10個のうちの3つ、子どもが「楽しかった」と言ってくれたら、それでOKだと思ってください。逆に、残り7つを無駄だったと思うのは、よくないと思うのです。どれが子どもに響くかは分からないけれど、「とりあえず、10個全部やってみよう」と思う気持ちを大切にしてみてください。

効率を求めると、なかなか子どもは育ちません。「無駄を恐れない」ということです。無駄かもしれないと思うこともありますが、とりあえずやってみて、子どもが気に入ってくれたらラッキーといったスタンスでいると、親も気持ちが楽になると思います。 
親の心の余裕というのは、子育てにおいて大切です。子育ては、あれやこれやと多くの手間がかかりますが、案外、子どもはすぐに成長して大きくなります。どうしたって、子どもは今より小さくならないのです。

まずは、子どもがやっていることを親も楽しんでみてください。子どもと一緒になって楽しみましょう。そして、子どもが新しいことを覚えたら、親である私たちもすごいねと喜んで、共感する姿勢をもちましょう。
子どもと一緒に、楽しく、ゆるく、とりあえずやってみることが、子育ての難しいところでもあり、醍醐味でもあると思います。
子どもというのは、ともすると無駄が多く、効率的ではないけれど、そこが子どもらしく、かわいいものです。愛おしい日々を実感しながら過ごしていくと、子育てはもっと楽しいものになると思います。

(本企画は佐藤ママスペシャルインタビュー動画をもとに再編集し、記事化したものです。)
※表紙写真画像:pixta

佐藤亮子さん

大分県生まれ。大分県内の私立高校で英語教師として2年間教壇に立った後、結婚。その後は専業主婦として3男1女の子育てをし、お子さんたちがそろって東京大学理科三類に進学したことで、メディアを通じ「佐藤ママ」として注目を集める。その子育てにまつわる著作物の刊行や、中学受験を中心に子どもの勉強に悩むご両親を対象にした講演会に多数登壇している。くもん出版から『我が家はこうして読解力をつけました』を出版した。

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