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この絵本を昔の自分に伝えたい!『すきなこと にがてなこと』作者・新井洋行さんメッセージ

大人気の絵本作家・新井洋行さん。
2020年に刊行した『すきなこと にがてなこと』(作・新井洋行 絵・嶽まいこ)は、「多様な人々が共生をめざす社会」を生きる子どもたちに、自分を認め他者を認め、支えあうことの素敵さを伝える絵本です。

現在、ふたば書房様では「子どものための100冊」企画の一環として、各店舗の児童書担当スタッフの皆さんが選んだお気に入りの絵本・児童書を集めたフェアが開催中です(2022年4月29日(金)~6月末)。『すきなこと にがてなこと』を選んでくださった御池ゼスト店の児童書担当様からはこんな感想をいただきました。

この絵本が教えてくれる大切なこと。
それは、すぐ無理、出来ないって逃げてしまわないこと。
人にも、動物たちにも個々それぞれで、好きで得意なこともあれば苦手なことがあるのは当たり前。
だったら、苦手なことは助けてもらって、その代わり自分の好きなことで助けてあげたらいい。
自然と助け合いが生まれてくるのではないかなと思います。
幼稚園、学校はもちろんのこと、仕事場でも生かせるこの絵本。シンプルだから、子供から大人まで読んで欲しい一冊です。

作者・新井洋行さんにも、メッセージをいただきました。ぜひご覧ください。

ふたば書房様フェア展開の様子

僕にはでっかい「にがてなこと」が3つあります。
人前で話すことは一番苦手です。人前に出ると頭が真っ白になって、手足とか声とかふるえちゃうほどです。

きれいに字を書くことも全体的に苦手です。丁寧に書いたつもりが、後で見返すと「誰が書いたんだ、この汚い字は」という感じになってしまいます。
じっとして作業をつづけることも不得意です。学生時代、45分、50分、机に座っているのがすごく苦手でした。

一方で「すきなこと」もたくさんあります。スポーツをするのがすごく好きで、子どものころは体育が大好きでした。いまでもサッカーをしたり、フットサルをしたり、バドミントンをしたり、走ったり、よくしています。

人と人を繋ぐのもすごく好きです。

たとえば、それぞれ知らない同士の人たちを集めて、一緒に遊んだり、スポーツをしたりして、周りのみんなが仲良くなるのが大好きです。

ただ、そういう会を開くと、自分が前に出て挨拶をしなければいけなくなります。

「すきなこと」と「にがてなこと」がセットで起こるのです。

でも「すきなこと」がセットであればワクワクします。苦手でも必要なことであれば頑張ってみたりとか、人前に出て挨拶するのが得意な人が代わってくれたりとか、この本にかかれている通りにできます。

僕の一番「すきなこと」は「絵を描いたり物を作ったりすること」です。

このことを仕事にしていくと、「にがてなこと」は、学生のときのように「必ず毎日やりなさい」とか、「このときは君がこれをやりなさい」というものではなくなってきます。

人それぞれ「にがてなこと」・「すきなこと」があり、社会ではそれが仕事に置きかえられます。
じっとして作業するのが好きな人、得意な人にはそのことを生かせる仕事をしていただいて、人前で話すのが好きな人にはそういうことで社会を盛り上げていただく。自分は絵を描いたり物を作ったりするのが好きなので、喜んでもらえるものを一生懸命作り、それ以外のことは他の人がやってくれる。そういうことを強く感じました。

でも、僕が子どもの頃は、「にがてなことをみんなと同じようにできるようといいね」と教えられたので、できないことが悩みでした。
できるだけみんなと同じように「ふつう」になろうとするから、自分だけが苦手だと思いこむ人も多いと思います。

そんな悩んでいた子どもの頃の自分に
・「すきなこと」と「にがてなこと」はみんな持っていて、「にがてなこと」があっても、それを友だちが助けてくれたり、大人が助けてくれたりする
・「すきなこと」で自分が人の役に立てて、「にがてなこと」があったとしても、それによって人と繋がれたり、補い合えたりもする
ということを伝えたい。

そして、子どもの頃の僕と同じように「にがてなこと」に悩んだり、なんで自分はできないんだろうと思ったりしている人に、

みんな「にがてなこと」もあれば「すきなこと」もあるし、両方があるからこそ、人それぞれ個性があって繋がり合って、社会ができているんだよ
ということを伝えたくてこの絵本を書きました。

「にがてなこと」がなくて「すききなこと」だらけだよという人も

「じゃあ、みんなどんな好きなことがあるんだろう」
「苦手なことがある人って、どんな苦手なことで悩んでいるんだろう」
「自分はどういうことをすれば人の役に立てるんだろう」……

そんなふうに思いながら読んでいただけると嬉しいです。ぜひ読んでみてください。

新井洋行さん
1974年東京生まれ。絵本作家・デザイナー。絵本に『れいぞうこ』(偕成社)、『いろいろ ばあ』(えほんの杜)、『みず ちゃぽん』(童心社)、『しろとくろ』(岩崎書店)、『ちゅうちゅうたこかいな』(講談社)、『カラフル アニマル』(コクヨ)、『いっせーの ばあ』(KADOKAWA)、『おばけとホットケーキ』『しゃかしゃか』(くもん出版)など多数。

『すきなこと にがてなこと』詳細ページはこちら
新井先生の新刊『リモコン』が7月下旬発売予定です。