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つみき工場に行ってみた

訪れたのは東海道・山陽新幹線「岐阜羽鳥駅」から車で約60分、美しい城下町と名水で有名な岐阜県郡上八幡。

ここに「図形キューブつみき」を製造している工場があります。

「図形キューブつみき」は、2005年から販売している(当時の名称は「ずけいキューブつみき」)人気商品です。お客様により良いものをお届けするために、工場の方々とくもん出版が試行錯誤を続けてきました。

今回は「図形キューブつみき」がどのようにして製造されているのか、note担当の“こみけん”が取材します。

「図形キューブつみき」の工場に潜入


「図形キューブつみき」に使われる木材はどれ?


まず向かったのは広い木材置き場。

よく見ると黒っぽいものや白っぽいもの、まだ樹皮がついているものから、板のようなものまで、いろいろな木材が置かれています。

そしてこれが「図形キューブつみき」用の木材です!

「これに色を塗って切ってしまえば完成なのでは? 」と思えるほど白く、触るとつるつるしていました。

「図形キューブつみき」に使われているのはヨーロッパ産のビーチ(ブナ科)。つみきを長く使ってもらうには丈夫さが必要で、柔らかすぎると傷つきやすくかけたりします。木目が美しく、程よい硬さと加工のしやすさからこの素材が選ばれているそうです。ここからどんな工程でつみきになっていくのか、工場内に潜入します!

せっかくつるつるにしたのに……サンドペーパーをかけるワケ


ギュイーン!!!

工場内では、木を削る音が鳴り響いています。話し声が聞こえなくなるほどの大きな音。音のする方を見ると「軽自動車より一回り大きいのでは」と思える機械がフル稼働していました。

さきほどの木材をこの機械に入れると、4面をかんな掛けし、真四角に整えてくれるそうです。縦横28ミリの木材が25ミリまで削られます。かんな掛けされた木材を見たことがありますか? 光を反射するほど「つるつる」になります。

それをさらにサンドペーパー(紙やすり)で磨いていきます。
サンドペーパーもビッグサイズ!せっかくつるつるにした木材をさらに1面ずつ削っていきます。

サンドペーパーで磨きをかけると表面がなめらかになり、程よくけばだって塗料がしみ込みやすくなるそうです。
つるつるのまま塗装をすると色むらが出てしまうためこの工程を行います。
このように木を調整することを木地調整といいます。

白い木でも色が違う!?塗る前の再調整

木地調整したものを見ると、同じ白い木でも微妙に色が違うことがわかります。

「図形キューブつみき」は5色ですが、黄色やオレンジは木材が白くないと鮮やかな色がでないそうです。しかし、産地や木目(部位)によって微妙に色が違います。
そこでカットする際に傷や割れを確認するだけでなく、色合いにあわせて選別します。
黒っぽいもの・茶褐色のものは「青や緑の濃い色」に、白は「黄色やオレンジ色」へ、その中間の色の木は「赤色」に塗るように分けていきます。

つみきを握ったときに、柔らかな感触を感じてほしい


やっとつみきらしい形になってきましたが、まだまだ工程があります。

切ったばかりの立方体はとがっているので面を取らなければいけません。ただし、立方体の12の辺を面取りすると、どうしても頂点の部分がとがってしまいます。

工場の方のお話では、子どもが触ったときに柔らかい感触に仕上げたいけれど、1つ1つ削っていくと大変な労力がかかるので、なんとか簡素化する工程を試行錯誤したとのこと。
その結果、「ガラ」という機械を使った工程を組み込むことにたどり着いたそうです。

この機械、どこかで見たことがあるような……

抽選会場で一回転させると玉が出る機械に似ています。この中につみきを入れてゆーっくりまわしていきます。

できたてほやほやのつみきを握らせてもらうと、

「や、やわらかい……」

思わずつぶやいてしまうほど、手に持った感覚が全く違うんです!

ゆっくり回転させるとつみき同士があたり、角がつぶれ、すり合わさって、磨き上がるこの仕組みのポイントは回転速度と時間。
回転が速すぎたり、時間が長すぎたりすると傷がつきやすくなるので、最適な回転速度と時間を調整しているとのこと。くもん出版の担当者と話し合い、なんとか柔らかい感触を生み出すためにこの工程を入れたそうです。

まさに神業!色塗りのこだわり


いよいよ色をつけていきます。
それぞれの面に割れや傷がないかここでも確認しながら、つみきを木枠にセットして、1面ずつ塗っていきます。

かつて建築業界に身を置いていた私(こみけん)は、色塗りがとっても難しいことを知っています。色むらがでるし、間違いをごまかすことができない一発勝負の世界です。その塗りをいとも簡単に行う技術に見とれてしまいました。

実は、くもん出版と工場の方々との

「子どもたちに“木”を感じながら遊んでほしい」

という共通の想いを実現するため試行錯誤を重ねた結果、塗りつぶすのではなく、つみき1つ1つの個性的な木目がわかる塗り方にたどり着いたそうです。

同じ木目は1つもないので、つみきはそれぞれの表情をもっています。塗料もこの良さを生かすようなちょうどよい濃さで塗っています。


箱づめ前に最終チェック

最後にまた検品をします。色を塗ってはじめてわかる割れ・傷があるため、もう一度チェックしながら、箱づめしていきます。

シンプルなつみきですが、子どもたちの安全を考え、気持ちよく遊んでもらえるようにさまざまな工程が組み込まれていることがわかりました。

工場経営者 和田 久社長インタビュー

この工場を経営している和田 久(わだ ひさし)社長にお話を伺いました。

――「図形キューブつみき」を製造するうえで、心がけていることはなんでしょうか?

「小さな子どもたちが使っていて安全なもの」ということを第一に心がけています。細かい面取りやけば落としなどの工程面や、子どもが舐めても安全な塗料を使用するなど原材料面でも、安全第一の商品を心がけて作っています。

――くり返し検品作業が組み込まれていることや、子どもたちが扱いやすくなる工夫がちりばめられていることが印象的でした。

いまでこそスムーズに、品質の高いものを生産できるようになりましたが、お客様からいただくご要望を実現するため、くもん出版の担当者と相談しながら、十数年をかけて少しずつこの工程をくみ上げていきました。本当にシンプルな商品ですが、この先には子どもたちの笑顔が待っていると思いながら、ここまでの手間をかけています。

――「図形キューブつみき」は2005年に発売されたロングセラー商品ですが、製造者の目線から、人気の要因は何だとお感じですか。

シンプルな作りが子どもたちの想像力・創造力を育んでいるのだと思います。「図形キューブつみき」にはパターン問題がついていますが、そこで学んだことをふまえて、お城や基地など、子どもが作りたいものを作ることができる余地が想像力・創造力を伸ばしていると思います。

――最後に、この商品を手にするお子さまや保護者の方にメッセージをお願いします。

私たちは本当に安心・安全な商品を提供するという立場です。そこから作られたつみきで、子どもたちがいろいろな発想で形を作ったり、おままごと遊びをしたりして、楽しく遊んでいただければ、一番、幸いかなと思います。

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工場見学やインタビューで見えてきたこだわり。くもん出版と知恵を出し合い、使ってくれる子どもたちの笑顔を思いながら工夫を続けられている姿勢が印象的でした。

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