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2020.11.14.sat 新しい家族が増えました
女の子です。名前はしずかちゃん。
長女でも、猫でも犬でもない。エアコンだ。
入居当時からずっと稼働していたエアコンが、ここ数年挙動不審だった。
今年の夏、とうとうある日、下部からどっと滝のように水が漏れた。
「わー!エアGが!!お漏らしした!!」
エアGとはエアコンのお名前だ。エアコンのじいさんだからエア爺。
下のテレビを巻き添えにされてはかなわんので、バケツやらバスタオルやら敷き詰めて様子を見た。水漏れするが冷えることは冷える。ベランダ側から手動バキュームで詰まりを解消してみたり、オットが細々最後までしっかり介護してなんとか夏を乗り切った。
エアコンは今が底値なんですってね。1年だか2年だかの型落ちをネットショップで注文した。
エアコン工事の日。オットとエアGの記念撮影をした。
取り外すと20年来のホコリが塊になって落ちてきた。
息子が生まれる前から、ずっと我が家を冷やし続けてくれてありがとう。
さよなら、エアG。ありがとう、エアG。
ピカピカの新エアコンをさっそく暖房で稼働してみた。
「うわあ!静かじゃねぇ。静かだからこの子はしずかちゃん」
息子が命名した。安易にすぎる。
はかにも、名前を持つ家電がいくつかある。
結婚する前から使っていた石油ファンヒーター、その子の名前はメアリー。
新居に小型のファンヒーターをもう1台買ったため、2台を呼び分けるためにそれぞれお名前をつけた。
新入りは黒くてかっこいいのでジョーカー。
当時息子のブームだった仮面ライダーの主人公の名前ではなかったか。
給油のお知らせが鳴るたびに、小さかった息子が
「メアリー、ごはんたびたいって!」とお知らせしてくれた。
そのメアリー婆さんもいよいよ絶不調となった。
燃焼中に突然プスン・・・と消える。
家電介護担当のオットが分解掃除したが治らなかった。
大型ごみ搬入施設まで連れて行ってお別れした。
ドナドナを歌いながら連れて行った。売るんじゃなくて捨てるんだけど。
家電にお名前をつけたのはいつからだったろうか。
最初は車だった。息子が生まれて必要に迫られて買った車のナンバーにちなんで「はなみ号」というお名前がついた。
名前をつけると人格が生まれる。
はなみ号いい子だね、
はなみ号今日はロングドライブよろしくね、
命はないけど、たしかにそれに応えてくれるような気がする。
家族の一人として、一緒にいろんなところに走って行ったなあ。
そしてはなみ号はいまだに現役。走行距離17万キロ。
点検のたびに買い替えを勧めてきたディーラーも最近はなにも言わなくなった。まだまだ一緒に走ろうね。
うちの家電が総じて長寿なのは、お名前をつけるからではないかと思う。
いたわりあって過ごす方がいいのは、人も家電も同じだと思う。
エアコンのしずかちゃんが稼働したものの、やっぱり暖房は圧倒的に石油ファンヒーターの方が暖かい。空気も乾燥しないし。
ということでメアリーの代わりに新ファンヒーターが登場した。
お名前なんにする?
「んー白いからシロちゃん」息子よそのまんまじゃないか。
リビングにはピカピカのしずかちゃんとシロちゃん。
これで寒い冬も暑い夏も大丈夫だ。
しばらくたったある日、オットが深刻な顔をして
「あの・・・提案があるんだけど・・・」
何かと思ったら、
「シロちゃんのお名前・・・やっぱりメアリーにしたいんだ」
さんざん最後まで介護したあのメアリーにそんな思い入れあったのか。
そして今リビングで新メアリーが「ごはんちょうだい」のメロディーを鳴らしている。「エリーゼのために」。切なくて、寒いベランダでの給油が泣ける。
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