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タニシの改心

自分から神様にお願いして
タニシにしてもらったのに
やれ水が冷たいだ 泥はきたないだ
タニシは言いたい放題
口が悪い、意地悪な小心者
水から上がろうとせず
泥に埋もれたまま
タニシはそこにいる
一人でそこにいる
ある夜に思い出したのは
賑やかな笑い声
毎日がお祭りのようだった
懐かしい日々
お母さんの柔らかな腕
お酒を飲んだお父さんの赤い顔
タニシは泣いた
声を上げて泣いた
タニシの涙は水に溶けた

タニシは今も田んぼにいる
あの夜を過ごしたタニシは
もう意地悪を言わなくなった
タニシは優しい気持ちでいた
冷たかった水はタニシを包み
泥は守ってくれた
いつかサギに食われようとも
タニシは微笑んでいるだろう

美しい思い出が殻に詰まっていると
気付いたから








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