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災害の多様性「ヘルメット」


という漢字は「人がカブトをかぶっている姿」を表しているそうです。なるほど・・・言われてみれば、そう見えますね。漢字というのは面白いですね。意味のないものなんてないんです。ちなみにこの兜の漢字は平安時代以降に使われるようになりましたが、それ以前は「冑」の文字を使っていました。甲冑の冑(ちゅう)ですね。

兜と言えば、ヘルメットですね。それではヘルメットにはどういう意味があるのでしょうか?語源・英語語源辞典を見ると、以下のような説明がありました。

「頭部の防御カバーである兜」は、古英語の helm「保護、覆い、王冠、兜」から来ており、古ゲルマン語の *helmaz「保護カバー」(同族語:古フリジア語、古サクソン語、古高ドイツ語 helm 、ドイツ語 Helm 、古ノルド語 hjalmr 、ゴート語 hilms)から派生しています。PIE ルート *kel- (1) 「覆う、隠す、救う」から来ています。イタリア語の elmo 、スペイン語の yelmo はゲルマン語から来ています。

語源・英語語源辞典より転載

なるほど。語源はhelmで保護、覆う、隠すなどの意味があるのですね。

AIによる甲冑

「頭部を保護するための道具」

頭を保護するといえば、まずは争いです。日本における戦いはいつ頃から起きたのでしょうか?

昭和36年(1961)に愛媛県美川村で、鹿の骨で作られた投げ槍の穂先が突き刺さった縄文時代初期の男性の腰骨が発見されたことから、気が遠くなるほど長期にわたった縄文時代にも何らかの争いがあったのでは? という説があるのです。その他の遺跡からも同様の骨がみつかっていることから、戦争といった大きな争いということではなく、少数の限られた中での喧嘩のような争いであった印象があります。ところが朝鮮半島からの渡来人が流入してからの弥生時代には、各地に集団組織が結成され、稲作と共に堀を巡らす環濠集落同士の争いが生まれました。同時に武器ももたらせており、九州北部では紀元前5~4世紀頃に戦争が始まり、それが中国(地方)、四国、近畿、東海の各地に拡大していきました。

弥生時代には領地(農業用水権)を争って異集団による紛争が多発した

この頃の武器は、弓、槍、剣(つるぎ)、ピッケル状の武器・戈(か)や鉾(ほこ)などで、初めは遠くから相手を狙う弓矢や投げ槍などの飛び道具、次第に接近戦となると剣、戈、鉾などを使用するようになります。

すると身体を守る道具として皮革や鉄製の鎧を身につけるようになります。同時に頭部を守る冑(古墳時代から奈良時代までは冑の字を用いる。平安時代以降は兜の字を用います)も開発されました。

兜の基本構成は以下の通りです。


主に、頭部を守るための部分である(はち、鉢金とも)と後頭部や首周りを守るため鉢の下部から垂らしたしころ(漢字は、錣、錏)から成り、鉢には額部に突き出した眉庇(まびさし)が付き、しころは両端を顔の左右の辺りで後方に反らし、これを吹返し(ふきかえし)と呼ぶ。平安時代以降の兜には、額の部分や側頭部等に「立物」(たてもの)と呼ばれる装飾部品が付くようになり、特に額の左右に並んだ一対の角状の金属の立物を「鍬形」(くわがた)と呼び、クワガタムシの語源となった。

Wikipedia「兜」より

古墳時代前半の兜は「衝角付冑」です。革や鉄製の三角形や長方形の板を並べて上下2段を作り、その補強のために中間と最下部に「胴巻き板」、「腰巻き板」をぐるりと廻らせて、その正面には頭頂部分から額まで鉄板を内臓させて鉢(帽体)を形成しました。さらに頭部と首を保護するために「シコロ」と呼ばれる鉄製の保護板を5段ほどにぶら下げました。

その後、5世紀に入ると「眉庇(まびさし)付冑」という兜が作られました。これは大陸の騎馬民族が用いたものの同系統の兜です。衝角付冑と同じ構造ですが、豪族用のために頭部を守ると同時に、個々の威厳を示すために装飾性の高いものでした。頭部への攻撃防御と同時に陽射しを避けるための「帽子のつば」のような「眉庇」を取り付けました。

すぐわかる日本の甲冑・武具(東京美術)

鎌倉時代以降の兜は装飾性が高まるとともに頭部を保護する基本部分である「鉢・はち→帽体」に膨らみをもたせた形状に変わります。鉢を構成する板金の数も増えて頭部保護が強化されています。しかし、ちょんまげを結っていたわけですから、あのちょんまげ頭に兜をどう被るのでしょう?

平安時代には髻を烏帽子で包んで頭頂の穴(天辺・てへん)から出して兜を被ったそうです。その後の鎌倉時代には髪を解いて被ったので天辺の穴も必要がなくなるのです。このように時代に合わせて兜は変化していきました。

「近代のヘルメット」

兜は主に戦闘用に使用されていました。それが近代戦争になると鉄製の一体型ヘルメットが登場します。「鉄兜」や「鉄帽」と呼ばれるようになり、余計な飾りはなくなります。素材には鉄や鋳鉄、アルミ合金にクロムモリブデン鋼など目的別に多様な金属が採用されました。

鉄兜の内側は革張りで、鉄兜の帽体と頭部の間には麻袋や平紐を結ったクッション(ハンモック)が取り付けられた。頭部と照兜を固定する顎紐にはバックル式ベルトではなく平打紐が使われ、古来の兜の緒のように結んで使われた。この構造は、現代の作業用ヘルメットに受け継がれています。

その現代のヘルメット(保護帽とも言います)は、頭部の損傷、あるいは感電などの危険を防止、または軽減するために用いられる保護具です。厚生労働省が定める「労働安全衛生法第42条」の規定に基づく「保護帽の規格」に正規に適合したモノを言います。

素材はABS樹脂、ガラス繊維をプラスチックに混在させたFRP。PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)などがあります。それぞれ、耐電性、耐候性、耐熱性、耐薬性などの優位点があり、用途によって使い分けられています。

ヘルメットの帽体は、頭蓋骨を覆う硬い殻体(かくたい)に値します。帽体のには衝撃を吸収するための発泡スチロール製の「衝撃吸収ライナー」が内蔵されています。頭部との間には、衝撃を減少を増幅する「ハンモック」が内蔵されています。

「災害用ヘルメット」

災害後にアナウンサーたちが災害現場から報道する際にはヘルメットを被っています。さらなる災害に備えての用意です。近年、特に東日本大震災後ですが、報道だけでなく、一般企業でも災害対策用にヘルメットを備えています。

ただ、ヘルメットそのものが大きいので備蓄にはスペースが必要です。そこで、最近では折りたたみ式のヘルメットがたくさん登場しています。折りたたみ式であれば、大きさは40センチほどになり、折りたたんだ際にはかなりの薄さになります。ちなみにミドリ安全のフラットメットは3.3センチになります。薄いですね。これで机の引き出しや書棚にも収納可能です。

僕は、自分用と妻用の普通のヘルメット2つと折りたたみ式のヘルメット(ミドリ安全のフラットメット)を2つ用意してあります。玄関に吊してありますが、これが効果的に使えるかどうかは、普段からの装着演習によるでしょうね。



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