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湯島の夜「キングコング始末」

WOWOWで1933年版の「キングコング」、1976年版「キングコング」、1986年版「キングコング2」、2005年版「キングコング」、2017年版「キングコング 髑髏島の巨神」、そして2021年版「コングVSゴジラ」に、日本製作の1962年版「キングコング対ゴジラ」と1967年版「キングコングの逆襲」をまとめて観た。

僕のお気に入りは元祖の1933年版と2005年版に、日本製作の「キングコング対ゴジラ」、「キングコングの逆襲」の4作品である。ここに2018年の「ランペイジ 巨獣大乱闘」が入る。ランペイジは、キングコングではないが、薬品によって巨大化した怪獣たちと戦う白い巨猿がかっこいいのである。大嫌いなCGばかりの作品だが、なかなか気に入っているのである。


元祖の1933年版の「キングコング」は素晴らしい。当時の特撮映画として凄くよくできている。ギニョールコマ撮りではあるけれど、野生怪獣としての人間の天敵であろうはずのキングコングの有無を言わせない残酷さがグッときちゃう。昔は「コマ撮りだろう?」なんて軽蔑していたのだが、年齢を重ねて改めて観ると、その良さが理解できるのである。繰り返して鑑賞できる名作に間違いない。

これにやや人情味を加えたちょいと優しいキングコングが2005年版「キングコング」だ。キングコングとヒロインの“愛”が、南総里見八犬伝の八房と伏姫のようで泣けるうえに、緻密なCG特撮が良いバランスで描かれているのである。これも何度でも鑑賞できる名作だと思う。

1976年版はまだ良いが、1986年版は最悪である。内容に触れたくもないクソ映画だと思う(ごめんなさい)。

何と言っても最高なのが日本版の「キングコング対ゴジラ」と「キングコングの逆襲」だ。東宝が映像権を取得しているうちに製作した2本だが、キングコングの着ぐるみの造形は酷いが、相手役のゴジラとメカニコングが最高だし、ゴジラとの熱海城破壊シーンに、メカニコングを追って東京タワーに登って美女を救うシーンが素晴らしい。熱海城と巨大な東京タワーの造形が言うことなしなのである。

キングコング対ゴジラは、伊福部先生の高揚音楽と情けない着ぐるみのコングに鋭角な顔のデザインのゴジラの双方が、思いがけなく動物的で、ひょうきんで笑えるのである。特にゴジラの両肩をコキコキと鳴らす演出がバカバカしくて面白い。これは子どもの頃に観た際には気づかなかったことで、80年代にレンタルビデオで観た際に気づいて大笑いしたものだ。

キングコングの逆襲の方は、ゴジラも出てこないのに何に逆襲するのかがよくわからない。こちらの相手役はDr.フー(天本英世)が作った巨大ロボット、メカニコングだ。素晴らしいのは巨大な(といってもミニチュアだが)増上寺に東京タワーのセットだ。昔はお金があったのだ。

今は製作費がないのだ。だからほとんどがCGを使ったアニメのような怪獣映画に奇をてらった内容が傑作だなんて誤った評価がされてしまう。「シン何とかシリーズ」ってのは、その最たるものだと思う。

やっぱさ、怪獣映画ってのは着ぐるみに人が入ってミニチュア建造物を破壊しなければ成り立たないのである。個人的な意見だがCGというのはアニメの域を出ない3流臭さが漂うのだ。ファンタジー映画であれば、それでも良いんだけれど、僕は受け入れることができないんだな。

CGは、アクション映画にも多用されて、キアヌ・リーブスの「ジョン・ウイックシリーズ」は素晴らしいのに、アクション映画の基本であるガンエフェクトにもCG多様の点でガッカリ度が高い。

WOWOWでは大映妖怪シリーズも放送されたし、NHK BSでは「ウルトラセブン」&「ウルトラQ」も放送済みだ。先日は「ウルトラマン」のベムラーと、金城哲夫脚本のウーの話が放送されていた。これは、沖縄慰霊の日と沖縄出身金城哲夫さんを描いたドラマ放送と、気持ちの悪い「シンウルトラマン」ヒットを併せた企画なのだろう。

近い将来、着ぐるみ&ミニチュア特撮も復活するだろうと僕は期待しているのだ。

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