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災害の多様性「能登半島地震による半島海岸線の地形変化」

「海底の隆起」

今回の令和6年能登半島地震では、逆断層型の地震(注)によって海岸の隆起が見られたというのが大きな特徴になっています。輪島市の皆月漁港3.3メートル、五十洲漁港4.1メートル、鹿磯漁港3.9メートル、黒島漁港3.2メートル、赤崎漁港0.3メートルの隆起が記録されています。特に鹿磯漁港では、隆起によって海岸線が海方向に約250メートルも移動したとみられています。

地震によって引き起こされた地盤の隆起も際立って大きかった。今回の地震は、能登半島の西側から北東に縦断し、佐渡島方向に延びる150キロほどの範囲の複数の断層によって引き起こされた可能性がある。半島の北側の地盤が、断層を挟んで南側の地盤に乗り上げたとみられている。
 隆起の初期調査として、国土地理院が人工衛星「だいち2号」の観測データを基にした分析を、東大などの研究グループが現地調査の結果を相次いで公表。輪島市門前町の五十洲漁港で4.1メートルの隆起が認められるなどした。

北陸中日新聞Webより転載

 能登半島には中期更新世(約77万年前)以降の海成段丘が発達しており、長期間にわたり地盤が隆起してきたことを示す。隆起はおもに断層活動によって地震時に生じると考えられ、2007年能登半島地震(M6.9)や2023年能登地方の地震(M6.5)に引き続き、今回の地震でも沿岸の隆起が測地観測データの解析によってすでに報告されている(国土地理院、2024)。
 産総研地質調査総合センターでは、能登半島北部沿岸に分布する海成段丘のうち、特に完新世(最近約1万年)に形成されたと考えられる低位段丘や岩礁に固着した隆起生物遺骸群集(カンザシゴカイ類やフジツボ類)について、これまで10年以上に渡って調査を行ってきた。その一部は宍倉ほか(2020)によって報告している。低位段丘は基本的にL1〜L3面の3面に区分され、それらの高度分布を図1に示す。L1面の形成年代は今のところ不明であるが6千年前以降と推定される。調査範囲の最も西にある輪島市吉浦(Yoshiura)周辺はL1面、L2面が明瞭で(図2)、L1面の高度が標高7.2 mで最も高い。ここは測地によって今回の地震で大きく隆起したことが報告されている地域と一致しており、余震分布からは震源が比較的浅い地域とも一致する。また図1で半島北東側に位置する珠洲市馬緤(Matsunagi)付近では低位段丘の高度が周囲に比べて高い。ここは今回の地震の震央付近に位置しており、測地では1 m程度の隆起が示されている(国土地理院、2024)。すなわち過去から活発に隆起していた場所が今回の地震でも大きく隆起していることを示している。

下記リンク地質調査総合センターサイトより転載

地殻内部にかかる力の状態は複雑で、その状況によって様々な型の断層運動が生じます。
断層面が傾いている場合、両側の岩盤のうち、浅い側を「上盤」、深い側を「下盤」と呼びます。断層面を境として両側のブロックが上下方向に動くときを「縦ずれ断層」と呼びます。「縦ずれ断層」のうち、上盤側がずり下がる場合を「正断層」、のし上がる場合を「逆断層」と言います。
一方,両側のブロックが水平方向に動くときは「横ずれ断層」と呼び、断層線に向かって相手側のブロックが右に動く場合を「右横ずれ断層」、左に動く場合を「左横ずれ断層」と言います。
我が国の内陸地震では、中部地方から西日本にかけては横ずれ断層型が多く、東北地方などの北日本では逆断層型が多いと言われています。
実際の断層を見ると、上記のように純粋に「縦ずれ断層」、「横ずれ断層」と呼べるものはまれで、多くのものは斜めにずれています。

地震本部サイトより転載

「隆起海岸」

地盤の隆起によって、浅海海底地形海面上に現れた結果生ずる海岸。旧海食崖(がい)、旧海食洞、そして旧海底堆積(たいせき)面が海岸段丘面として認めることができる。日本のような変動帯の海岸の場合、地震で地盤が上昇する地震性隆起海岸が多く、房総半島三浦半島に、それによる隆起海岸が認められる。

デジタル大辞泉「隆起海岸」より

隆起海岸の例としては、三浦半島の諸磯の隆起海岸、千葉県の九十九里海岸、宮崎県の日南海岸、福井県の越前海岸などがあります。

「海岸の隆起によって津波被害が軽減?」

海岸の隆起は、「海岸の隆起が小さかった地域」では、陸上に津波が駆け上がって人家があるところまで達したのですが、反対に「河岸の隆起が大きかった地域」では津波が駆け上がった痕跡はあるものの、建物までには到達していなかったということです。つまり、海岸が隆起したことで、津波の防波堤の役割を果たしたというのですね。

自然災害というのは、僕なんかが想像もできないほどの秘めた力を持っており、想定外の結果を記録するんですね。


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