孤独な食通
僕は歩いている…。眠りの中にあっても、覚醒していても、白昼の中にあっても、真夜中であっても、僕は常に歩いている。
50歳を過ぎてから歩くことにも疲れてしまっているのだが、生きているのだから仕方がない。脚を引き摺るように歩くのさ。それにしても闇の世界は辛い。太陽光を浴びなければ僕は死んでしまう。それならば夢から覚めなければならない。
僕は舌を噛んでみた。
「痛い!」激痛が全身に走る。舌は噛みちぎられることはなかった。
その瞬間に目が覚めた。眩しい光が瞳孔から入ってきた。目が眩んだ。徐々にまぶしさに慣れてくると懐かしい風景が目の前に現れた。
ああ、食堂だ。船橋の花生食堂に似ているな…。
とりあえず入ってみよう。腹も減っている。
あああ、釜玉うどんだぁ~っ!
卵の黄身の中に僕自身が見えた。割り箸で穴を空けるとプチッと音を出して黄身が潰れると、僕も潰れて消えてしまった。
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