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文章パズル

以前、カルチャースクールの文章講座で行った情景描写力をつけるためのトレーニング「文章スケッチ」をご紹介しましたが、もうひとつの文章トレーニングをご紹介します。これはわかりやすく整理された文章構成力をつけるためのものです。

まずは文章が巧みな作家の作品を素材にします。例えば「青空文庫」から谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」の冒頭部分を抜粋して素材にしましょう。以下に原文を添付します。

今日、普請道楽の人が純日本風の家屋を建てて住まおうとすると、電気や瓦斯ガスや水道等の取附け方に苦心を払い、何とかしてそれらの施設が日本座敷と調和するように工夫を凝らす風があるのは、自分で家を建てた経験のない者でも、待合料理屋旅館等の座敷へ這入ってみれば常に気が付くことであろう。独りよがりの茶人などが科学文明の恩沢を度外視して、辺鄙な田舎にでも草庵を営むなら格別、いやしくも相当の家族を擁して都会に住居する以上、いくら日本風にするからと云って、近代生活に必要な煖房や照明や衛生の設備を斥ける訳には行かない。で、凝り性の人は電話一つ取り附けるにも頭を悩まして、梯子段の裏とか、廊下の隅とか、出来るだけ目障りにならない場所に持って行く。

以上の文章をバラバラにしてみます。

で、凝り性の人は電話一つ取り附けるにも頭を悩まして、梯子段の裏とか、廊下の隅とか、出来るだけ目障りにならない場所に持って行く。

今日、普請道楽の人が純日本風の家屋を建てて住まおうとすると、電気や瓦斯ガスや水道等の取附け方に苦心を払い、何とかしてそれらの施設が日本座敷と調和するように工夫を凝らす風があるのは、自分で家を建てた経験のない者でも、待合料理屋旅館等の座敷へ這入ってみれば常に気が付くことであろう。

独りよがりの茶人などが科学文明の恩沢を度外視して、辺鄙な田舎にでも草庵を営むなら格別、いやしくも相当の家族を擁して都会に住居する以上、いくら日本風にするからと云って、近代生活に必要な煖房や照明や衛生の設備を斥ける訳には行かない。

以上の①から③の3つを、それぞれ受講生さんの数だけコピーして3枚の文章パーツにして各人に渡します。そして「お渡しした3枚の文章パーツは、谷崎潤一郎の作品“陰翳礼讃”をバラバラにしたものです。①、②、③を並べ替えて、元の文章に戻してください」と言います。

要は「文章パズル」です。

カルチャースクールでは、上記のように3枚ほどの単純なものから、10枚くらいにバラした複雑なものまで、いくつか文章パズル問題を作って、元の文章に組み立てていただきました。これが思ったより難しいのです。僕も一緒にやってみましたが、10枚パズルは、元の文章に戻りませんでした。

僕は、文章パズルとして講座課題にしていましたが、オリジナルと称して威張っていたわけではありません。こんなことは誰でも考えられるからです。もしかすると、小中学校でも、国語の授業で、こんな問題が出ていたかもしれませんね。

そうだとしたら…ごめんなさいm(_ _)m

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