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カルチャースクール和気藹々

ここ数回のカルチャースクールでは「小説の書き方」について解説しています。そもそも、僕だって自分自身も実は正しい小説の書き方などわからないのですがね。それでも一応講師として解説しなくてはいけませんから、自分なりの考え方をちょいとだけ押しつけて頑張ってやっているのです。

といっても間違ったことを押しつけてはいけませんから、いろいろと他人の意見を聞き、関係周囲を見渡しながらやっているのです。

で、一応、以下のようなモノを配ってお話しさせていただいたのです。

「まずは小説を書く際に必要な物語の構成(あらすじ)を作りましょう」
「面倒くさいです」
「はいはい、面倒ですよね。でも、これを作らないと僕が書いた文章のようになっちゃうんですよ」
「それはイヤでーす」生徒さんたちは僕の書いた文章が嫌いなのです(笑)。

文章下手な講師が教えるのって変ですが、ま、僕は編集者でしたから文章が下手でもいいんです(なーーーんてな(´。`))。生徒さんたちは優しいから僕の文章なんて気にしないのです。楽しく全員(僕も含まれます)で学べればいいんです。

「じゃあ、始めましょうね」

「小説の構成」

登場人物:加藤良樹(主人公)、伊加利伸介(特殊詐欺グループの頭)、スコッチ・南部(特殊詐欺グループの黒幕、自滅党党首)、佐藤美有樹、井上真也、延岡真衣、城島甲斐、溝口慎二、渡辺喜一、新庄三郎(以上7人は掛け子)

起:状況説明
 加藤良樹は、東京・上野にある小さな会社「東横産業」で働いている。仕事はテレフォンアポインターだ。基本給は3万円で、成約が決まれば1件3万円ずつの歩合が入る。
 勤務時間は10時から18時なのだが、1件成約できるまで帰れない。徹夜になる事も多い。仕事の辛さで辞めたいと言えば殴られ、会社の1室に閉じ込められてしまう。恐ろしい会社だ。

承:主人公の思いや行動
 実は東横産業というのは、暴走族あがりの半グレ組織の会社で、テレフォンアポインターというのは、あちこちから盗んできた名簿から電話をかけて高齢者を欺して大金を得る仕事なのだ。つまり特殊詐欺の会社なのだ。加藤は1度、会社を辞めたいと上司の伊加利伸介に申し出たが、「うちはヤバイ仕事をやってるんだから辞められたら外部に情報が漏れることになる。どうしても辞めると言うならお前には死んでもらわなくちゃならない。ああ、もし逃げたら、お前の家族に危害がおよぶことになるんだぞ」と脅された。

転:解決への伏線
 そんな時に会社の中で連続殺人事件が発生する。しかし、特殊詐欺を生業とする詐欺集団であるから警察を呼ぶことはできない。やむなく死体を隠し、全員で犯人探しをすることになるが、その後も続けて殺人事件が起きてしまう。果たして犯人は誰か? そしてその動機は何なのか?

結:解決
 特殊詐欺グループの全員が殺されてしまう。犯人ひとりだけが生き残った。それは特殊詐欺による被害者の家族だった。しかし、犯人が復讐を遂げた瞬間、東京を大地震が襲い、犯人もまた倒壊した建物の下敷きになって死ぬのだった。地震は都内に建つほとんどの建物を倒壊させて大勢の人間たちが死んだ。特殊詐欺グループ殺人事件の痕跡など誰にも知られることがなかった。

「以上のように、ある程度の骨格(概要・プロット)を作って、それに肉付けしていきます。以下に例を挙げてみましょうね。途中までですけどね」

「ふーん…なかなか面白い話ですね」生徒さんたちは僕の作ったものをなかなか褒めてくれませんが、今回は褒めてくれました。

「ありがとうございます。以上のようなあらすじに、情景描写や登場人物たちの会話などで肉付けして物語にしていくんです」

   「誰もいなくなる物語」

1.                        

 東京、文京区湯島の切り通しの坂を上野駅に向って、ゆっくりと下ってくる若い男がいる。彼の名前は加藤良樹、25歳。彼は、東京・上野にある小さな会社「東横産業」で働いている。東横産業の業務内容は電話代行。社員のほとんどがテレフォンアポインターだ。

 しかし、それは表面的なことで、実際には高齢者に電話をかけて大金を騙し取る特殊詐欺を生業にしている会社だ。都内にいくつも事務所を構えていて、詐欺に失敗して警察沙汰となれば、あっという間に他の事務所に移動して証拠隠滅をはかる。上野の事務所はそのひとつというわけだ。

「って感じですね。では、皆さんで小説を書いてもらいましょう」

つづく


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