「妄想邪馬台国」5
異能は本棚から落ちてきた分厚い本が頭にぶつかって倒れた。
「だ、だいじょうぶ?」治子が異能のそばに駆け寄った。すると治子のミニスカートがまくれ上がってピンク色のパンティが丸見えになった。治子はそのことに気づかない。
異能は、それを見て、気絶したふりをしながら薄目を開けて治子のパンティを凝視した。
「大丈夫なの? ねぇ、異能くん、ねぇ…。ねぇ稗田くん、救急車呼ぼうか?」治子が本気で心配している。
「大丈夫だと思うよ、ほら異能の股間を見なよ」
治子が異能の股間を見ると大きく膨れている。
「あ!きゃあ!」治子は、まくれ上がったミニスカートを慌てて直してから、異能の股間を蹴飛ばした。
「ぎゃああっ!」異能が飛び起きて、股間を押さえて叫んだ。
「な、何するんだ、この野郎っ!」
「あら、あたしは野郎じゃないわ。この変態っ。あたしのパンツ見て勃起してたじゃない?」
「ぼ、勃起なんかしていない!俺のは人よりデカイから、そう見えるだけだ」
「嘘つき!」
また、治子の平手が飛んだ。
異能がまた倒れた。
「いい加減、ふざけてないで、邪馬台国の説明を続けてくれよ」
「くそ…痛ぇ…。治子、覚えてろよ」
「覚えててあげるわよ、このパンティ野郎」治子がコタツに戻ってきた。
「ちくしょ…」異能も体勢を整えてコタツに入った。
「じゃあ、あたしが続きを説明してあげるわよ」
「ああ、頼んだぜ」異能が治子にぶたれたほっぺたを押さえながら、またコタツから出て本棚から本を数冊取ると、再びコタツに戻ってきた。
本の署名を見ると「邪馬台国」「魏志倭人伝詳解」「倭」「日本の歴史」とあった。
「異能くんの説明で何となくわかったでしょ?」
「全然わからないよ。邪馬台国何て出てこないじゃないか」
「しょうがないわね。私が書いてきたメモがあるから…」治子は自分のノートを開いて見せた。
「其國本亦以男子爲王住七八十年 倭國亂 相攻伐歴年 乃共立一女子爲王 名曰卑彌呼 事鬼道 能惑衆 年已長大 無夫婿」
倭国は、男子を王として70〜80年を続いていたが、倭国に王座を争う内乱が起きて、争いは数年間も続いた。それを治めるために一人の女を共立して王にした。名は卑弥呼という。鬼道(呪術)を用いて、よく民衆を惑わした。年齢は35歳を過ぎており、夫はなかった。
「三国志の倭人伝…。当時の日本に内乱があってそれを治めるために卑弥呼を立てたということだね」
「そう。倭国大乱というのは、豊葦原(日本)を治めるオオクニヌシが、豊葦原を治めるまでの兄弟との揉め事や、高天原からの使者・タケミカヅチとの力比べ(戦い)なんかのことだと思うのよ」
「なるほどね。でも、高天原は邪馬台国じゃないんだね」
「高天原は、朝鮮半島だよ」異能が言った。
つづく
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