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熱波スクール

 昨日は、午後の熱波の中、首に湿らせたクールタオルを巻き、チューブ式のバニラアイスをチューチューと吸い飲みながらカルチャースクールのある駅ビルまで歩きました。

 このところ外出すると軽度の熱中症に罹るんです。高齢になって体力知力(元々ないかもしれない)も衰えて、ある意味、負の癖になっています。僕の家族(両親と妹)は暑さに弱いのです。調べると熱中症には遺伝的な要因もあるようです(この遺伝性のものは重篤化することもあるようです)。

 それでいて、体重ばかり増えるんですね。まあまあの運動はしているし、食欲もないから小食になった…つもりなのですが、夏に肥えるとはどうしたこちでしょう? 肥える要因が皆目見当がつかないのです。太ったカラダで外出するのは本当に辛いものです。

 さて、スクールに到着すると、いつものように除菌と体温測定。熱波の中を歩いたので36.8度。チョイと高い。
「先生(こう呼ばれるのは恥ずかしいのですが)、今日は○○さんと○○さんがお休みです」
「え、病欠ですか?」
「いえ、何とも…今日は暑いからでしょうね」
「熱中症になりたくないですよね。ま、当然と言えば当然ですね」
「ええ。今日は○○さんおひとりです。大変でしょうが、よろしくお願いします」
「ふぁぁい…」いい加減に返事をしてしまった。
ひとりを相手に1時間半もたせるのは大変です。事前に3人分の準備をしてきていますから、その予定が崩れてしまう。辛いですね。
本日の講座の予定は「近況報告(わかりやすくお話しすることが文章力を上げると思っています)」「課題添削(課題はオムツでした)」「名作音読」の3つでしたが、僕程度の講師力では、これをひとりに該当させるのは少し難しいんですね。
「○○さん、こんにちは」
「こんにちは。あの、先生、ごめんなさい。暑くて課題ができませんでした」

それを聞いて心の中で(ええ!課題添削はできないのか?これは時間を潰すのが大変だな)ってブツブツ言っちゃいます。
でも、上っ面では優しく微笑みながら「ああ、そうですよね。暑いですからね…大丈夫ですよ」なんて言っちゃうのです。
「さて、どうするか?」思わず声に出しちゃった。
「え、何ですか?」
「あ、いや、今日の予定を見直しているんです」
「あたしが課題をやってこなかったからですね。ごめんなさい」
「あ、いや、違います。講師というのはどういった状況にも対応できなくてはならないのです…」
「凄い」
「じゃあ、近況報告をしましょう。今日は○○さんおひとりですから、僕からお話ししますね」
「はい」
「僕はね、鰻が大好物でして、この間、3年ぶり(よく覚えていないけれど)に柴又まで出かけて食べたんですよ」
「へぇ。うちに来てくれれば良かったのに…」
(○○さんは地元で有名な食堂の厨房で働いています)
「ああ、○○さんのとこって、鰻は扱っていないんじゃなかったですか?」
「ありますよぅ」
「ごめんなさいね。知り合いの店が柴又にあるんですよ」(嘘をついた)
「それなら仕方がないわね」
それから柴又帝釈天を参拝したこと、うな重を食べたこと、山本邸から江戸川縁を歩いて熱中症になったことなどを話しました。時計を見ると15分経過しています。これは時間つぶしができそうだとニヤニヤしちゃいました。
「ほんじゃ、○○さん、近況を話して下さい」
「はい、私は2年前に熱中症になりました」
「ほう」
「厨房って料理を作るから暑いんですよ。んで、具合が悪くなって、翌日、病院に行ったら熱中症だって言われてね」
「はいはい」
「で、お薬もらって帰って来たんですが…」
「へいへい」
「ん?先生、あたしの話に興味ないんですか?」
「はいはい…あ、ち、違いますよ。ちゃんと聞いてます」
「ふん、じゃ、続けます」
「はい、お願いします」
「それから体調が戻らなくて、ひと月仕事を休んじゃったんです」
「そんなに具合が悪かったんだ」
「はい。食欲も読書欲もなくなって、テレビも観る気にならないんです。もう何もする気にならないんですよ。5キロも痩せちゃったんですよ」
「ふーん、僕も熱中症になったことがありますが、全然痩せないですよ」
「先生は先天的に太る要因があるんですよ」
「え、要因?それって何なんですか?」
「でね、ようやく仕事に復帰しても、元の状態に戻るまでに時間がかかりましたね」
「あの、僕の太る要因って?」
「あの時以来、もう暑い日には外に出ないようにしてるんです」
(無視かよ…)
「なるほど、ほんじゃ今日の講座を始めましょうね」

それから1時間、青空文庫版をプリントしてきた芥川龍之介の「河童」の冒頭部分を音読してもらいました。最近は僕も含めて読書をする方が減ってきています。僕の講座では強制的にいろいろな文章を読んでいただき、感想を述べていただいたり、次回に感想文を持って来ていただいたりしています。読書感想というのも文章力を向上させると僕は考えていますからね。

○○さんに感想をうかがったあとに、芥川がなぜこういう作品を書いたのか?など僕個人の考えを話させていただきました。

それから「次回は、必ず課題を書いてきてくださいね」と少しだけ強めに言って講座を終えました。

さて、講座終了ののちに電車に乗って大きなショッピングセンターがある隣の地区まで移動しました。駅前の書店で「SF思考」(ダイヤモンド社)という本を買って、帰宅したのですが、充分に注意していたつもりだったのに、また軽度の熱中症になっていました。

自宅についたら、氷枕を首にあててそのまま横になると、1時間ほど寝てしまいました。困ったものです。

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