自転車初心者が鳥取県に輪行しにいった話⑤
※サムネの写真の右下が南雲の買ったミニベロ。
前回は慣れないミニベロに乗り、生涯で体験したことがないような膝や筋肉、坐骨の痛みを押し込めつつ、夜ご飯の場所が見つからない中、救世主ドラッグストアで栄養補給しました。
前回はこちら
ポタリング再開──〝神の海藻〟アカモク
日が沈む中、大きな鉄橋の股をくぐり、
船がいくつも停泊している美しい景色に目を奪われつつ、40分かけて境港に到着しました。
無事境港エリアに着いたあと、駐輪場を探している際、海鮮屋を通りかかりました。
ここも混んでるなーと横目に見つつ、自転車が一つも止まっていない仮設駐輪場に自転車を繋げます。
そうして再び通りかかった海鮮屋。
さっきまでいたはずの順番待ちが、一人も居ない。
「え? うそ。え?」と、そのお店の中を恐る恐る覗きます。
実はお店の中がぎゅうぎゅうで一席も空いていない、なんてオチじゃ……。
「店の中も人っ子一人居ない、だと……ッ!」
その時の私の顔は、人が消える怪異に遭遇した時の岸辺露伴みたいになってました。
夢じゃないかと思って若い店員さんに「一人ですけど空いてますか」と言ったら、
「じゃああそこのVIP席で(ニコォ」
と店主っぽいおじさまに言われ、居酒屋のコの字席のようなブースを一人で占領することに。
そこでやっと実感が湧きます。
「私、今、海の幸が自慢の境港の海鮮屋で、夜ご飯食べようとしてる……!?」
うぉおおー!!!! 大勝利!
そのお店では興行シーズン用のメニューのみを取り扱っているそうで、いくつかの丼や定食セットの中から一つを選ぶ注文の仕方でした。
どれも美味しそうでしたが、メニューの中で、一つ気になる単語を目に留めます。
その名も、「イカの漬け丼」。
初めて聞く子ですね……。
頼んでみると、醤油漬けにしたイカの切り身に、ぷちぷちしたなにかの小さな卵、ネギ、生姜、海苔が、茶碗3杯分くらいの温かい白米と一緒に、どんぶりに乗っています。
そして、店員さんが説明してくださった「アカモク」をかけて食べます。
アカモクは神の海藻と呼ばれていて、栄養抜群だそうです。
ひとくち食べてみると、これがうんまい。
自転車に乗ってくたびれていたのもあり、涙が出るほどうまいです。
イカの食感がアクセントになっていて、しかも生姜がいい仕事をしている。ネバネバしたものが苦手なはずなのに、アカモクを混ぜたご飯がスルスルと進みます。
ちょっと生まれてこの方食べたことがない美味しさでした。
帰り道は、人っ子一人いない
閑話休題。
夜の水木しげるロード滞在については割愛しますが、案の定終電を過ぎた時間まで滞在することになりました。
「そうそうこれこれ。これのために自転車を買ったんだ」と、
勇んでホテルまでの帰り道を、自転車で漕ぎ始めます。
道が暗い!(当たり前)
いや、なんというか、こう、都会の暗さとはまるで違う夜でした。
広い車道に出るまでの道には車が十分に一台通ればいい方。徒歩の人間などおらず、自転車もほんの数台通り過ぎるのみ。
やっと車道に出たと思ったら、車はバンバン後ろからやってくるのに、徒歩や自転車の人は比喩なしに一人も見つかりませんでした。
足が痛すぎて途中で自転車を降りて歩いているんですが、
今考えるととてつもなく危険です。誘拐されても誰一人目撃者がいない。
早く帰ろう! と思うのですが、行きですら40分かけたので、帰りは自転車で1時間かかりました。
「自転車なら片道30分って言ったじゃん! グーグル先生の嘘つき〜〜!」
なんて思いつつ。
いや私が完全に悪いです。ミニベロを舐めてた。
ちなみに、後から地元のタクシー運転手さんに聞いたところ、
私が通った道は、かつて拉致の名所だったそうです。危ない。
二日目は「時間が余ったら弓ヶ浜サイクリングロードでサイクリング、るんるん(ง ᵕωᵕ)ว♪」
だなんて思っていましたが、とてもではないですが体がボロボロで、自転車を漕げる体力はありませんでした。
代わりに徒歩で地元の銭湯に行ったんですが、湯に浸かっているうちに、「筋肉ズタズタかな?」と思っていた太ももの痛みがすっかり引いていきました。
これが……湯治!!!(?)
(本当のミニベロの漕ぎ方は、尻の筋肉ともも裏をスクワットと同じ要領で漕ぐものらしいです。太ももの表側がずたずたになるということは、漕ぎ方が間違っていたかも知れません。普段デスクワークなのでスクワットで使う筋力へなちょこなんですけどね……)
輪行&ポタリングは、シティサイクリングとはまったく別のスポーツ
輪行で得たのは、サブタイの通り、輪行用の自転車でポタリング(ゆるいサイクリング)するイベントは、都会の自転車を乗り回すのとはまったく別の種別だということでした。
輪行よりも、その後の自転車に乗るほうが大変だったとは😂。
現在、輪行のお供にしたミニベロは、部屋の片隅に置かれた小屋のような輪行袋のなかで、次の輪行をひっそりと待っています。
これで懲りずにまた輪行しに行こうぜ、相棒……。
私と旅するとこんな感じになるので、誘う時は覚悟してくれな……。
(おわり)
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