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痒み

母の身体に異変が起きたのは痒みだった。

春に蚊に刺されたわけでもないのに
痒い痒いとやたらに身体を掻きむしる。
塗り薬のウナコーワでは全く効かなくて
もっと強めの痒み止めを薬局で買って来て
それを身体に母が塗りたくっていた。
母の腕や脚は引っ掻き傷だらけになった。
まだ何が起きてるのか分からなかった。

2016年4月のある夜。
母が「悪寒がするからもう今日は寝るね」と
リビングに居た私に静かに言った。
強い痒みから悪寒がして気分が悪いとの事。
さすがに母の身体に何か異常が起きていると、
これは何かがおかしいと悟ってはいたが、
母が騒ぎ立てず静かに寝床に行き
さっさと寝入ってしまったので、
それ以上は変に構わずただ「おやすみ」と
母に対して言葉をかけるしかなかった。

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