三月花形歌舞伎「番町皿屋敷」
「番町皿屋敷」というと、井戸から幽霊が出てきてお皿を数える怖いお芝居を連想される方が多いと思いますが、実はこれ、恋物語なんです。
旗本の青山播磨と腰元のお菊との身分違いの恋。
それゆえに、お菊は播磨のことは信じているが、もしかすると身分の高いところから、奥様が輿入れしてくるかもしれないと疑心暗鬼になってしまいます。
そこで、播磨の気持ちを確かめるために、青山家が代々大切にしているお皿をわざと割ってしまいます。
播磨は、愛するお菊が粗相をして割ったのなら、いたしかたないと許します。
お菊はそれを聞き安堵しますが、わざと割ったところを同僚の腰元に見られていて、それを播磨が知ってしまうのです。
自分の気持ちを確かめるために、お皿を割ったお菊を許せない播磨は、次々と残りのお皿を割ってしまいます。
確かにお皿は大切ですが、形あるものはいつかは壊れてしまうのことを知っているので、割れてしまうのは仕方がない。
ただ、お菊が自分を信じてくれなかったことが残念でならないのです。
お菊の播磨を信じたいが、本当に自分のことを好きでいてくれるのだろうかと疑いたくなる気持ちもわかるし、播磨の心からお菊を愛し、信じていたのに、裏切られた苦しい胸もわかるしと、観ていて苦しくなりました。
今回「花形歌舞伎」ということで、若手歌舞伎役者さんたちで演じていらっしゃいました。
しかも午前午後でのダブルキャストです。
青山播磨役を午前は中村隼人さん、午後は中村橋之助さんが演じ、お菊役を午前は中村壱太郎さん、午後は中村米吉さんが演じました。
役者さんが違うと演じ方も違うので、それぞれ違っていて、感じるものも違いました。
播磨のお菊への気持ちを吐露する場面やお菊が播磨に切られる覚悟をする場面は、どちらの役者さんがよいとかではなく、それぞれのつらい気持ちや諦め気持ちが所作一つ一つに表れて、それぞれの切なさが伝わってきます。
実は、いままで何度か歌舞伎の舞台を観劇したことはありましたが、午前・午後の両方を観たことは一度もありませんでした。
最初に午前の部を拝見した後、ダブルキャストなので、午後の部も気になり、勢いでチケットを購入し一人で南座へ出かけました。
感想は、どちらも観てよかったという一言に尽きます。
同じ舞台を何度も観られ方の気持ちが少しはわかった感じです。
歌舞伎の物語は難しいものも多いですが、「番町皿屋敷」はわかりやすいお話でしたので、初心者の方でも楽しめると思います。
また今度別の役者さんで見てみたいなと思いました。
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