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輪島塗のチーム戦の未来。輪島工芸思考Part2

輪島に向かう道中、中川木工芸の中川さんの車に金沢で拾ってもらってから
何をテーマに話す?ブレストをしていました。

まず気になるのは、輪島は街ごと輪島塗の分業がされていること。
分業スタイルで工芸のイノベーションはどうやって起こるか。分業におけるもどかしさはあるのか、ないのか。
イノベーションを起こすには、輪島キリモトの桐本さんスタイルで、商品の企画、木地から塗りまでの作成、販売まで包含してしまうか。全工程包含スタイルは、他の人にどう伝播したか。

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分業のメリットは、BtoBの事業主間の取引で、分業の生態系の中での支払いが安定し、 仕事や技術が保全されること。決まった工程の中では、技術に集中して質を高めやすい。そして、多くを効率よく生産しやすい。
だけど、分業はイレギュラーな受注生産をしにくいし、新しいものを作りにくい。昔ほど沢山売れていない輪島塗における、いまの時代の分業制の意義とは。

あと、輪島塗の地位
桶、茶筒、竹籠など日常使いの民具は、日用品から『工芸品』への地位を変換して、いまの需要を喚起している。
他方で蒔絵や沈金など施される輪島塗は、もともと無地の御膳などの漆器が中心だったけど、高度成長期から高級工芸品としての位置を確立し、ハレの器として知られていくことになった。いまはどのように一般層にアプローチしていくかが課題。漆は手入れが大変、しまい方もわかりづらい、修理できる事も伝わっていない、お正月やお祝い事に使うものという残像がある中で、輪島塗の工芸品としての地位をどこに置き、需要を喚起するか。
前の残像が価格の設定に影響するし、「工芸品は残像と戦っている」と中川さんは言う。

そして、無記名制から記名制へのブランディングの波。
工芸品はもはや、生活の道具としての値段では作れないし需要がない。
採算のとれる売り方をするために、物だけじゃなく製造元の記名をしたブランディングをして売る流れがある中で、輪島塗の分業の中の記名制とは何だろう?

そして、工芸で継承していく価値を作り続けるとは。

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で、輪島キリモトさん到着。

輪島塗のニーズが減り、業界全体が沈んでいると、桐本さんから伺う。
桐本さんのところの仕事は、去年と今年と建築の内装に使われることが多くなり、その売上が半分近いそうで、新しいデザインや削り出しの手法を提案することにおもしろみを感じている。と熱心に説明してくださる。

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ただ、まだやれることがあると感じる中で、輪島塗を知らない人が商品開発をする状態がいいのか。
従来品をつくり続ける・売れるものを真似る、など思考停止をしないようにするにはどうすればいいのか、など模索中なわけで。

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↑工房で作られていた変わり塗りを施した輪のアクセサリー。

輪島塗の特長は、丈夫で綺麗なこと。製作工程など詳しい説明は、下記ご参照ください。

この輪島塗に無くてはならないもののひとつが、輪島から門外不出の、下地塗りに使われる地の粉でもあり。ここの地の粉は、1240万年前の珪藻土地層を焼成粉末したもので、多孔質で漆を細かく吸い込むから漆器をより堅牢にしてくれるそう。

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輪島漆器商工業協同組合が管理する工場が、輪島の珪藻土に独自のノウハウを掛け合わせた地の粉を生産管理しています。(写真撮影不可)

他の漆器と比べて輪島塗の優位性は、木地に布着せを施すこと、漆に地の粉を混ぜて塗り込むことで丈夫にしていることなので、皆でここの地の粉とノウハウを守っています。輪島漆器商工業協同組合に加入していないと地の粉は手に入れられない、とのこと。

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↑工場内で唯一写真撮影OKだった、地の粉そのもの。
この話の流れできいたのですが、輪島塗は、100年前のものでも直して使えるそう。知らなかったよ。('◇')

そして、輪島クリエイティブデザイン塾の方々との座談会。

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輪島クリエイティブデザイン塾とは、輪島漆再生プロジェクト実行委員会から派生して生まれた新しいモノづくりを一から勉強する塾で、
メンバーは、輪島市内の木地屋さん、塗師屋さん、輪島漆芸技術研修所卒業生などで構成されています。

座談会の様子はこちら。Part1は自己紹介がメインだったので、Part2のリンクを貼っておきます。

問題提起された内容をざっくり挙げると、

輪島ブランドの売り方。『輪島塗』で売るには難しい時代がきている。どう輪島塗のブランド力を高めていくか。分業の無記名制から、記名制でアピールと差別化を図っていくか。
分業だからつくれるこだわったもの、分業じゃないからつくれるデザインや販売が柔軟なもの、どちらもある
・輪島にいると職人として生計を立てられる文化を醸成したい。
京都は認知度が高く、土地柄のブランド力があり、来てくれる優位性があり強い。輪島の認知度とブランド力と、誘引力を高めるのは必要。
・分業制は経営者にとって都合のいい制度。雇わなくても設備を揃えなくてもいい。
・分業制では、職人も様々なところの注文を受けれるし、技術を磨いていける。

・輪島を訪れて、輪島塗でカスタムメイドのオーダーができたら楽しそう。
・インスタグラムなどで、製作途中経過から見せて売るのもありかも。

・いま日常に忍び込ませる工芸が求められている。
輪島らしさ、京都らしさより、使い手の日常に入れ込ませる方がニーズがある。

工芸の発信、言語化の重要性
言葉の投げかけをして自分にもフィードバックされることが、輪島の作り手にはほとんどない。輪島のものづくりの質は劣らないので、もっと自分たちのものづくりや問題意識を言葉でも発信すべき。

そして、次の日。
案内していただいた輪島塗会館で、LEXUSのDINING OUTで作られたお皿を目にして、これだ、と思わされた訳で。

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↑ONESTORY記事より。

こちらのDINING OUTで使われた器は、建築家の隈研吾氏プロデュースで、ひとつひとつ、124工程ある輪島塗の出来上がる過程を表してる。

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↑PRtimesより。

輪島塗会館では、DINING OUT で使われたひとつひとつの器の展示に、木地師、塗師、蒔絵師など器づくりに関わった方々の名前が添えられていました。(展示が写真NGだったため、写真はありません。)

輪島塗の工程をほぼ包含して、企画やデザインや販売方法を自在にしてイノベーションを起こす方法もあるけど、
分業制はそのままで、ものによって柔軟にユニットを組んで新しいものを作っていくことも可能なのでは、という感覚を持つ展示でした。

各工程の作り手が見えることで、ワクワク感が増す、というか。
サッカーチームとかチーム戦の球技のように、いつものメンバーでもいいし、メンバー入れ替わってのスタメンでもワクワクするというか。

情報発信がインターネットやSNSで気軽にできる時代での存在感の発揮の仕方もある、というか。

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輪島のチーム感と課題感をぼんやりと掴んだ訪問。

桐本さん、GOONの切磋琢磨感が羨ましいっておっしゃってた。
なるほどなぁ


お時間いただきありがとうございます。