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見知らぬ新成人に声をかけた私のおせっかいのすゝめ

今日は成人式。

出かけようと鎌倉駅で電車に乗ったら、同じ車両に新成人の男子グループが乗っていた。明らかにはじめてのスーツって感じ。うふふ、懐かしい感じ。かわいいなあ。

そう思って何気なく目をやると、一人の男の子のスーツ後ろ、センターベントにまだ仕付け糸がついているのが目に入ってきた。

こういう時、私の頭の中では高速で一人問答が繰り広げられる。

「お節介かなあ。でも誰にも教えてもらわなかったらこの彼一日中これでいるだろうなあ。久々の同級生に大人になって再会する日だよなあ。初恋の人とかも来るやつだよなあ。」

3秒くらい悩んで「よし」と私は立ち上がり、後ろからそっと近づいて声をかけた。

「あのう、余計なお世話だとは思ったんですけど、ここの糸、まだついてるから取ったほうがいいかも」

当該の彼はちょっとバツの悪そうな顔をしたので、私は「切ったほうがカッコいいよ」とさりげない笑顔で言い残し、元いた席に戻った。

グループの中には「お前出直してこいよw」と笑う男の子がいた。そのあと、恐らく別の男の子が「いい街だな」と言った。「オレら成人式って分かるから教えてくれたんだよ、きっと」「優しさだね」という声も聞こえてきた。

私はスマホに集中して聞こえないふりをして目を上げはしなかった。しかし、その言葉は「どうかなあ、ちょっとお節介だったかなぁ」と心配する私を楽にしてくれただけでなく、ちょっとだけ恥ずかしい思いをしたセンターベントの彼を救う言葉でもあったと思う。いい子たちだなあと思った。私は丸大ハンバーグの巨人よろしく「いい大人になれよ」と心の中でつぶやいた。

私は乗り換えのために、彼らは成人式のために大船駅で降りた。センターベントの彼は目が合った私に、改めてハニカミながら「ありがとうございました」と言った。私は「おめでとうございます」とマスク越しに今度は精一杯の笑顔で伝えた。

プラットホームをゆっくり歩く彼らを追い越しながら、また彼らの会話が聞こえてきた。恐らくさっき出直してこいと言ったツッコミ担当らしき男の子が「お前、成人なんだからナンパやめろよ」と茶々を入れていた。

ぶっきらぼうな物言いの男の子だが、もしも全てに気づいた上で私に聞こえるようにそれを言ったのだとしたら、サラリーマン検定合格である。世渡り上手な大人になることだろう。

なぜなら私は成人式といえば1月15日という彼らのお母さん世代だ。マスクのせいで本当に若く見えていたのか、ぶっきらぼうに見せかけた配慮の深さなのか、真相は闇の中である。いや、前者な訳ないか。どんだけ楽天的なのか(笑)

あの男の子、カッコよく同級生と再会できたかな。

ちょっとしたお節介を焼くと、普段通りに暮らしてるだけでは接しない人との出会いや、思いがけない出来事が起こる。その結果、自分も相手もちょっとハッピーになることもある。

だから私は今日もお節介を焼く。

すべての新成人に幸あれ。


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