プレゼンテーション2-2

売れない理由は社員ではなく、お客様に聞くべし!(社長Talk : 龍角散 藤井隆太社長)

社長Talkというネットラジオを11年間続けています。週に1度、社長さんをお招きして、お話を伺う番組です。ゲストは、上場企業を中心にしていますが、大企業というよりも上場して間近な経営者さんや自らが創業者という方がほとんどです。

先週の火曜日6月12日に公開したのは、龍角散の藤井隆太社長です。200年以上の歴史を持つ龍角散ですが、藤井隆太社長が社長に就任された時には、倒産寸前だったとのこと。その龍角散をいかにして再生し、21世紀の龍角散へと進化させたのかを伺いました。

対談の全編は、40分ほどあり、下記のような内容を、audiobook.jpで有料公開していますが、今日は、このnoteの後半で、中身の一部を文字でご紹介します。


1)倒産寸前で社長就任、長所を活かして時代に合う龍角散へ
2)喉の専門メーカーとして、新たに市場をつくる
3)棚ぼたでない、戦略的につくったインバウンド需要
4)オンリーワンで、得意なことに徹底したプル戦略
5)音楽家と経営者の共通点は、オンリーワンの存在意義
6)消費者のための問題提起。原点は「人助けのため」
7)論理性と対話力を併せ持つ音楽家の強みをビジネスへ
8)生命関連企業としてまず一番にお客様の声に耳を傾ける
9)現場の情報を徹底的に調べ、現状を改善する

売れない理由は社員ではなく、お客様に聞くべし!

藤井:私が社長として戻ってくる前に、既にもう売上げはだいぶ落ちていましたから。値上げして補ったりしたけど、生産量がどんどん減っていましたから、コストはアップするわけですよ。だから現業はもう赤字状態で、不動産業で補ったというような状況でしたからね。それで慌てていろんな新製品もやっていましたけどね、結局、そんな状態になってから慌てて新製品をやっても、ろくな物できませんよ。ほとんど失敗だね。それでもう返品の山でね。だからそれはね、やるのであれば性根を据えていかないと、うまくいきませんね。

藤沢:それで、一気に集約というのを藤井さんがなさった。

藤井:ええ。当時の経営陣はね、原点の龍角散のパウダーは微粉末で、売れないからもう諦めようということを考えていたんですよ。そしてもっと市場規模の大きい、例えば胃薬とか風邪薬とかを売郎と考えていたんです。要するに、ブランドの知名度はそこそこあったわけだからね。大企業がうまくいっているんだから、大企業の縮小版をやればいいという考えがあったのですが、これは一番弱いと思う。私は猛反対でしたけどね、何を考えているんだと。

でも社員に聞いたって何もわからない。会社がまずいときにね、社員に聞いたって何も教えてくれませんよ。どう思うかと言ったって、社長が悪いって言いますよ。だから聞くだけ無駄。だけど現場は死ぬほど回りましたよ。それで当社は一体どういう位置付けなのかとか、それで何ができるのかと。そこで一番良かったのは、もうものすごい反対は食らったけどね、実際の愛用者。売れなくなったときに、大体皆さんはどうして売れなくなったのかって考えるんですが、私はちょっと違うんですよ。

「いや、落ちてはいるけど、それでも買っていただいていますよね。その方たちはどう思っているんでしょうね」と。それで分析したんです。定量調査をやってみたら、何しろ象徴的なのはね、「もしお店へ行って龍角散がなかったらどうされますか」と、「許さん。どこにでも探しに行く」と。「そうですか」と。もう涙が出るほどうれしかった。「おれはこれがないと困るんだ」とかね、「私はこれがないと困るんだ」と。「じゃあどうしてですか」と聞いてみるとね、もう簡単で。例えば「この製品にはすごくいい所がある。これは血中に入らないんだ」と。喉だけだからね。「だからほかに強い薬を飲んでもあんまり関係ない」と。女性も「産婦人科の先生から勧められたから」と。それで聞いてみたらね、問合せのトップはやっぱり女性だとか妊婦さんとか、それから産婦人科の先生からも結構来ますよ。「これは血中に入って効くのではありませんね」と。それは事実だから、「あ、そういういいところがあったわけね」と。で、これはいい所を使うべきだと。別に悪い所を見る必要はないですよ。いい所だけをしっかり伸ばして強くすればいいんですよ。

藤沢:いいところを伸ばす。じゃあ悪い所を改善するとか、カバーラップとかではなくて。

藤井:そうそう。それはね、あのパウダーの微粉末は、それは扱いづらいですよ。結局ね、ほら、今の活動的なライフスタイルの中で、あの缶を持って回って、こうやってね、「はい、ゴホン!といえば龍角散」ってできますかといったって、なかなかやってくれませんよね。今のライフスタイルに合ってないなとね。それも扱いづらいなと。で、これはもう申し訳ないけど、新規ユーザーは、これだけでは無理だなと。だけどもしかしたら使用機会を増やすことはできるなと。

あるいはトライアル版としてクララという製品があったわけですけど、水なしで溶ける顆粒としては世界初ですよ。いまだに、あれだけ溶けるやつはあんまりないと思うけどね。今は「龍角散ダイレクト」という名前にしましたが、これをトライアルバージョンにしようと。これを先に飲んでいただこうと。で、味も変えて、それで飲んでもらって。そうすると、ぐっとバリアが下がるわけです。「じゃあ、微粉末もいいな。寝る前は微粉末で行こうかな」と。そこで両方とも売り上げ上がりましたからね。■

*このnoteでも、音源を公開していこうと思っていますので、ぜひ、フォローをお願いします!

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