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【三すくみ!静岡5区】負けは即死の「無所属」立候補・細野豪志 VS 負け続けてきた「自民党公認」の吉川赳 VS 裏切者は許さない「立民新人」小野範和 ~背水の陣の3人~

「何かあった?」
スマホから顔をあげると、さっき見た景色と変わらないことに驚いた。運転手を買って出てくれたスタッフは「故障車ってありましたけど、もう10分以上動いてませんね」と。どうも東名高速の渋滞にはまってしまったらしい。

あー、運が悪かったのかしらね。もう少し早く出ていれば・・・。

ナビを見ても、ここは一本道。渋滞から逃れる道がありません。渋滞に引っかかったら運が悪かったと思ってあきらめるしかないのが実情。これが、東京から静岡に向かう東名高速道路の最悪なところ。高速が混んだら降りれば良いといっても、同じように高速離脱しようとする車で出口が数㎞にわたって渋滞するし、やっと脱出できたと思っても、一般道も秦野中井インター付近までは全線渋滞となっています。高速道路の表示で最大40kmの渋滞などは珍しくありません。東京インターと秦野中井の間が全線渋滞という距離感です。

無所属 VS 自民党 VS 立憲民主党

静岡5区は、東京からこの東名高速道路を通ってたどり着く、富士山の明地です。この富士山の裾野をとりまく戦いが、今回は三つ巴!細野豪志が勝てば、晴れて自民党入り。これまでの、無所属の国会議員だけど、自民党・二階派の特別会員といういびつな立場から脱することができます。

何が何でもそれだけは食い止める!自分が自民党公認だ!しかも生粋の岸田派!ボスは総理大臣!負けるわけにはいかない!というのは吉川赳。母親を政治家に持つ39歳。細野には負け続け、前回は比例復活もならなりませんでした。

裏切者をのさばらせるわけにはいかない!と立憲民主党の威信をかけたのは小野範和。民主党で選挙を戦い続け、この地で知名度を上げた細野を裏切者と名指しして、打倒細野で立憲民主が立てた候補。

この3人、誰もが「負けは即死」の三つ巴選挙区です。
さて、誰が勝つのか。負けるのか。


負けたらおしまい、無所属・細野豪志(50)

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今回は無所属での立候補。「これに負けたら政治生命は終わります!」支持者に向けた挨拶の言葉は、背水の陣を敷いた言葉そのものなのでしょう。前回の衆議院選挙では、小池百合子氏と共に希望の党を立ち上げ、初速はあったように見えたものの結果は惨敗。野党が勝つといわれていた選挙だけあったこともあり、戦犯とも言われました。その後、細野氏は無所属となりました。その時、面倒を見てくれたのが自民党幹事長だった二階氏でした。現在、細野氏は二階の特別会員となっています。この衆議院選挙で勝てば、自民党所属の国会議員となります。これに対して、これまで応援してきた支持者が離れていくのはある程度覚悟の上だとは思います。野党を離れる理由を「安全保障の面で共産党とは与しない」というのが細野氏の理由ではありますが、これだけで納得することはできないのが、長年応援してきた支持者の思いなのでしょう。「あなたを信用できないの!」とかつての支持者であっただろう女性が詰め寄ったシーンは、緊張感がありました。

負けたら自民を追い出される、自民党公認の吉川赳(39)

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この細野氏に対抗して出馬しているのが、自民党公認の吉川赳氏。これまでの選挙では、細野氏に3連敗。前回の選挙では比例復活もできませんでした。折も折、今回総裁になったのは、吉川氏が所属する派閥、宏池会のボスである岸田文雄総理です。派閥のボスが総理になったというこの勢いに乗って勝利を目指したいのが、悲願中の悲願、選挙区での当選でしょう。
「自公政権の継続なのか、もしくは立憲・共産政権を認めるのか、こういった側面も訴えていきたい」と訴えます。が、宿敵細野氏と、この点での違いを見出すのは難しいのです。


裏切ったアイツは許さない・立憲民主党新人候補、小野範和(48)

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この執念の戦いに割って入ろうと挑んでいるのが、立憲民主党の新人候補者、小野範和氏です。
小野氏の母親は、伊豆の国市市長だったことがある小野登志子氏。母親である元市長の応援演説は、慣れたもの。小野氏は、育った環境からも選挙の何たるかを知っているという意味では、全くの新人候補ではないと言えるでしょう。銀行で働いていたことを背景に、資本主義が生み出す格差是正を主に訴えています。小野氏が狙うのは、細野氏が切り捨てた野党票。この選挙で頭角を現すには、細野氏に裏切られたという票をひとつひとつ拾い上げていくことしかないでしょう。

東名高速の渋滞で、細野氏の演説会は終わっていた

私が、東名高速道路の渋滞を抜け、細野氏の演説会場に到着したのは予定時刻の1時間半後でした。楽しみにしていた細野氏の演説を聞くことができません。そこで、この後の演説会場を聞き出そうと選挙事務所に電話をかけてみました。聞き逃したので、どこかで演説を聞きたいと伝えたのですが、その日のオープンな演説はもうやらないとのこと。翌日Facebookに演説の様子をアップするとのことでしたので、その演説を見ることにして電話を切りました。この電話の問い合わせで、事務局の対応は見事でした。丁寧ですが、スピード感もあり、できることとできないことをスパッと印象良く伝えてくれました。地元で票を集めるには、秘書の役割は非常に大きいものです。細野氏が強い根拠のひとつでしょう。感心するほどの対応力でした。

吉川氏の演説会場へ

演説をライブで聞けなかったのはとても残念でしたが、気を取り直して、この日はもうひとつ見つけていた吉川氏の集会会場に向かうことにしました。もう日も暮れていたのですが、やはりどうしても演説を目の前で聞いてみたくて、街頭すらない真っ暗な細い道を小一時間、車を走らせました。あぜ道を進んだ先にポッカリと現れたのが地域の公民館でした。そこには数十人の支持者が集まっていました。そしてその中央に吉川氏がマイクを持って熱弁をふるっていました。

吉川氏の演説を聞いた私のMEMO↓

「この地域の選挙の構図ばかりが注目されるが、1人の政治家の都合で注目されるのは違うのではないかと。」「宏池会、日本の底力を信じて、保守本流、寄り添い愛支え合う!(わかりやすい)岸田総理を支える若手の1人として、温もりのある政治を私に託してほしい。ただ真っ直ぐに進みたいだけなんです(拍手)…ご支援をお願いしたい。」「今回は吉川、今回は吉川とご支援宜しくお願いしたい!」(暑苦しさ、力強さ、ちょうど良い。演説上手い) *カッコ内は私の感想

演説は上手いと思いました。歯切れのよい言葉が、詰まることなく流れ続けます。話の間をとるのも完ぺき。これは、細野氏にも強敵なんじゃない?人柄も良さそうな親しみやすい笑顔と、分かり易い言葉。これは女性票も取れそうに見えました。

細野氏の演説を見た私のMEMO


翌日、細野氏のFacebookにアップされたその日の演説動画を見ました。細野氏が訴えていたのは、渋滞にはまって辟易としていた私を見ていたかのような、道路と観光の話題でした。

「なぜ、富士地域には観光客が来ないんでしょうか。先ず解消しなければならないのは、道路問題。西富士道路をそのまま延伸して、田子の港の北側まで高速道路を接続したいと思います。」「一号線のバイパスをこの田子から富士川まで立体化することによって、横の線を強化して渋滞を解消したい」(現実的、有権者が聞きたい話、渋滞が日常の街)「夢物語じゃない!」(信じさせる力)「隣の町はこれで渋滞が少なくなっている!」(うまい!)(リアリティの持てる夢)

誰が一番上手い?

吉川氏も演説は上手かった。でも、演説の内容に具体的な問題が盛り込まれ、有権者が聞きたい話をしているという点で、細野氏の演説は抜群に上手いと思いました。また、小野氏もヘタではありませんでした。経済政策は自信があるのでしょう。力強くもありました。でも何だろう、印象に残る言葉がなかったのです。演説の力量で言えば、政策を演説に取り込み、分かり易い言葉で解説しつつ、希望の光が見える未来を伝える、という意味では、細野豪志の圧勝でした。

自力で勝つ人は、政党がどこであろうが、親分が誰であろうが、勝つ

選挙で勝ち続ける人には、理由があります。それは、自分の選挙区を畑のように耕し続けることです。空を見上げて雨が降りそうだったら覆いをかけ、日照りが続きそうだと思うなら日よけをつけて、心を配り、成長に向けて手塩に掛ける。これが強い選挙区です。

この真反対にあるのが、政党の風頼みの政治家。今の自民党魔の三回生がこう言われていますね。安倍人気だけで当選してきているので、後援会もろくに作っていない、街頭演説もしていない、党員党友も集めていない、そんな人たちがたくさんいるのです。今回の選挙でかなりの数淘汰される予想ではありますが、比例単独と同じくらい、問題があると思っています。この件は後日また改めて書きます。

さあ、政党の支持率が高いとか、今の党首では勝てないなどと言っているうちは、いつまでも弱いまま。どの政党でも、無所属でも、勝ち続けるための熱心なファンを作ることは最重要課題です。これができているのかどうか、この審判が下されます。比例復活がない無所属での立候補。自分こそが本家本元といきり立つ立候補。いやいや、あいつを活かしておいてはならぬのだと、執念で勝ち抜こうとする立候補。

いずれの背水の陣も、この迫力は、静岡5区独特のものでした。有権者の心に刺さるのは誰の思いだ!


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