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読む絵本 『つばさ』 最終回


サルさんととりさんが、力を合わせて育てた木や畑は、たくさんの花が咲き、実をつけました。

あたたかいお家を建てて、子どもたちは元気に野原をかけまわり、力なく悲しんでいたなんてうそのように、みんなに笑顔が戻りました。


その様子を、トラさんたちはずっと見ていました。
サルさんたちの力で、どんどん美しく大きくなっていく砂の丘を見て、くやしくて石を噛みながらギリギリと手をこまねいていました。

そのうちトラさんたちは、サルさんたちから奪った木の実など、さんざん食べては残して腐らせ、何の手入れもしていなかったので、ついには食べ物が底をついたのです。

お腹が減って弱ったトラさんたちは、自分たちが間違っていたことに気がつき、とっても反省してサルさんたちの砂の丘までやってきました。

その顔には、ギラギラとつり上がった目も、逆立った毛もありません。キバは、石を噛みすぎてなくなっていました。

そうして、サルさんととりさんの前でこう言いました。

「サルさん、とりさん。オレたちは君たちよりも
 強い力をもっているのをいいことに、
 君たちが持っているものを
 力づくで奪い取ってしまった。
 そして、全部を使い切り、
 もう何も残ってないんだ・・・。」

そう言うと、涙を流しながらまた、

「ごめんなさい。
 オレたちは間違えていたよ。
 もし良かったら、少しでいいから
 何かわけてくれないかい?」

サルさんたちととりさんは、顔を見合わせてびっくりしましたが、すぐに笑ってトラさんにこう言いました。

「トラさん、ぼくたちはみんなで力を合わせて
 楽しんでこの丘を緑でいっぱいにしました。
 そしたら、ぼくたちだけでは食べ切れない
 くらいの食べ物が実りましたよ!」

「これからは、足りないものはみんなで
 協力し合って作っていきましょう。
 ぼくたちの砂の丘では、まだまだ水が
 足りません。
 トラさんたちはきれいな水を蓄えるのが
 とても上手ですよね。
 その方法をこれから教えてくれませんか?」

トラさんたちは、涙を流しながら喜んで、

「もちろんだよ!ありがとう。
 オレたちを許してくれるんだね。
 これからは、サルととりとトラの村を
 作っていこう!」

と言うと、とりさんが

「ぼくは、いろんな物を運んだり
 調達しに行く間に、もっとたくさんの
 動物たちを見ました。
 それは海の向こうだったり
 山の向こうだったり。
 鼻の長いぞうさんや、海の中のイルカさん
 シマシマ模様のシマウマさん、
 それから・・・
 大きなはねを持った小さくて美しい
 チョウさん。
 みんなぼくたちの仲間なんだよね!」

それを聞いて、みんなうんうんとうなずいて、手をつなぎ始めました。

「ぼくは、みんなの作った食べ物や
 大切な気持ちを、
 この[つばさ]を使ってこれからも
 いろいろな所へ届けにいくよ。
 そして、同じ気持ちを届けに
 またここへ戻ってくる。」

みんながその言葉にワクワクして、その夜はたくさんの食べ物を囲んで、収穫祭を楽しみました。


幾日か経ち、とりさんが自分の家に戻った時、庭先の花の中になつかしいチョウさんの姿をみつけました。

「チョウさん!ぼくだよ。会いたかった。
 元気だったかい?」

と言って、チョウをつばさの中に抱えてほおずりしました。

チョウも喜んで

「とりさん、私も会いたかった!
 旅はどうでしたか?」

とりさんは、今日まであったことを、ひとつももらすまいと、一生懸命チョウに教えてあげました。

「それはとてもすばらしいです。
 とりさんは、その[つばさ]が
 なぜ[つばさ]なのか気がついたのですね。」

とうれしそうに言いました。とりさんは、

「それは、チョウさんから教えてもらったんだ。
 ぼくは、つらくて苦しかった時、夢の中で
 チョウさんとダンスを踊ったんだよ。
 それがどんなにか力になったか!」

そう言うと、ヒョイっと一歩前に出て

「行こう!チョウさん。さぁ、
 ぼくの背中に乗って!」

とりさんは、大きな背中にチョウを乗せて、海の向こうの砂の丘まで楽しく円を描きながら、一気に飛びました。

砂の丘では、サルさんやトラさんや、ほかの沢山の動物たちが待っていて、とりさんとチョウさんをあたたかく迎えてくれました。

そして、みんながひとつになった喜びとともに、今度は大きな輪を作り、時間を忘れて楽しく音楽に合わせて踊り続けました。


この小さくてまぁるい星は、動物たちの優しい心と同じように大きな光を放ち、いつまでも平和で美しい星であり続けるのです。

お・わ・り ♡



あとがき*

つばさは、今回で最終回です。
みなさんの心の中の絵本は、どんな色で、動物たちはどんな姿をしているんでしょうか( ´ ▽ ` )

この物語を思いついて、スケッチブックと仲良しだった少々根暗な私は、鉛筆でバババーっと書き殴るみたいに、一気に書きました。

人間関係に悩んだりして、スピリチュアルな世界に憧れて、そしてすごくナチュラリストな思考に偏っていた、そんな時期だったかと思います。

平和と調和に憧れて、でも自分の中は全くその逆・・・。
人の態度に一喜一憂しては、いつも心が休まらない。
本を読めば、逃げてもまた同じような現実は追いかけてくる。とか、目の前の現実はうつし鏡だから、とか。世の中全てに自分が責められている様な気にさえなったり。そして、そのまんま自分が自分を責めてばかり。

あの頃から10年余りで、受け取れる情報量が一気に増えたし、世の中の雰囲気も随分と変わりました。

何より、私はあの頃とは何もかもが180度真逆な生活と、性格をしております。


キングコングの西野さんは、未来は変えることはできないけど、過去を変えることはできる。と、おっしゃってました。

私は、あの頃無心で書いた「つばさ」という物語を、あの頃の私と一緒になって今、完成させた気がしています。
一緒に読んで、考えて、修正して書き足して。
楽しいね。書くことが好きだよね。とか、会話しながら、あの頃から抱えていた悲しみとか、怒りとかそんなことも思い出しては、慰めて癒されたと思います。

そして、みなさんにつばさを読んでもらって、ドキドキしたり交流したりして、過去の自分が誇らしくさえ思えて、過去が変わりました。

とりさんとチョウさんたちも、こうして大きくつばさを広げられて、きっと喜んでいる気がします。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございました!感謝しています。


これからもnoteを、楽しんで行きます(´∀`*)

物語ももちろんだし、自分の内側のことも書いていこうかなぁ。

ワクワク楽しむことが、私のnoteの第一条件です♪

ぜひぜひ、これからもよろしくお願いいたします!



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