見出し画像

『アリとキリギリス』に納得いかない、という話

アリとキリギリスの童話ってご存知ですか?ご存知ですよね。なめんなよってか。

アリさんは、春のうちにせっせと食料を貯めて、キリギリスはその間、バイオリンを弾いて遊んで暮らした。
冬が来て、食べるものがなくなった時に、キリギリスがアリさんに助けを請う、という話。

先日、同僚の講師に「この話知ってます?」と聞いたところ、最後のオチが2種類に分かれた。

①最終的にアリさんがキリギリスに食料を分け与えて、助けてもらった話。
②アリさんは一切取り合わず、キリギリスは死んだ、という話。

どちらのオチだったか覚えてます?
僕は、子ども用の絵本で読んだ記憶だったので、①助けてもらった の方で印象に残ってた。


明らかになる2つの嘘と、1つの決定的間違い

そもそもキリギリスって、肉食(他の虫を食べる)なんですよね。
食べ物を溜めこむ習性がない。

さらに言うと、冬は越せない。
11月には全ての成虫が死に、卵の状態で冬を越し、春に復活するらしい。
なので、冬が来る前に交尾をして、いかにたくさん子供を作っておくか。
キリギリス的人生のサイクルでは、そこが大事。

交尾をするには、メスを惹きつけなきゃいけない。そのために彼らは一生懸命鳴いているんです。

だから、キリギリスが反省すべき点があるとすれば、

「結局バイオリンが下手でモテなかった」

というところではないかな?と。


「努力は報われる」という気休め

この童話の何が苦手かって、

「コツコツやることが正しいですよ。怠けてたらアカンです」という教訓。

いやいや、そんなことないじゃん、と。コツコツ努力しても報われない時ってあるよ?

どんだけ過去問で点数出してても本番の入試落ちることはあるし、

どれだけ時間かけて作った動画も、即ボツくらうことだってある。

「努力すること」「時間をかけること」は成功にとっての必要条件であって、十分条件ではない。


個人的には、好きなことを自由にやることは悪いことじゃないと思う。

努力することだって、大事なことだと思う。

ただ、やるなら、正しい努力をしようと、と思う。


キリギリスが、アリと同じように食料を溜め始めたらどうなったと思う?

・アリのように複数匹でチームが組めず、作業効率的に間に合わない。

・食料保存の技術がないから、冬まで食料が持たない。

・保存場所の巣がないから、集めては集めては、食料を持って行かれたり。

そんなことが想像がつく。(わからないけれどもね。)


アリはアリで、食料を溜め込む生態、仕事があるのだから、それを全うする。

キリギリスなら、交尾ができるようにがむしゃらにバイオリンを弾く。

そういう正しい努力をしていきましょう、ということが大事なんじゃないかと思う。



得てして、「考えないという怠慢」を正当化するために「コツコツ努力」という言葉が使われていることが多いように思う。

考えるのって、めんどくさいし、不安だからね。



キリギリスが死んだ本当の理由

だけど誰しも、死にたくはない。

だから、この話の中のキリギリスは、「死ぬ」という、いわゆる「失敗」を犯したと言えると思う。

このキリギリスは、下手なバイオリンで子孫が残せなかったわけだけど、その失敗の理由を推測してみると、

①何が求められているか(メスに刺さる演奏)が、わかっていなかった。

②現状の、自分のバイオリンの技量が、どのくらいかわかっていなかった。

この辺が思い浮かぶ。

彼はいけると思ったのかもしれない。けどその技量ではいけなかった。(交尾できなかった)


僕としては、教訓として「コツコツやる人が正しく、怠ける奴はイカンよ」じゃなくて、「正しい努力をしようよ」という方にシフトしていきたい中で

「正しい努力って何よ?」という話になる。


「正しい努力」とは、

①自分が今どんな状態にいて(現状)
②何が求められているか(ニーズ)
③ ①現状と②ニーズを埋め合わせるための方法を知る、考える(改善策)

ということだと思っている。


何をゴールとするか、ということを明確にしながら、常に改善をし続ける。そういうことが大事だよね、と思う。

同時に、生徒たちにも、そういう学習スタイルが大事だ、ということを伝えていかねば、と思う。だって、間違った努力は報われないから。

・過去問は見ているか?

・赤本の傾向と対策は読んだか?

・年間計画に対して今何をすべきか見えているか?

・すると、夏休みのうちにどこまで進めておくべきなのか?

などなど。

大人たちにも、そういうスタンスで生きていって、カッコイイ背中を後輩たちに見せていこうぜ、と。

結局、かのキリギリスは、どうも女子キリギリスの反応が良くない時点で、いち早く他のバイオリン弾きのキリギリスに弟子入りするなり、意見を聞くなりして、自分の状況を分析、課題を発見し、冬までの計画を立てて、バイオリンの練習にもっと命をかけるべきだった。

絵本の挿絵で書いてあるように、寝そべりながら

「気分が向いたら弾くさ〜」みたいなテンションでヘラヘラしている場合じゃなかった。



要は、

①キリギリスがアホだった ②正しい努力を怠った

そこが良くなかった。


だから僕がこの物語を通して何が伝えたいかというと、

「アホのままでいると死ぬ」(教訓)ということ。

何も考えず、「努力してればアホのままでいいや〜」とテキトーに生きていると、キリギリスとは別の意味で路頭に迷うことになる。

誰かに騙されたり、時間とお金を無駄遣いしたり、自分が何をしたいのかわからなくなったり。

「正しい努力で、楽しい時間を過ごそうよ」と声を大にして伝えていきたい。



その後の話

こういう話を「キリギリスって結局、肉食だから〜〜うんぬん」

なんて、友人にしたら、

「お前はモテないね」と言われた。





……ちょっとバイオリン習ってきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?