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広東省東莞市の社長たちとの思い出

2013年、わたしは広東省东莞市のとある鎮への出張を繰り返していました。年に100日ほど东莞市と広州市、そして深圳市にいましたので年の四分の一は広東省暮らしだったとも言えます。

东莞の工場に滞在している間、毎晩のように食事会が計画されます。

わたしは自動車アクセサリーの製造をしていたのですが、その会社の社長さんを通して、空気清浄機・エアコンなどの家電、さらには水筒や綿棒など日用品を作る企業の経営者など様々な人と交流できました。

2013年と言えば、中国のトップが正式に交代した翌年でした。その頃、どの工場も景気は上向きで活力に溢れていました。誰もが成功を確信しているみたいで、すごい自信だなと思ったのを覚えています。

そして中国トップを褒めるほめる。前政権時代も経済的に上向きだったのが、さらに継続していましたので、経営者の皆さんも「どうだ!中国はすごいだろ」的な話をいつもしていました。

2014年に少し方向性が変わる

东莞という場所を知っている人にとって2014は変化の年でした。2014年2月に东莞市の性風俗が一層摘発されました。东莞は東洋のアムステルダムと言われ何でもありのトンデモない場所だったそうです。(アムステルダムがどんな場所か知らんけど)

興味深かったのが、一緒にいつも飲んだり食べたり歌ったりしていた中国人経営者たちが気にしたのは、今回の摘発で性風俗を利用できなくなることではなくて、経済への影響でした。

つまり性産業が巨大で都市の経済に与える影響が大きすぎるので、今後、市全体の勢いが衰えるのではという不安です。

ホテル・美容院・衣料品店・化粧品店など打撃を受ける業種は多様です。また客が減ればタクシーや高速鉄道の利用者も減りますし、駅前は衰退します。さらに工場勤務からドロップアウトした人の職業的受け皿もなくなります。治安の悪化なども懸念されました。

とはいえ、まだ本業に勢いがありましたので、それほど悲観的な声は聞かれません。しかしこの辺りから中国トップへの信頼とか賞賛というものが聞かれなくなりました。

2019年コロナ前の頃

わたしはすでに製造業から完全に手を引いていましたので、中国人経営者とは友人として会ってました。

その頃、彼らは「今はどんなに賢い人や能力のある人が努力しても、成功できない。だから何もしない方が良い」と口癖のように言っていました。

新しい事に挑戦せず、受けた注文をコツコツとこなすのが最善で、新しい設備を導入したり、新製品を開発したりするのは失敗の素だとしみじみと語ってました。最近は本を読んでるよっていう社長さんも多く、その向学心と忍耐強さに感心しました。

またこれ以上表面的に日中関係がもつれるのは良くないな〜とぼやいていました。いがみ合ってるように見えても、経済面ではがっちりだった両国ですが、小さな企業のボスたちはこれ以上もめると経済的な繋がりも失うことになりかねないと心配していました。

コロナ以降・・・・「まだ生きているか?」

コロナ以降、东莞の社長たちからくるメッセージに変化がありました。

「くまてつさん、まだ生きていますか?中国で暮らせていますか?仕事は大丈夫ですか」

まだ中国にいますよと返信すると、それは良かった。本当にすごいことだと言われます。2019年以降、彼らの耐える時期がずっと続いていて苦しんだろうなというのが感じ取れます。

もちろんこちらから「社長は生きてますか?」なんて聞けません。ですから「社長こそ、工場を維持しているんですよね。故郷に帰らず頑張っているのはスゴいですね」と返信します。

ある社長は「东莞を撤退するときは連絡するから、会いに来い。でもその時の状況では东莞に入れないかもしれないけど」なんて弱気なことを言ってました。2013年のあの強気で自信に溢れた姿からは想像できません。

◇◇◇

さて今後、中国の経済はどうなるのでしょうか?また国としてどんな方向に向かうのか?など気になります。わたしは中国で暮らす外国人に過ぎませんが、中国の社長たちとのやりとりを思い出して、そんなことを考えてしまいました。

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