見出し画像

完璧なベットサイズを選択するための8つのルール

 ポーカーというゲームの最も難しいポイントの一つが、「ベットする際はいくらの額にすべきなのか?」というベットサイズの選択だと思います。

 僕がGTO solverを使う上で大きな課題になっているのが、まさにこの問題です。

画像1

 様々な解析結果がブログなどで発表されていますが、その前提となるベットサイズは自分で設定しなくてはなりません。

 みなさん、どうしてその設定にしているのか、あまり触れられていないように思います。

 標準的なサイズは50%~100%ポットとされていますが、33%・200%が有効だという話もよく見ますし、トッププロでも15%ほどのとても小さなベットをする場面もあるようです。

 有名なプロポーカープレイヤーである木原直哉さんが、「木原プロの6原則」とも呼ばれる基本原則を提唱されています。

  大変素晴らしい記事で、僕もポーカー学習の際はこの原則から考えるようにしています。

 みなさんは、どのようにベットサイズを選択していますか? また、その思考過程を自分の中で一貫性を持って整理できていますか?

画像2

 最近、Upswing Pokerのブログにベットサイズについてまとめられている投稿がありました。今回はその翻訳記事になります。

 具体的なシチュエーションから、一般化しやすいようシンプルに解説されています。「木原プロの6原則」と比較しながら読んでみると、頭の中が整理されたように感じたので、今回はこの記事をご紹介しようと思います。

 ちょっと長いですが、とても役に立つ内容だと思います。

画像3

 完璧なベットサイズを選択するための8つのルール

2020年5月24日 written by Dan. B

 ベットサイズの選択は、ノーリミットゲームにおいて難しい問題の一つだ。すべての場面に通じる「完璧な」ベットサイズというものは存在しない。最適なサイズは様々な要素によって変化する。

 例えば、プロフロップのアクション、ボードテクスチャー、スタックの深さ、レンジアドバンテージなど......様々な要素を考慮する必要がある。

 今回の記事では、最適なベットサイズを選択するための一般的な8つのルールを解説する。33%ポットサイズや、ポットオーバーの大きなベットなど、それぞれのシチュエーションに合わせて考える。

画像4

 ルール 1: ブラインドにいるのが弱いプレイヤーのときは、プリフロップで大きくレイズする

 基本的なことだが、弱いプレイヤーからチップをたくさん引き出すようにしよう。

 強いプレイヤーは、相手のベットに対するコールレンジを、そのベットサイズによって柔軟に適応させていく。ポーカーに詳しくないプレイヤーは、これを意識できていないことが多い。

 このような特徴は、コールレンジが「静的である」「固定されている」「スタティックだ」などと表現される。

 もしコールレンジが変わらない弱いプレイヤーに対して、オープンレイズのサイズを3.5bbと2.5bbのどちらかを選ぶとすれば、あなたは3.5bbを選択すべきだ。

画像5

ルール 2: プリフロップでアウト・オブ・ポジション(OOP)から3ベットするときは、大きくレイズする

 3ベットのサイズもポジションによって変化させる。イン・ポジション(IP)にいるときは、相手のレイズ額の3倍にして、アウト・オブ・ポジション(OOP)にいるときは4倍にしよう。

 自分がOOPにいると相手はエクイティを実現しやすい状態になってしまっている。プリフロップの段階で3ベットサイズを大きくし、フォールドエクイティ狙った方が利益的だ。

 それとは逆に、IPにいるときは3ベットサイズを小さくする。相手の中途半端な強さのハンドを難しい状況に追い込むように誘導する。

画像6

ルール 3: スタティックなドライボードでは、ベットサイズを小さくする(25~35%ポットサイズ)

 ベットすることの目的は、相手のハンドのバリューを獲得するためでもあるが、同時にフォールドエクイティを獲得するためでもある。これは、相手をフォールドさせることで、ショーダウンでポットを獲得する機会を奪ってしまうことを意味する。

 このようなエクイティ奪取が重要ではない場面では、小さいベットサイズが推奨される。

 これは特にドライボードに当てはまる。自分のバリューハンドに対して、相手のエクイティが非常に低くなっている可能性が高い状況だ。

画像7

 ドライボードでベットサイズを小さくする別の利点は、相手のコールレンジの強さが変化しにくいことにもある。こちらがベットサイズを変化させたところで、相手がフォールドするレンジは大きく変わらない。ベットサイズを大きくして、無意味にこちらのリスクを増やす必要はない。

 また、フォールドしすぎる相手に対しては、小さなベットはエクスプロイト戦略としても機能する。ライブゲームや、低いステークスのオンラインゲームでは、多くのプレイヤーがポストフロップで「Fit or Fold」のスタイルになっており、これは特に有効な戦略だ。

画像8

 これから挙げる例は、Upswing Poker Labのメンバーが実際にプレイした状況で、このような概念をうまく実践している。

例:オンラインキャッシュ、6人テーブル、エフェクティブスタック 100bb

【Preflop】COが2.5bbにオープンレイズし、BBがコール。

【Flop: A♦ 8♠ 3♣ (Pot 5.5bb)】COの1.8bbのCベットに対し、BBがフォールド。

《Dougによるハンド分析》

 今回のA♦8♠3♣のようなドライボードでは、小さなベッドサイズ(この例では33%ポットサイズ)が理に適っている。COのハンドレンジのうち、バリューハンドとなる88, 33, A8s, A3s, AK, AQなどは、ターンで逆転されにくい。よって、この時点で相手のエクイティを奪うために、ベットサイズを大きくする必要性は低い。

 下の図はこの状況のエクイティを計算したものだ。COのベットレンジに対し、BBのエクイティは11.32%しかないことがわかる。

画像9

 また、私たちのベットレンジにブラフがないと仮定したとき、BBのハンドが持つエクイティを以下に示す。私たちのバリューハンドを脅かすほどのエクイティが残されているハンドはほとんどないことがわかる。

画像10

 このようなドライボードでは、BBのコールレンジは変化しにくい。BBのハンドレンジのうちQJo、65sなどのハンドは、後の展開でのプレイが非常に難しくなるため、COベッドサイズに関わらずフォールドすることになる。

画像11

ルール 4: ウェットでダイナミックなボードではやや大きめのベッドサイズにする(55-80%ポットサイズ)

 自分のベットレンジが後の展開で不利になりやすい場合は、ベッドサイズを大きくすべきだ。これには明確な3つの理由がある。

①強いハンドができたときにポットを大きくすることができる。

②強いハンドだったはずのハンドが、ターンやリバーで単なるブラフキャッチャーへと価値が落ちてしまう可能性が高い。その前に、バリューを最大限に活かすことができる。

 例えば、自分が9♣ 9♦を持っているとき、ボードがT♥ 9♥ 5♠ 4♠ であれば、セットが完成し有利な状況ではある。しかし、リバーで出るカードの半分は不利なカードだ。

③フォールドエクイティが大きくなるため、よりブラフが効果的になる。

画像12

 以下に示す例は、Jhon C.がオンラインキャッシュでプレイしたものを、Dougがハンド分析したものだ。

【Preflop: BTNでA♣ A♥ が配られた】UTGの3bb オープンレイズに対し、MPがコール。BTNから11bbにレイズしたところ、UTG、MPの両方がコールした。

【Flop: 2♠ 5♥ 3♠(Pot 34.5bb)】BTNの12bb Cベットに対し、UTGとMPの両方がコールした。

【Turn: 8♣(Pot 70.5bb)】BTNが22.32bbのCベット。UTGはフォールドし、MPだけがコールした。

【River: 6♥(115.14bb)】MPがチェック。ここで、BTNはどのようなアクションを取るべきだろうか?

《Dougによるハンド分析》

 このようばボードで、SPRが小さくなっている状況では、33%ポット以下のベットサイズはあまりに小さすぎる。ローボードではあるが、決してスタティックではない。MPのハンドレンジにはフラッシュ、バックドアが多く含まれているからだ。

 このフロップでベッドサイズを大きくする理由は、主にスタックの深さにある。

 BTNの22bb (65%ポットサイズ) のベットに対し、一人がコールするとしよう。ターンのポットは78.5bbとなり、BTNに残されたスタックは67bbとなる。スタックとポットとの比 (SPR) から考えて、このプランだとターンでのオールインが効果的に機能する(ルーム 5 参照)。

 ターンでオールインすることを見越して、フロップでベットサイズを調整しなくてはならない。相手にドローを引くオッズを与えず、フォールドエクイティを獲得することができる。

画像13

ルール 5: スタック-ポット比 (SPR) を考えてベットサイズを調整する

 SPRはベットサイズを考える上で非常に重要な要素だ。今のベットサイズによって、後の展開でポットがいくらになるのか、バリューとブラフをどのように扱うのかを考えておかなくてはならない。

 フロップやターンで大きくベットしすぎて、リバーでは小さい額のスタックしか残っていないプレイヤーがたくさんいる。このような少額のベットではリバーブラフが効果的でなくなり、フォールドエクイティが獲得できなくなってしまう。

画像14

 下の例は、Upswing PokerメンバーのBogdan E.が実際にプレイしたものだ。

 ライブトーナメントゲーム、ブラインド 150/300、9人テーブル、エフェクティブスタック 21,000点(70bb)

 【Preflop: BTNでQ♥Q♦が配られた】UTG、UTG+1、LJのリンプインに対し、BTNから1,200点(4bb)にレイズした。これにBB、UTG+1、LJの3人がコールした。

 【Flop: 3♠ 6♣ 9♥ (Pot 5,250点, 17.5bb)】BTNから3,000点 (10bb)のCベットをすると、UTG+1のみがコールした。

 【Turn: J♦ (Pot 11,250点, 37.5bb) 】BTNからの7,000点(23.3bb)のCベットに対し、UTG+1が15,000点(50bb)へチェックレイズした。BTNは16,800点(56bb)のオールインを返し、UTGがコールして66をショーした。

《Dougによるハンド分析》

 まず、プリフロップでのベットサイズが小さいと思う。ここでは1,800~2,000点(5~6.7bb)くらいが良いだろう。すでにリンパーが3人いる状況なので、他のプレイヤーにコールオッズを与えないようにしたい。

 また、大きくベットしておくことは、特にQQというハンドに関しても非常に重要だ。ランクの高いポケットペアは、SPRが低く、参加人数が少ないポットの方がより効果を発揮するからだ。

画像19

 もし、プリフロップのレイズ額を1,800点(5bb)とし、同じメンバーにコールされた場合、フロップは7,650点(25.5bb)、自分のスタックは19,200点(64bb)となる。

 SPRから考えると、ここでのベットサイズを65%ポットサイズの5,000点(16.7bb)にしておくと、ターンで効果的なオールインをすることができる。1人がコールした場合のポット 17,650点(58.8bb)に対し、14,200点(47.3bb)をオールインすることになる(80%ポットサイズ)。

 この方法により、バリューハンドの価値を最大限に引き出すことができる、同時にブラフによるフォールドエクイティを獲得する余地が生まれる。

 Bogdanが実際にプレイしたベットサイズでは、リバーで妙なことになってしまっている。ターンで相手がチェックレイズしなかったら、リバーではポットの50%以下しかスタックが残されておらず、トリプルバレルが効果的でなかっただろう。

画像15

ルール 6: ナッツアドバンテージがあるときはポットオーバーベットを活用する

 ナッツ級の強いハンドを自分しか持っていないような状況では、ポットオーバーベットが効果的だ。

 これは自分のハンドレンジが強いハンドと弱いハンドに両極化(ポラライズ)されている必要がある。これにより、バリューハンドの価値を最大化し、同時にブラフによるフォールドエクイティを最大化することもできる。

 ポットオーバーベットが最も効果的になる場面は、相手がコールできる強いハンドの組み合わせをブロックしているときだ。良い例がナッツフラッシュをブロックしている状況で、 Q♦ 8♦ 2♣ 6♦ 3♠のようなボードで、自分がA♦K♠を持っているときがそうだ。

画像16

 下の例は、Doug自身がプレイしたものだ。

 ヘッズアップ、100/200点、エフェクティブスタック 59,416点(297bb)

【Preflop: BBで4♦2♦が配られた】BTNの700点(3.5bb)オープンレイズに対し、BBでコールした。

【Flop: 5♠ A♥ Q♦ (1,400点, 7bb)】BTNが980点(4.9bb)のCベットをして、BBがコールした。

【Turn: 3♣ (3,360点, 16.8bb)】互いにチェックした。

【River: 7♦ (3,360点, 16.8bb)】BTNの1,500点(7.5bb)のベットに対し、BBが10,800点(54bb)にレイズした。BTNはコールし、A♠ 2♥をショーした。

《Doug自身によるハンド分析》

 ターンでBTNがチェックした時点で、ある程度の相手のハンドレンジが想定される。ターンではナッツストレートとなる42は持っていないだろうし、リバーでナッツストレートになる64も、ターンでセミブラフをしているだろうから、持っている可能性は低いと考えた。

 プリフロップレンジからはセットやツーペアの可能性もあるが、このようなプレイラインにはならないだろう。

 よって、リバーでBTNが強いハンドを持っている可能性が低かったため、オーバーベット戦略を活用することができた。リバーでポットオーバーのチェックレイズを仕掛けて、バリューハンドの利益を最大化できたのだ。

 ここでチェックレイズを選択したのは、相手からブラフベットを引き出せる可能性があり、またこちらのブラフキャッチを相手が試みた際にバリューを最大化できるからだ(今回の相手のように)。

 ここでは、実際にチェックレイズレンジにブラフを混合してバランスを取る必要がある。54などは良いブラフハンドで、これは相手のセット(55)、ツーペア(A5, Q5, 53)、ストレート(42, 64)をブロックしている。

 ハンドレンジを両極化(ポラライズ)しているため、チェックレイズのベットサイズは常に大きくしなくてはならない。少なくともポットの2倍以上が良いだろう。

画像17

ルール 7: ターンCベットをするなら、少なくともポットの66%以上にする

 ターンで常に意識すべきことは、ハンドレンジの両極化(ポラライズ)だ。このときのベットレンジは、リバーでバリューベットできる強いハンドと、リバーでベストハンドとなりうるセミブラフにすると良いだろう。

 中程度の強さのハンドは、チェックするのが良い。なぜなら、リバーカードによってはバリューハンドとして扱うこともでき、そのままショーダウンで勝てるかもしれない。また、相手がベットしてきてもブラフキャッチに利用することもできる。

 このように、ハンド単体だけではなく、戦略全体としての期待値(EV)を高めるように意識すべきだ。

 ターンでベットするなら、そのレンジは両極化(ポラライズ)すべきであり、ベットサイズは大きくなりブラフ頻度も高くなる。ほとんどの場合で、ターンで66%ポットサイズ以下のベットをすると、戦略全体のEVは下がってしまう。

画像18

ルール 8: 3ベットポットでは25-40%ポットサイズのCベットをする

 これはルール5と深い関係がある。3ベットポットではSPRが小さくなるため、フロップでCベットサイズを小さくしても、リバーでのオールインはポットサイズ以下になりやすい。この小さなベットサイズはGTO戦略の観点からも、ポジションに関わらず好まれるものだ。

 ベットサイズが小さくても、3ベットポットのハンドレンジは相手に十分な圧力をかけることができる。よければ、「なぜ3ベットした後はCベットをすべきなのか?」という記事も参照してほしい。

 これらの8つのルールを心にとめて、プレイしてみてほしい。理解できたら、ベットサイズのクイズにも挑戦してみよう!

============

 翻訳は以上です。

 ちょっと長かったですが、とても勉強になりました。よくあるシチュエーションが、活用しやすい形で具体的に解説されていましたね。

 この記事で解説されていたことでも、納得できないものがあったら自分自身でよく考えてみることが大切だと思います。

 ベットサイズについてはいろんな方が解説されています。これ以外に参考になるものがあれば、ぜひ教えてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?