思考力問題が解けない理由(4)

思考力を強化する方法として、私が指導において実践して有効だと感じるのは、完成された解法をそのまま教えるのではなく、受験生本人の解法を完結させるということです。

未経験の問題に対して、受験生の解法は遠回りで非効率的になってしまうことも多いのですが、その全体を修正するのではなく、解法プロセスの中で解けない原因となっている箇所を指摘・修正するだけに留めて、基本的には最後まで自力で解いてもらいます。

自習においても、問題を解けない(または答えが合わない)場合に、解説を読んでそのまま理解するのではなく、解説を読んだ上で自分の解法プロセスの問題点(間違っていた箇所)を探して修正し、自分なりの解法を完結させるという感じになります。

ただ、受験生と指導者の双方にとって、これとは逆の方法(完成された解法を教えて理解・定着させる)の方が手っ取り早く、短期間で成果が出やすいものです。
特に大手塾の成績優秀者(サピックスα上位生など)は後者の取り組み方をする傾向がありますが、結果的に「好成績で思考力の弱い受験生」が多くなっているように感じます。

実は私も初期の頃は「完成された解法を教え込む」指導を行っていましたが、手っ取り早く成果が出る(偏差値10~15上昇など)ケースが多く、その指導法に疑問を持つことはありませんでした。
ただ、当時は難関校入試で厳しい結果が続き、御三家以上の学校には一人も合格者を出すことができませんでした。

効率的な取り組み方(完成された解法をインプットしていく)をしている受験生は、経験のある問題に対しては教わった解法やテクニックで対応できるものの、難関校で多く出題される思考力問題には苦戦する傾向があります。

私が行っているスポット面談でも、そのような状況に陥っている方からご相談をいただく機会が多くなっています。
実際、個別指導や動画サービス等で効率的な取り組み方を行い、通常の塾テストでは偏差値65以上をとっているものの、志望校の過去問が解けなかったり、学校別模試で偏差値40前後になるといったケースが多々あります。

逆に、難関校入試で出題される思考力問題を解いてもらうと、塾テストで偏差値50台でも思考力の強い受験生が、偏差値70台で思考力の弱い受験生を上回ることも普通にあります。

「自分の解法を完結させる」という取り組みは、長く続けるほど思考力強化に効果的ですが、数ヶ月程度でも一定の成果は期待できます。
特に思考力不足がネックになっている場合は、改善策として試す価値はあるかと思います。




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内容紹介(目次)
https://note.com/kumano_takaya/n/n0fabcc15c344


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