ロック御三家ってなんやねん。

ロック御三家のことを少し書きましょう。あくまでも私見ですが。

2020/5/5のオンライン配信イベント「昭和ポップストーク」でサザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」について語っていたとき”ロック御三家”という単語を出したところ、「ロック御三家」って何ですか、というギャラリーからの質問がZoomのチャットに飛んできていた。わたしは喋りながら「ググれ(要旨)」とざっくり打ち返したが(冷たくてすみません)、意外とロック御三家って知られてないと思ったものだ。

確かに時代の仇花的な部分はあるし、「ロック御三家」と当時はあまり言われていなかったように思う。時代が少し進んでから、そのように括られたものだ。
1976年7月デビューのChar、1977年10月デビューの原田真二、1977年11月デビューの世良公則&ツイスト(後のツイスト)を総括して一部で「ロック御三家」と呼ばれている。ロックとはいえ、当時のお茶の間に受け入れられる親しみやすいサウンドとルックスだった。かぐや姫、よしだたくろうといったフォークブームから数年、ダウンタウンブギウギバンドが「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」でスマッシュヒットを生んでからもさほど時間が経っていない時期。

ちなみに御三家(ごさんけ)とはWikipediaによると、
【有力・有名・人気】な3者を称する表現。尾張徳川家・紀州徳川家・水戸徳川家が「御三家」と称され、大名の中でも特別扱いされたことに因む表現、とある。
それまでにも男性歌手については「御三家(橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦)」「新御三家(野口五郎、郷ひろみ、西城秀樹)」と称されてきた。

この流れなのか、「ロック御三家」というのは1978年6月に週刊誌「週刊朝日」で音楽評論家の富澤一誠氏が使った言葉のようだ。

1978年4月に中学に入学した私が知らなくても当然だ。

テレビ・ラジオで彼らの音楽がパワープレイされたのは1977年10月頃からだったように記憶している。わたしが当時聴いていた大阪のラジオ、ヤンタン、ヤンリクでも聴いたし、1978年1月に放映開始されたTBS「ザ・ベストテン」にも彼らは出演していた。楽曲もルックスもカッコ良かったから人気が出ないほうが可笑しい。

わたしが最初にはまったのは原田真二さん。

デビュー曲の「てぃーんず・ぶるーす」をラジオで聴いて、浮遊感あるメロディと甘い声に惹かれた。家が厳しくテレビを見せてもらえなかったので、新御三家(郷ひろみ・西城秀樹・野口五郎)について私はそれほど詳しく知らなかったが、原田真二さんの歌をFM大阪から土曜の昼過ぎに流れる「コーセー歌謡ベストテン」で聴いたときにああ、いいなあと思ったのだ。
原田真二さんは1977年10月に「てぃーんず・ぶるーす」、11月に「キャンディ」、12月に「シャドー・ボクサー」と3か月連続でシングルを発売し、同時にベストテン入りした。デビューしたての新人がベストテンのうち3曲を独占するんだからその凄さを想像してみてほしい。

楽曲という意味では、松本隆さんのリリックを得て、サウンド面ではビートルズをはじめとした洋楽の影響をふんだんに取り入れた本人作曲のポップな作品をリリースしていた原田真二さんがこの3組ではいちばん恵まれていたと思う。ちなみにデビュー曲の「てぃーんず・ぶるーす」のアレンジ・クレジットは鈴木茂さん。作詞の松本隆さんもだが、はっぴいえんどのメンバーの手によるものだ。個人的には1977年12月発売の「シャドー・ボクサー」(編曲:後藤次利さん)がいちばん好きな作品。

CharさんはNHKのレッツゴーヤングで歌謡曲ライクな「気絶するほど悩ましい」や「逆光線」「闘牛士」を観てカッコイイ!と思ったものだ。長髪、長身、巧みにエレキギターを操る姿、甘い声に甘いルックス。阿久悠さんの歌詞の作品で、歌ってる意味はあんまりよくわからなかったが、小学6年の女子をノックアウトするにはじゅうぶんすぎた。当時ベイ・シティ・ローラーズやロゼッタ・ストーン等が中高生のお姉さんたちには人気だったが、わたしはタータンチェックの彼らには興味がなかったので、たまに日曜日の18時に色気を振りまくCharさんのほうがずっと魅力的だった。ラジオで「スモーキー」のイントロを聴いてそのスリリングで魅惑的なイントロに気づくのはもう少し後のこと。

世良公則さんはなんといっても迫力ある「あんたのバラード」の歌唱と股開きにつきる。もしかするとルックスという意味では男前ということもあり一番若い女子受けしたかもしれない。ただ、「あんたのバラード」の土着感やブルージィなヴォーカルは若い女子のみならず幅広い年代に支持されたように記憶している。
わたしが好感を持ったのは2曲目のキャッチーでアップテンポなロックンロール「宿無し」で魅せるセクシーなヴォーカルや、3曲目のマイナー×ハードで同時期のローリング・ストーンズ「Miss You」を思わせる「銃爪(ひきがね)」(銃爪はおとなになってから聴いてその詞の生々しさにやや赤面した)。いま聴くとポプコン当時の「あんたのバラード」は歌唱も演奏も骨太な楽曲も新鮮で素晴らしい。どうでもいいが山下達郎の「BOMBER」の初っ端のドラムは世良公則&ツイストの「銃爪」のドラムからヒントを得てないかい。たぶん「銃爪」にもヒントはあると思うのだけれど、わたしは探しきれなかった。

ともあれ、彼らと当時のテレビが作ったお茶の間にロックが踏み込むスペースに、ランニング×ジョギパンで青学のキャンパスあるいは新宿のライブハウスから土足であがりこんできたのが、1978年6月25日にデビューしたサザンオールスターズ。最初はコミックソングを思わせる作品でお茶の間をあっと言わせたが、その後聴かせる作品を多数輩出し、国民的ロックバンドとなって今日に至る。
また、原田真二さん、Charさん、世良公則さんも現役で音楽を届けてくださっている。

往時の作品はサブスクで聴けるし、YouTubeでも観れるので、興味がある方は探して観聴きしてくださいませ。そしてわたしがこれまで書いてきた文章を、「もっと素敵じゃないか!」と論破してくださいませ。


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