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3)FD=フロアディレクターのやる事は、ざっくり言えば2つだけ

これまで
「全ては出演者の為に」
「出演者ファースト」


「FDは空気感の演出家」
など、FDとしての心構えや考え方など精神論的な事ばかり書いて来ました。

それでは具体的に
「FDって何をするの?」
という事についての私の考えを今回は書いていきます。

細かい事を挙げ始めればキリがありませんが、ざっくり言えば
「カンペを書いて、出す」
「番組全体の尺(時間)管理をする」

という2つだけ。

まず「カンペを書いて、出す」

これは「全ては出演者の為に」という考えに繋がるんですが、「出演者の為」にFDが考えるべき事の一つが
「出演者を格好良く見せる為にどうすればいいか?」
だと私は思っています。

長く難しいセリフを手元の台本を見る事なくスラスラと流暢に間違う事なく話す、こんな出演者は格好いいと思いませんか?

ここで必要になるのが
「カンペを書いて、出す」
という作業なんです。

ただ「カンペを書いて、出す」という作業が必要な理由は、単に出演者が原稿を手に持たずにスラスラと長セリフを喋って、それを見た視聴者が
「あの人、あんなに長い文章覚えて賢いな〜」
と思ってもらう、という事だけではありません。

出演者が番組の展開を忘れた時の為に、もしくは出演者が次の展開の事ばかり気にし過ぎて面白おかしく遊びきれない、という事が無いように、キチンと次の展開に持って行けるよう指示を出す。

また台本、構成案に書かれた想定とは違う展開になったり、突発的なトラブルが発生した場合に、強引にではなく自然な流れに見せながらキチンと番組として不細工に見えないように収束させる。

こういう場合、VTR取材だとカメラを止めて出演者に近づき、話をして立て直せばいいのですが、スタジオ収録で、しかも生放送の場合はそうもいきません。

そんな時に、制作者の意図を出演者に伝える唯一の手段が「カンペ」なんです。
スタジオ内の総責任者、現場監督はFDなのですから(番組の総責任者はディレクター=Dですが副調整室=サブと呼ばれる別室にいる為に出演者に直接コンタクトを取る事は出来ません)「カンペを書いて、出す」という作業が非常に大事になってくるのです。

何があっても焦らず、シレッと番組を進行出来る出演者は“格好いい”じゃないですか。

その為のフォローを、カンペを使ってする。
ただそれだけです。

そして
「番組全体の尺(時間)管理をする」

当然、サブにいるDが番組全体の尺を管理する責任を負っているのですが、スタジオにいないDは出演者の生の息づかいや雰囲気、その場の空気感を感じる事が出来ず、どうしても尺優先の指示になりがちになります(そういう事が多いと感じます)。

例えば…
ある番組の、あるコーナーのスタジオ尺が想定では3分だったとします。
その場合、3分経過した頃にDから
「そろそろ締めて!」
という指示が当然の様に出ます。

しかしスタジオ内の空気感としては、異様に盛り上がってまだまだ話足りない、もう少しツッコませて!となっていた場合。

それでも強引に締める指示を出してそのコーナーを締めてしまうと、尺としては想定を守った事になりますが、結果その後は出演者がシラけてしまい面白くなくなってしまう事が往々にしてあるんです。

そんな時にどうするか?

私ならDの指示に反して出演者にはトークを続ける指示を(何事もなかった様に)出しつつ、サブにいるDに対しては
「すんません!締めるように指示出したんですが盛り上がって次にいっちゃいました。このトーク落ち着いたらまとめますね〜。」
なんて事をしれっと伝えたりする事があります。

ただし、こんな事するのは押した分の尺を先のコーナーで絶対に巻く=尺を短くする自信がある時だけですけどね。

また逆に、想定3分に対し出演者の反応が今イチな場合。
2分経ったくらいでスタジオの空気としては
「もういいやろ?話す事無いで」
となっているのにサブの指示は
「予定3分なんやから、もうちょっと繋いで!」
となる事があります。

それでも強引に尺を伸ばす事を指示しても、気持ちの入らないトークが面白い筈も無く、また出演者のテンションを下げてしまう事にもなります。

こういう時、具体的に
「こういうテーマでトークして!」
というアイデアがあれば、それをカンペに書いて指示を出す(お願いする)んですが、そういうアイデアが浮かばなかった場合、Dの指示なんか気にせずに巻きでそのコーナーを終える場合もあります。

ま、これも先のコーナーで尺の調整が出来ると自信がある時だけですが。

こんな時、本来なら
「繋いで!」
って言うてるDから
「これこれこういうテーマでトーク出来るやん!だから、そのトークで繋いで!」
と具体的に指示があるべきだと思うんですが、はっきり言ってそういう事を言ってくれるDは圧倒的に少ないというのが私の経験から言える事です(苦笑)。

話を戻してー
この様に出演者の空気感、雰囲気を悪くする事なく、各コーナーのスタジオが面白く盛り上がりながら番組全体として内容が長くなって尺が溢れて破綻する事なく、予定通りの尺内(1時間番組なら1時間以内)に納める。

また逆に尺が余ってしまいスタジオが「どうしよう?」という事が起きる前に様々な手を打ち(この時、活躍するのがカンペになります)出演者、D両方のメンツを立てながら番組を成立させていく、という事もFDの重要な仕事なのです。

「カンペを書いて、出す」
「番組全体の尺(時間)管理をする」

この2つが出来ればFDとしては満点だと思っています。


追伸
FDについて知りたい事、聞いてみたい事などあれば、どんどん質問して下さい。
マニアックな事から覗き見的な事まで、FDに関する事であれば出来る限り、お答えしていきます。

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