無題

記憶の中で繰り返し再生されるのは、母親のあなたが僅か6歳くらいの私を、家に置き去りにしてどこかに行ってしまう光景。「もう帰ってこないから」という言葉と、カギを閉められた玄関の音。

そういう酷い虐待をしただろう、と問い詰めても、あなたは「ただの冗談」と言った。

だから、虐待だと思っている私が異常なのだ。

何度そう言い聞かせても、「ただの冗談」なのに、母親に棄てられて、生きていく価値がないという確信は変わらない。

小学校に入学するまでに、何度も、押さえつけられて、身体にロウソクを垂らされたのは、「ストーブに触った危ないから、それを教えるための躾だった」と説明された。

何度も何度も何度も、「躾」を受けなければならないほど、物覚えが悪かったのだから、熱くて怖い思いをしたのは、自分が愚かだったので仕方が無い。

多分、何度も何度も何度も何度も「布団蒸し」にされて、息ができなくなって「殺される」と思ったのも、私が何かの言いつけを守らなかったからだろう。

だから、子どもがとっくに成人式を終えた今でも、母親が反対する女性と結婚したのも、私が間違っていたのだろう。その証拠に、私はその女性に、気づかない間に、モラハラを何度も何度も何度も繰り返していたらしい。直接、その女性に指摘されるまで全く気がつかなかった。そういう愚かさが、いまだに治っていない。

三つ子の魂百まで、とは言ったものだ。

独身時代に、「自分が権力を持ったら、絶対に誰かを傷つけるから、早々に死ぬべきだ」と気づいていた。

とりあえず大学を卒業したら、誰も知らない国へ行って、自分の人生を終わりにしようと計画していた。

その計画を曲げて、この年まで生きながらえてしまったことは、ただただ申し訳ないと、謝罪するだけでは全く足りないのは分かっている。

母親の言うとおり、私が生きていてはいけないと、やっと納得できた。

これまでの沢山の人に迷惑を掛けたことだろう。

本当にごめんなさい。

もうしません。ごめんなさい。許してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?