熊谷・街・妄想ワークショップ2021。 3日目 2/2
ゲストレクチャー 三浦詩乃さん
今回はゲストにパブリックスペースやストリートの研究で有名な東京大学 大学院新領域創成科学研究科特任助教の三浦 詩乃さんにレクチャーをしていただきました。全てではありませんが、内容を一部シェアさせていただきます。
三浦さんには道路を活用をした実験の場づくりにおいて、どのような知識や考え方が必要なのか、様々な事例を含めて情報を提供していただきましたが、参加者も目から鱗な様子で真剣に聞き入っていました。
まず、ストリートを良くしていくには、多様な人が主役となり、その主役である人が沿道や街を盛り上げると考えられていて、2000年代以前は都市計画を考える分野と、それをつなぐ「交通」の分野で分かれていたが、以降はその中間で、経路自体を楽しくして居場所として考える「プレイスメイキング」という考え方が進んでいるそうです。
今回の星川についても、道の上が人々の集まることのできる空間になればというところがあるので、参加者もイメージしやすかったのではないかと思います。
PARK(ing) DAY JAPAN
2005年にサンフランシスコで始まった路上駐車スペースを小さな公園に変えるというパブリックスペースムーブメント。
また、公園的な空間だけでなく、シェアサイクルやフードカート、パークレットなど色々な用途で空間を開いていくのが世界的な流れとなっているそうです。星川周辺にも多くの駐車スペースがありますが、活用できるかできないかで大きな違いになりそうです。
プレイスメイキングの事例
かまがわ河床桜祭り
栃木県宇都宮市の釜川を活用した事例。条件的にも星川と良く似ていて参考になりそうです。畳があるせいかお年寄りも近寄りやすくなっています。
錦二丁目ストリートウッドデッキ
名古屋市の錦二丁目で実施されたプロジェクト。かつて繊維工場があった場所で道幅が狭くて危なかった歩道をウッドデッキで広げている。本来であれば車道で実施したかったそうですが、現在は一時的に下記のように置くことで、まずは座ってもらって、車の速度がどうなったか等のデータ収集をしているそうです。
歩行者誘導照明実験 横浜国大
歩行者に対してプロジェクションマッピングでアプローチした実験例。星川夜市も開催していますし、星川の夜の時間帯はこのような方法でアプローチするのも面白そうです。
沿道を含めて考える
道の上だけの活用を考えていても、やはり限界が出てきてしまうので、ニューヨーク市のCenter for Active Designでは上記の図の4面を魅力的に、特にBuilding Wall(赤い部分)も含めて検討していくことが必要と考えられているそうです。
横浜・日本大通り
下記は沿道1階にあるコンビニカフェが営業しているかどうかでアクティビティの量を比較したデータです。コンビニカフェが開いているだけで量の違いが一目瞭然です。そして人の密度が変わるだけで道の雰囲気も変わってきます。
コモンズ協定
コモンズ協定は、都市再生特別措置法第109条の2の規定に基づく、都市機能や居宅を誘導すべき区域(立地適正化計画における居住誘導区域及び都市機能誘導区域)において、空き家や空き地を活用しての交流広場、コミュニティ施設、防犯灯などの地域コミュニティを個人や地権者、まちづくり団体等が協同で整備・管理することを定める協定制度です。
下記は駐車場に関してのモデルイメージです。細分化されて非効率な状態から共同化し、通り沿いに店舗や広場を配置することで賑わいを創出することができるイメージを表したものです。
これらの事例は歩く人が楽しくなるような空間という視点の話でしたが、「実験する人が楽しむこと」プラス、「その効果を考えること」が大切で、その結果、「次に興味を持ってくれる人が広がっていく」という三浦さんの言葉が印象的でした。
また、商店街にもやはり車で買い物に来るイメージがあるので、どうしても駐車場がないと不安になってしまいますが、実際、1週間や1ヶ月単位で考えると「公共交通機関」や「徒歩」で買い物にくる方の方が数字的に表れているそうです。
Healthy Streets for London「ロンドンのための健康なストリート」
通常は円滑に安全に交通を促すことをメインに考えている交通局が、保険衛生の観点から設けた指標。街や通りが健康に発展していくために、以下の指標を満たすことが大切で、ロンドンでは開発が行われる際には、必ずこの指標をもとにディスカッションが行われているそうです。また、既存のストリートにおいても、この指標をどれほど満たせているのかを指標に改善を行っているとのことです。
シェアードスペースの事例
シェアードスペースとは...
シェアドスペースは、限られた道路幅員の中で、歩道と車道の分離構造を設けず、主に視覚的な 操作によって、自動車速度を抑制することで、歩行者と自動車が共存できる環境を創出するためのパターンである。
オランダ・デルフト
世界で一番初めにできたシェアードスペース。
写真の比較
左側
中央部分にある境界線が段差になっていて、そこで車の速度が落ちるようになっている。また住民が生活の庭として使用することができ、プランターに植物を育てることができるようになっている。
右側
パーツ自体は左側と同じものではあるが、全く雰囲気が違っていて、車のスピード自体の減速傾向にはない。
何が違うのかというと、今回のテーマである街に対する「滲み出し」の部分が大きいそうです。
上記の2枚の写真も同じようにベンチが配置されて、くつろげるようなスペースにはなっていますが、奥まっているのかどうかの違いで大きな違いを生むそうです。これも利用する人の生活に対しての「滲み出し」の部分を考えられているかどうかの違いになります。
あらゆる方向から多様なアクセス
色々な方向から人が入ることにより、人自体が車を遠慮させることができるので、このように仕掛けも効果的と考えられています。また色々な方向から人が来ることにより楽しい雰囲気を醸し出すこともできるそうです。
ロンドン・セブンダイヤルズ
日本・下北沢
オーストリア・ウィーン
2車線道路だったストリートをなるべくフラットにして、車と人が同じ空間を利用することで、車が人に気を遣うようになり、共存できるようになった事例でです。
BEFORE
AFTER
事例・実験編
減速するツール
日本では、国土交通省が実験用に減速するツールの貸し出しを行っているそうです。ぜひ星川でも利用してみたいですね。
海外では実験として、道路に植物を置いたり、障害物になるようなしめ縄のようなものを設置したりなどの事例もあります。また、そのような設置が困難な場合はヨガなどのアクティビティを行い、楽しみながら実験が行われているそうです。
日本・長門湯本
1年目
2年目
ツールから公共空間を考える
最後に公共空間を考える上で、ツールにも視点をおくと面白いという説明がありました。以下の本で紹介されているそうです。こちらもぜひチェックしてみてください。
各班をシャッフルする時間を
レクチャー終了後、各班のグループワークに行く前に、それぞれの班をシャッフルし、他の班の状況確認、意見交換を行いました。自分の班以外の進捗状況や考え方を共有することで各グループのディスカッション活性化を図りました。
再度各班に戻ってブレスト開始
どの班も他の班の進捗状況を確認できたことや、違う班のコーディネーターとの意見交換で得た情報を共有している様子が伺えたのが印象的でした。
また、序盤で提示したゴールやお願いである、実現の具体性を持たせること、周辺との関係性やターゲットを考えることを積極的に話し合えていた印象です。
発表開始
各班での話し合いも終わり、第3回の発表に移ります。最初に提示した具体性や周辺との関係性やターゲットがどのくらい反映されているか楽しみなところです。
チーム森・植松 親水広場 「アートな水辺の散歩道」
まずは親水広場班。今回の話し合いでは親水広場を考える上で「人を呼び寄せるコンテンツ」「人が滞留するコンテンツ」の2つの軸を持って進めてきたとのことです。
まず、「人を呼び寄せるコンテンツ」としては、親水広場の両サイドの壁を綺麗にして、そこにメッセージやエールを送るボードを設置。小学校の先生方から児童・卒業生に向けてメッセージを書いて、OBや近隣の方に見てもらうというもの。そして「人が滞留するコンテンツ」としては、水辺が殺風景なので、色や光を用いて綺麗な空間にしていくことをゴールとして設定しました。
チーム八木 シェアード「スイートカマクラ」
続いてシェアード班。まず、前回掲げたテーマの「スイートカマクラ」ですが、カマクラの形を作っていくのが難しいという判断で、その思いを残しつつ別の視点で、できることを考えていく作業となりました。
そこで今回出たアイディアとしては2つです。1つ目は川沿いに引っ掛けるテーブルを設置するというもの。理由としては、川沿いの手すりが子どもたちが歩くには危険であるという点が挙げられました。単管を組むことで手すりを通常の高さを保ち、そこにテーブルを引っ掛けることで滞在できる空間づくりを目指すことに。しかし空間を作っても日常で使う理由がないと意味を持ちません。テーブル設置と合わせて「水辺に照明を当てる」「熊谷染の反物を展示する」など、トータルしていわゆる映えると言われるような空間になるようにアイディア出しを行いました。次回はここの部分をより具体的に詰めていく作業になりそうです。
2つ目は、シェアードストリート班ということで、実験的に歩道から車道にはみ出すスペースを作るというものです。「人工芝を敷いて裸足で過ごす」「こたつを設置してみる」などアイディアとしてはいくつかありそうです。また、時間帯によっても工夫できるようにしたいと発表がありました。
チーム白田・真島 東屋 「本気になったら星川」
最後の発表は東屋班。
まずは東屋をどう使ってもらうかを全員で話し合う中で、ワークショップ・ヨガ・映画・音楽などたくさんのアイディアが出てきました。結果としてやはり利用してくれる人ができるようなレンタルスペースとしての役割がベストではあるが、それだけでは使う人が現れないので、自分たちでまずはイベント企画等しながら継続していく方向性を探るところに行きつきました。
その結果、最終的には大きく分けて2つの目標設定を立てることに。
1つ目はハード面。東屋の枠組みをもう少しきれいにすることから始め、ライトアップしたり客席のようなスペースをDIYで設置します。
2つ目は整備した東屋を日常的に使ってもらう為のテーマとして「食のプラットフォーム」としての活用が挙げられました。具体的には...
シェアカフェ含む近隣の飲食店で注文したものを東屋で食べることができる
自分たちで開発したノンアルコールビールを飲める場所にする
星川ランチと称したメニューをWEBで閲覧できるようにして、東屋で注文
朝市で買った地元野菜を七輪で焼きながら食べることができる などなど
とにかく星川でご飯を食べるカルチャー・ついつい飲みに来たくなるような星川カルチャーを作っていきたい!という考えでまとまりました。
どの班も回を追うごとに具体性が増していき、方向性が定まってきましたので、次回どのような形で着地して、実際に実験に進んでいくのかがとても楽しみです。
講評
UR鈴木さん
段々と形が見えてきて、本当に自分自身が楽しみながら参加できいます。次回も今から楽しみにしています。
三浦さん
発表なので一番まとまった部分がでてきいると思いますが、それぞれの尖ったアイディアもあったと思うので、組み合わせたら全体的に面白い実験になりそうだなと思いました。
UR森さん
最初の目的にあったターゲットをはっきりさせるという部分において、どの班もそこに沿って発表されていて良かったと思いました。
最終回に向けて事務局から
今年度も全4回のワークショップになりますので次回が最終回になります。本来であれば次回で何かしらの形を実施していくはずでしたが、行政との兼ね合いもあり、次回で行動に移すのは難しい状況となりました。
その為、次回で完全にアイディアをまとめ、設計図を描くところまで進めておき、準備が整ったところで実施という形になりそうです。動き出すまでにタイムラグがあるせいで次回で完結というわけではありませんが、とりあえず次回がワークショップの最終回、各班の集大成に期待しています!
星川夜市を眺めて
ワークショップが行われた11/13(土)は久しぶりに星川夜市も行われました。8月から10月は中止となっていたので、今回は出店者も参加者もとても楽しそうに参加されている様子が印象的でした。次回も天候に恵まれますように願います。
前回のワークショップで作成した街頭のテーブルもとてもきれいでした!
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