【初心者】なぜ将棋で終盤力が重要なのか?可視化でわかったシンプルな理由!
書いている人
熊田ゴウ(VTuber)
将棋のつよさ:アマチュア四段程度
https://twitter.com/kumada_goh
本稿の要約
本記事では、初心者さんに終盤の重要性を理解してもらうため、最終盤の実際の局面図をグラフによって可視化しました。初心者さんにとっては序盤のミスが印象に残りやすい一方で、実際には終盤の指し手が勝敗を大きく左右するということを視覚的に示し、終盤力の重要性を述べています。また、初心者さんが終盤力を鍛えるための効果的なトレーニング方法として、簡単な詰将棋から取り組むことを提案しています。最後に実戦的な詰将棋の書籍やアプリも紹介し、すぐに活用できる内容を目指しました。
1.背景
筆者の経験上、初心者さんが将棋で負けた際には「序盤が悪かったから負けた」と感じることが多いです。
なぜなら、序盤でのミスは目に見えやすく、記憶に残りやすいためです。
(おそらく、前後即因果の誤謬も関係しています。)
しかし、実際には終盤の一手一手が勝敗を大きく左右するケースが多くあります。
にも関わらず、終盤について可視化した研究は少なく、難易度と勝敗への影響度について初心者さんに実感してもらいにくいです。
2.目的
上記の背景から、本稿では以下の2点を目的に据えます。
実際の棋譜を元に、将棋の終盤戦がいかに難しく、かつ勝敗に直結するかを視覚的に示し、初心者さんの終盤への理解を促すこと。
終盤を鍛えるための手法を提案すること。
3.手法
3.1 可視化
今回の研究では、私の指した棋譜から局面を抽出し、その局面におけるすべての合法手(反則ではない手)の数を数え上げ、それぞれの手のソフト評価値を算出しました。
そして、算出した評価値元に、以下のカテゴリに当てはめてグラフを作成しました。
詰み(詰み)
勝勢(2000以上)
優勢(1000以上2000未満)
互角(-1000以上1000以下)
劣勢(-2000以上-1000未満)
敗勢(-2000未満)
詰みについては、詰ますことができれば完全に勝ちが確定する手になります。
「勝勢」はとても有利、「優勢」は有利、「劣勢、敗勢」はその反対と捉えてください。
3.2 ハードウェア、ソフトウェア
エンジンは「Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.5.0+20220507c.hash128」を利用し、60秒間の検討結果を元データとしました。
以下のスペックのマシンを利用しました。
RTX3060Ti/12th Gen Intel(R) Core(TM) i7-12700 2.10 GHz/RAM 16GB
4.分析と考察
4.1 局面図
ではまず、以下の局面図を御覧ください。
少し将棋をかじったことのある人なら、「▲7二龍で詰み」とわかる局面です。
自分の王様を見ても、金銀角に守られて安全そうに見えますね。
実際この局面は詰みの存在する局面なので、「最善を指せれば先手勝ち」と断言できる局面となっています。
4.2 局面図の可視化
では、次に以下のグラフを御覧ください。
上記のグラフは、先程の局面をグラフ化したものです。
当該局面における合法手(反則にならない、指せる手)の総数は143手あり、そのうち実際に詰ますことができるパターンは13通りでした。
評価値1000以上から詰みまで含めると、143手中25手の選択肢があります。
一方で、次の一手を指した段階で互角以下になる手は、なんと143手中118手存在します。
ここが将棋の終盤戦の恐ろしいところです……。
割合を計算すると以下のようになります。
118 / 143 ≒ 0.83
つまり、今回の局面での合法手の約8割が、圧倒的優勢から互角以下の状況にしてしまう悪手であると言えます。
このことから、初心者が終盤で適切な手を選ぶのがいかに難しいかがわかります。
もし、終盤のトレーニングを一切しない状態で終盤戦を指す場合、こうした低確率な運ゲーで勝たないといけないわけです。
4.3 終盤の難しさに関する研究例
ここで、上記の事柄を裏付けるような先行研究の例を紹介します。
こちらの記事では、レーティングごとに終盤のミスによって負けた試合の割合をプロットしています。
(データ取得元や母数などの情報が書かれていないので注意です)
当該記事によると、レート1000程度の級位者帯では、詰みの部分で間違えて負けた対局が3割程度あるそうです。
勝ってたはずなのに負ける対局が3割あるのは、あまりに辛い。将棋やめたくなる。
5.結論
上記の可視化によって、一見勝ちに見える局面でも簡単に負けになるという例を示すことができたと思います。
今回扱ったのは1局面だけですが、終盤ほど複雑性が増しやすい傾向については、有段者の方ほど頷いてくれるかと思います。
6.提案
では、初心者さんはどうすればよいのでしょうか。
筆者の立場としては、「一番簡単な詰将棋からやっていこう!」になります。
初心者さんの場合、お互いが良い手悪い手を指した結果、ある程度バランスの取れた終盤になることも多いです。
ただ、初心者目線で終盤の局面を見ると「いっぱい選択肢があってよくわからない」と感じます。これは仕方がありません。
一方で、「どうすれば王手になるか」は直感的にわかる人は多いと思います。
その感覚を足がかりに、「こうやって王手していけばいいのでは?」という詰将棋の発想で相手の王様を見ていくことが大事であると筆者は考えます。
もしそれで相手の王様が詰んでいたら、勝ちです!シンプルに勝ち!
なので、まずは詰んでるときに詰まして勝てるようにするのがおすすめです。
7.おすすめの書籍とアプリ
最後に、終盤の勝率を上げるための書籍とアプリを紹介します。
初段になるための将棋勉強法(浦野真彦先生)によると、初段に必要な詰将棋の力は5手詰だそうです。
ですので、初心者~級位者の方の場合、簡単な1~3手詰をやり込めばかなり力が付くと思います。
(手数が短くても難しいものがあるので、難しい場合は同じ手数の簡単なものをやるのがおすすめです)
【書籍編】
高橋道雄先生のシリーズ
高橋先生のこのシリーズは、かなり優しい実戦の形を扱っていて、とてもよいです。
1手詰で物足りなかったら3手詰の方に取り掛かってみるともっと力になると思います。
浦野真彦先生のシリーズ。ハンドブックシリーズ大好き!!
浦野先生の詰将棋はどれもシンプルで気持ちの良い問題なので、楽しく解くことができると思います。
高橋先生のシリーズより難しいので注意してください。
【アプリ編】
将棋ウォーズ(スマホ、ブラウザアプリ)
言わずと知れた将棋アプリ。日本将棋連盟公認!
こちらの課金コンテンツである棋神ラーニングが非常に優秀とのことです。(筆者はまだ使ったことがなく、具体的なことを言えません。。。)
将棋クエスト(スマホアプリ)
こちらの、詰めチャレモードが詰将棋のモードになります。無料!
難易度ごとにレーティングが定められているので、自分のレーティングに沿った問題が出題されます。
画面で駒を動かしたい人にもおすすめ。
これらの書籍とアプリで終盤を鍛えれば、確実に強くなれます。
なぜなら、今まで負けてた対局で勝てるようになるからです!
この記事が初心者さんにとって何かしらの助けになれば幸いです。
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