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「ポトフ 美食家と料理人」

トラン・アン・ユン監督(「青いパパイヤ香り」「ノルウェイの森」ect)の森や草原をとおりぬける風のような画風とおだやかな語り口が好き。

本作は2023年カンヌ映画祭で監督賞受賞し,主役はジュリエット・ビノシュ。しかも料理人の話というのだから絶対観たい!と思っていたところ,東京国際映画祭でアジア・プレミア。しかも男優さん,奥様で美術監督のイェン・ケーさんも登壇というので,胸はずませて東京まで遠征し,日本公開前にひと足先に鑑賞してきた。


あらすじ

物語は19世紀末のフランス郊外。
美食家男性(ブノア・マジメル)がレシピを編み出し,そのレシビに従って料理人(ビノシュ)が作り上げる珠玉の料理たち。美食家は何度も彼女に求愛するが「妻より,あなたの料理人の方が良い」と取り合わない。
ある時,さる皇太子を招くメニューに家庭料理『ポトフ』を思いつくだが...


冒頭15分の調理シーンに心揺さぶられる。
野菜畑から根菜を掘りおこす音,水洗いする音,野菜をきざむ音,肉を焼く音,煮込む鍋の音,ナイフとフォークの音,床をたたく靴底の音,
そして,中盤になってようやく気づいた。

え? 音楽はどこ

2023/10/24

ティーチ・イン


上映後のティーチ・インで監督に質問をぶつけた。

「音楽を使わずに、本作をつくった意図を教えてください。」

トラン・アン・ユン監督
―― 料理をつくる仕草や調理のサウンドはとても豊かな音楽性をもっています。ですから、そこに音楽はいらない、と思ったわけなんです。
そして、愛を語るシーンに音楽が流れない映画は今まであったでしょうか。そういう意味ではとてもレアな映画ともいえるでしょう。

続く観客からの質問に応えて...

監督のパートナーでもあり女優のトラン・ヌー・イェン・ケーさんは
―― たった25日しかコスチュームとアートディレクションの準備期間がありませんでした。現代ではなく19世紀の時代のものを集めるには,まったく時間がなかったため,色彩は料理に任せて,衣装や室内は色をおさえ美しいものにしました。

男優のブノア・マジメルさんは陽気にコメントを
—ー美食家は痩せた俳優でもいいんじゃない? 実はオファーいただいた時はもっと瘦せてたんですよ! しかし, 役になり切り食事をしたり実際に調理して友人にふるまったりしているうちに10Kgも太ってしまって(笑)。
イェン・ケーに何度もサイズを直してもらい大変でした。

映像には美味しそうな料理ばかり登場するが,物語の根底には,人生の秋を迎え,数十年もうまくいってるパートナーどおしの穏やかな日々を描きたかった, と。
トラン・アン・ユン監督とトラン・ヌー・イェン・ケーさんのようなお互いを支えあう美しい関係って,むずかしい。
もっと詳しいメッセージはこちら


私はこう、メッセージを受け取った。

料理は愛の表現であり、エロスであり、希望である。

12月15日 日本公開 
もう一回みる,きっと。

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