見出し画像

春江水暖~しゅんこうすいだん。

 春節前からずっと気にかけていた中国映画「春江水暖」。地方都市・富陽市の2017年の夏から2018年への四季を、おだやかな河の流れにそって映し出した佳作だ。

 観終わったあと、醍醐の桜や冬の京都を借景に四姉妹の移ろいを描いた「細雪」を思い出した。親子でもなく夫婦でもない、兄弟とは切れない縁に繋がれた不思議な関係なのだ。

 長兄と次兄が病院廊下で老母の介護について話し合う場面や、長兄が三男をいさめる場面、他にも四人でバスケットを興じる場面でも、兄弟の結びつきが心に染みた。ほとんど監督の知人や親せきがキャストらしいが、市井の人びとの自然な演技がいい。すべての登場人物が不器用で実直、みな正直過ぎるくらい真っすぐである。賭博に身をやつす三男ですら、ダウン症の息子を愛情込めて面倒を見ている。
 
 左から右へとすぅ――――とカメラが横に流れる10分超のロングショット。観ている側も、平泳ぎの彼と一緒に泳いでいるかのような錯覚させる。河に沿って歩いてる彼女はどこ?探しながら、思わず見惚れてしまう。美しい巻絵物語のようだ。瞬きせずにじぃ――――と見てほしい。

 そして実は「河」が最も雄弁な主役ともいえる。大事なところに必ず河が有る。人びとの暮らしと河とを対比させ、変わらないようで実は変貌してゆきつつある故郷を紡いでいる。河で生計をたて、河で老母の帰還を祈り、河で結婚式をあげ、一家墓参の一部始終を河が見守っているのだった。

春江水暖


春江水暖
中国 2019年
監督:顧暁剛 (シャオは日ヘン)グーシャオガン

本編は一巻の終わり、とエンドクレジットで知り、えぇ!と驚いた。やっと見たのに、早くも続編が気になって仕方ない。


余談:15年前に上海から杭州へと列車でお茶を買いに行ったことがある。富陽市で下車しなかったが、付近に小舟が行きかう河が流れており、お茶卸市場には人びとがあふれ活気づいており、お茶は青茶も花茶も黄茶もどれも美味しかった。  photo:gift当選したジャスミン茶と龍井茶

春江水暖


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?