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対話と怒りと多様性

久しぶりにことばを失った。

怒りに手が震えた。


対話をしよう。
対話がしたい。
心の対話。

対話って本当にそもそもしたいのか、私。

そこから私は疑問に思ってみる。
本当に私は対話がしたいのかしら。
本当はしたくないんじゃないかしら。
「しなきゃ!」と思ってしてないかしら。
しなくちゃいけないものとして「ラベル」を貼り付けていないかしら。


困った時には全て私はひっくりかえす。

おもちゃ箱をひっくり返すように

元々ある「こうするべき」にとらえられてないだろうか。

ひっくり返してみると、ふだん箱の底に埋もれて忘れかけていたあのおもちゃが出てくるかもしれない。


私はそれをじっとただ見つめてみる。
ほこりだらけになったおもちゃを
普段は見ないようにしているその子を
そして、その子の心の声を

耳を澄まして聞いてみる。



私のよわくてやわくて息をひそめているものに

私はそっと耳を傾ける



対話はこわい。

自分がどんどん自分じゃなくなる

自分だけならなににも脅かされることはない

あなたは違う

あなたは間違ってる

あなたはおかしい

みんな私とは違う心のカタチをしている。

共感なんてない。

共感されてもそれは同じ景色を見ていない

そして共感されてもまた傷つく

「お前に私の何がわかる」

見たこともないくせに
わかってもいないくせに
よく言うよな

人間は人と違っていても傷つく

人と同じと言われても傷つく


何をしても、関わるだけで傷つくのだ。


それでも私は語り続ける。

「あのとき何を言うべきだったのだろう」と思い返す。何も言うべきことばなんてなかったのかもしれない。ことばは上滑りして、ただ、ことばなんてなくてそこにいればよかったのかもしれない。「言うべき」ではなく逆に何かを「言わない方が」よかったのかもしれない。

うまくしゃべることもできないくせに

私は黙っていることもできない愚かな生き物だ。


しかし、黙っていることも愚かではないのか。


「あなたの考えを言ってくれないとわからない」

私は人に対してよくこう言ったりする。夫に対しても言う。


沈黙はイエスでもなくノーでもない

それは卑怯だと言う人もいるかもしれないし、私もそう思っているところもある。


しかしその行動は


ただただ、容易に早急な判断をしないように、真剣に考えたいからこそ、今は寝かしてるのかもしれない。懸命にその想いを受け止めている最中かもしれない。


そして、忘れた頃にギフトのように

必死に届かせてくれようとしているのかもしれない。


あるいはそれは利他なのかもしれない。


ただ、聞いてくれていること。

そのありがたみを私は見失っている。


「特に今は何も言うことはない」

「でもあなたのことは好きだよ」

夫に言われたことがある。


ふと小さな木の窓から夜空を見上げてみた。


月は痛みを伴った私たちを平等に照らしている。

深い夜の色はやはり沈黙している。

気持ちや意識が混沌としていく。




多様性が受け入れられないと、ある人は言う。

世の中なんてダメなやつばかりだ。
みんな努力しなさすぎるし
頭を使わないで平然と暮らしている

だから、そんなやつらと闘わないといけない

世の中は戦争なんだと。


こんな気持ちにふれて
ことばを失ってしまった私は


きっと世の中にたくさん期待をしているんだと思う。


あなたはなぜ多様性を大事にしたいんですか?
と問われれば
私の答えは一つ


「あの人が大事だから」


あの人もあの人もあの人も
私は身の回りの
好きな人たちを大事にしたい


そのためには多様な社会が必要であると私は思っている。

多様性なんていらないなんて
はっきり言って甘えであるとさえ思う。

自分が優秀で
自分1人の能力だけを信じて
他の人なんかいらないなんて思うようなあなたも

きっとどこかで
依存して
愛されて
助けられて
助け合って
いるのだと思う。

それこそ多様な社会で救われている。


そして光の当て方で

優秀だと思い込んでいるものは

とたんに影になり

それは幻のようなものになるのかもしれない。

そんなものでこいつはいるこいつはいらないと、一体誰がそれを決める権利があるのだろうか。


そして、そんなことを言っている
「あなた」でさえも

私は大事にしたいから

まだ信じたい。

そして叫び続けたい。

血が出ても傷が深くなっても
この身が怒りでひき裂かれてしまっても

まだここに立ち続けていたいのだ。



ほこりをかぶったおもちゃを
丁寧にはらいながら
私はぎゅっと抱きしめて
おもちゃ箱に戻してみた。

まだ大丈夫。まだ進めるよと。

先人たちの声が小さく聴こえた気がした。

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