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だってそういうものだから

ジンジャーエールの中の氷は透き通って反射して細やかな泡がついて、まわすとカラカラと音をたてて存在している。

氷は、口に入れるとたしかに存在していて、冷たく、舌にはりつき、舌の感覚が麻痺してきて、冷たさに耐えきれず、カラコロと口の中を所在を求めて移動するうちに、お互いに温度が向き合って下降し上昇し、ある接点で氷は気づいたら存在を消している。

冷たさと違和感と麻痺した舌は、さっきまで確かに存在していた氷のことをあらわしているかのように、ヒリヒリとした感覚で私に知らせている。

溶け合ったものはたしかにここにいたんだよ、と。


毎日をただ過ごしているこの体に、こびりついた熱さや厚さ、匂いや、重さ、はがゆさ、じりじりとした、がんがんするような、さむざむしい、渇いているこれは何なんだろう。

どうか、ひっぺがしてほしい。

力強く、思い切り。

剥がされた時に、どう思うだろう?

あぁせいせいした?

それとも、こんな姿を見ないで?

あなたを包んでいたものもあなた?あなたはどこまでがあなたなの?あらためて見る世界。そのままの姿で何を感じますか?


粘土のように壊される。

壊されることは快感でもある。壊された形のないもの。それも、また美しい形。

形あるものが正解?正解を探すことを求められている?

また作り出す。毎日作るしかない。何が正解かわからないまま無我夢中で作る。作る過程を楽しむ。ある時は大きく、ある時は緻密に。ある時は大胆に、ある時はしなやかに。

作り方は自由。とにかく壊して作る。粘土が見せてくれる。粘土がきっと在り方を教えてくれるから。正解なんてものはきっとない。


時には溺れてみる。

逆らわずにたゆたう。海月のようにふわふわとまかせる。動かなくても動かされる。動かさなくても動いていく。

深いと息苦しい。酸欠が苦しくも心地よい。ここでしか見えない世界がある。潜った人しかわからない。

また光の世界へ戻る。やあ、あたたかいね。寒さを知るからあたたかい。闇を見たから光に気づく。


私がおそれているのは

「だってそういうものだから」

抗うために刺激を受け取る。知識に迷う。人と交わる。見えないものを知覚する。破壊を望み、あの日の痛みを蘇らせる。そして作る。再構築する。

受け取りながら、今日も過ごす。

思考を止めずに、踏み出して前にすすむんだ。









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