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時速40kmの罪

今日は当て所もない話。

そしてあまり気分が良い話ではない。


毎日、車に乗って街のあちこちを走っている。

仕事で走っているから、という訳でもないが普段から安全運転を心がけている。

市街地を走ることもあれば、農道のようなのんびりとした道を進んでいくこともある。

ある区間の話だが、その道は「スピード違反」の取り締まりをしていることで有名であった。

田んぼに囲まれていて見通しが良く、行き先に向かってまっすぐのびている、私が思うに美しく牧歌的な道だ。

運転していると大変気持ちが良いため、思わずスピードを出しすぎてしまう人の気持ちも何となくわかる。

私はある利用者さんの家に行くときに、週1回その道を通っている。

その際は制限速度の「40km」をかなり意識している。

その理由は明確である。なぜなら私は警察につかまりたくないのだ。

警察につかまると私は仕事に支障が出て、待っている利用者さんや会社に迷惑をかけてしまう。それは申し訳ない。

こんな所で隠れている警察に対して正直あまり良い気持ちを持てない。そんなことして、お前らは自分の仕事に誇りを持って働いてるのか。だますようなやり方して卑怯者め、と思う。取り締まりをすることでどれくらい効果が出ているのかと思う。「こういう取り組みをしてるアピール」はもううんざりだ。

ゆっくりのろのろ走っていると、後ろからかなりの確率であおられる。路肩に寄せるにも農道のような道で、反対車線も意外と走ってくるのでなかなか難しい。

私は心が狭いので、あおり運転者に呪いをかける。

あおり運転をするやつなんか、1日1回小指をタンスの角にぶつければいいし、トイレで毎回トイレットペーパーが切れていればいいし、夜寝る時必ず不快な蚊の音が聞こえるようになればいいと思う。

不幸になってしまえ!と願う。

大げさでなく世界なんかほろんでしまえと月に1回くらいは思う。

時速40kmのゆっくりとした破壊衝動。


でも反対の立場だったらどうだ。

もし仮に・・今私の後ろにいるあおり運転者が「妻が出産中で病院に向かっている夫」であったら。「急いで荷物を届けないとお客さんに怒られる運送屋さんだったら」「家族が終末期で病院から呼び出されて向かう最中だったら」

警察も仕事でやっている。自分がやりたくてやっている訳ではない。治安を守るために身を粉にして自分の役割をまっとうしているだけだ。


こんなことを考える私、消えてしまいたいと思う。これは月1回じゃない。もう少し頻度は多い。

規則を守るのは?私は優等生面しているだけだ。優等生ではなく優等生面しているのは、ただたんにみんなに周りにごちゃごちゃ言われたくないだけだ。ごちゃごちゃ言われるのははっきり言ってうざったい。

それに私は間違っているのだ。

1番大事なのは安全運転をする事。

事故を予防して私や相手を守ること、だ。

警察につかまらない事が1番の理由になる私は、やっぱりおかしいと思う。呪いをかける私は心が狭いのだ。


でも大人になって「これはこう思わせる取り締まりのシステムがいけないのではないかな」とも思い始める。

事故を予防する大切さをもう少し上手い形で、提案できないのかなとも思う。

ため息をつく。

つくづく嫌な大人だ。

大人になると言い訳ばかりが上手くなる。

こんな自分にうんざりする。

うんざりするけど、40kmの速度で今日も私は私と付き合っていかなければいけないのだ。

私は今日もゆっくりと走る。

じりじりと監視され追い立てられながら。


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