支援の狭間2(狭間の類型)
支援の狭間について,社会福祉の対象が拡散するに従って本来救済・保護・支援するべき人々が逆に見失ってしまっている状態となっていると言われています.それは,社会的排除論として最近よく論じられています.詳しくは,岩田正美先生が『社会的排除』有斐閣で詳しく書かれているので興味がある方はぜひ,手に取っていただきたいと思います.あるいは,wikiで「社会的排除」でも良いかと思います.
今回は,高良麻子先生が一時期,まとめていた支援の狭間の類型を紹介して,実際にどのようなものがあるか見ていきたいと思います.
高良先生は支援の狭間の内「制度からの排除」に注目しています.例えば,社会福祉施設に限りがあるために必ずしも入所や利用が出来るわけでは無いといった社会資源の問題,利用制限などです.
この制度の狭間は大項目として「サービスの給付要件外」と「要件内」とウチとソトに分けられます.
要件外とは,専門的支援が必要だと考えられるがサービスの給付要件外に該当しない人です.例えば,急激な社会の変容に伴う新たなニーズに対して,制度が対応しきれず,サービスの空白や未整備となっているケースです.例えば,暴力加害者,知的障害のボーダー,不法滞在者.あるいは同じような生活問題を体験している難病者でも障害者総合支援法の街灯になっていない人などです.
サービス給付要件内でも,1.サービス不足,2.サービス利用制限,3.サービス提供組織優先,4.アクセス困難が挙げられます.
サービス不足とは,そのまま,必要時にサービスの空きが無く利用できない人.例えば,介護老人福祉施設への入所の待機問題,発達障害の相談窓口が少ない,高齢者と児童は福祉サービスがあるが,若者が少ないなど.
サービス利用制限とは,地方公共団体による利用制限によってサービスが利用できない人.予算内の運用や省力化により,サービスの提供が制限されている.例えば,生活保護の適正化,行政での余計なサービス提供が阻まれるなど.
サービス提供組織優先とは,そのままの意味で,利用者の抱え込みで利用者本位が阻害されること.リスク回避のために困難事例を受け入れないなど.
アクセス困難とは,そのことによってサービスが利用できない状態であること.情報や知識不足,たらい回しでサービスに行き着かない,バスなどが利用できないため窓口にいけないなど.
これらの制度による狭間は,複合的に起こっています.例えば,知識不足(アクセス困難)と利用制限によって,生活保護の受給が水際で排除される.サービス不足によってサービス提供組織の意志が優先されてしまう等です.
このことを踏まえて,次回以降には,組織や個人が生み出す支援の狭間の類型について紹介していきたいと思います.
参考文献
岩田正美(2008)『社会的排除』有斐閣
高良麻子(2010)「福祉政策にもとづく制度から排除された人々への支援」『社会福祉学』 51 (1), 3-17,
高良麻子(2012)「福祉政策にもとづく制度から排除された人々への有効な支援の検討」『東京学芸大学紀要. 人文社会科学系. II』 63,315-325,
高良麻子(2017)『日本におけるソーシャルアクションの実践モデル』中央法規
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