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通訳論

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手話通訳の仕事内容や、仕事をする上で大切にしている思いについて述べた記事集です。
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2022年10月の記事一覧

つい…で私に話しかけないで〜無意識の無視

 今回は、日本語のプロの方々の素敵な記事からお話をしたいと思います。  お二人の記事から、いつも勉強させていただいています。 既に記事に書かれている通りなのですが、自分の経験を少しお伝えしようと思います。 仕事で感じる違和感 私は手話通訳者です。仕事でよく感じていること。 私(通訳)に対して話さないで そもそも通訳は回答を持ち合わせていないのです。 通訳に話しかける医師  病院の通訳に行くと医師がよく通訳者に向かって話してきます。 百歩譲って通訳ですから「伝えてく

通訳って誰のため?

 私たち手話通訳者は依頼者からよく言われます。 「ろう者のために手話通訳を付けることにしました!」 私はいつもこの言葉に違和感をおぼえています。 通訳の目的を考える ろう者の世界も当然いろいろな人がいます。 生活の怒りを通訳の派遣事務所にぶつける方もいて、職員に手を上げ警察沙汰になったことも。 警察と通訳  警察は職務遂行のために通訳をつける義務があります。 都道府県域の派遣センターと連携する決まりになっていて、予算も取ってあるのです。  更に私のような一介の地域通訳

失われそうなコミュニケーションが復活するとき

 「“ありがとう” をやりがいに仕事をしている。」 そんな方もいるかもしれません。 でも、私はそれとは違う“やりがい”を見つけたいと思っています。 通訳の現実 私の仕事は手話通訳ですが、聴者の世界と当然同じく、ろう者にも色々な方がいます。 家族に暴力を振るう人もいれば、公的機関に当たり散らす人、犯罪を犯して取り調べを受ける人もいれば、金銭問題で訴訟を起こされる人もいます。  彼らが皆、私たち手話通訳に感謝する訳ではありません。 そんなアウトレイジな人でなくとも、私の気持ち

「相手の視点に立つ」一緒に考えてみませんか?

 手話通訳の派遣事務所には、このようなFAXが日常的に届きます。主に70〜80代のろう者です。彼らは日本語が不得手なだけで、自分で考えて自分で行動できる手話話者です。  今回は手話通訳の私が、他言語話者(ろう者)からの日本語のFAXを読み解く中で「相手の視点に立つ」をどのように実践しているかをお伝えします。  彼らは不得手ながら日本語話者の私たちに分かるように送ってくれています。その思いを汲むところから、仕事が始まります。  難しいですが手話技術は要りません。皆さんもよろ

事例から「相手の視点に立つ」を考える

 相手の側からものごとを見る。そうは言っても何をどうすればいいのか…。  100%は無理ですが、それでも思いを馳せることが良いコミュニケーションに繋がると信じています。 この記事では私が仕事の中で実践している事例をご紹介します。 『「相手の視点に立つ」一緒に考えてみませんか?』の第二弾です。 “日本語が第二言語の人” からのFAX 私は手話通訳者です。 今回も、手話が第一言語のろう者が日本語で書いたFAXを読み解きます。日本語は第二言語なので私たちとは違う表現をします。言