見出し画像

走れなかった4年生たちへ

明けましておめでとうございます。
我々箱根駅伝ファンのお正月は1月3日に明けるので、このタイミングでの新年のご挨拶です。
 
さて、この記事を書いている今、絶賛箱根駅伝ロスに陥っており、きっとそのような方が多いのではないでしょうか。
しばらくは感傷に浸りつつ、次のレースを楽しみに我々も動き出していきたいところです。
 
今回は、毎年箱根駅伝が終わった時に思っていることを書きます。
走った選手はもちろんなのですが、個人的に一番注目してほしいと思っているのが、箱根駅伝の16人のメンバーから外れてしまった4年生たちの存在です。そこには箱根駅伝の本体と同じくらい奥深い物語があるのです。
 

12月上旬のメンバーエントリー


箱根駅伝をこよなく愛する皆さんであれば既にご存じかと思いますが、この箱根駅伝とは毎年12月10日前後にメンバーのエントリーがあり、出場する各校の16名が決定します。

この16名という数字、本当に狭き門です。
私が國學院大學にいた4年間の話にはなりますが、当時の國學院大學陸上競技部は長距離の選手だけで約60名。その中から選ばれるのは16名。
他の大学の事情は分かりませんが、大学によっては長距離の選手だけで100名を超える大所帯もあると聞いているので、非常に狭き門であることが分かるかと思います。
この16名に入ることができなければ箱根駅伝を走る権利が無くなってしまうのです。

16名を選ぶにあたっては各校の監督が非常に悩むところであり、力が拮抗していればいるほど誰を選ぶのかという難しい選択を迫られることになります。
そして、この16名のエントリーの段階でメンバーに入ることのできなかった4年生は、留年をしない限りは箱根駅伝への道が閉ざされてしまうのです。そのことを考えると12月上旬は、箱根駅伝を目指す選手にとっては箱根駅伝予選会の次に現実を突きつけられる日でもあるのです。

エントリー後も続く戦い


箱根駅伝に出られないからといって、メンバーから外れた人たちが何もしないわけではないのです。メンバーに課された使命は「当日までいかにベストな状態に調整するか」なのですが、外れた部員たちの使命は「走るべき選手がベストを尽くすために、いかにサポートしていくか」にあります。

そのためサポートに回る選手たちは、自分たちの学業や競技を行っていくことと並行してチームの目標達成のためにいかに選手を支え、チームとして万全の状態で箱根駅伝を迎え、そして当日は選手の給水や沿道での情報伝達など、それぞれの役を全うしていくのです。
 

複雑な想いの中で


この記事の本題はここからです。
ここで考えてみてください。16名から外れた4年生は、もう箱根駅伝を走ることができません。
箱根を走るために自分の4年間の全てをかけてきたのに。
夢が夢のままで終わってしまったのに。
一番近くて遠い場所になってしまったのに。
目の前に夢の舞台があるのに自分がそこにいられないという悔しさや悲しみがあるでしょう。

それでもチームのために、共に過ごした仲間のために、自分が走れない思いを選手に託して最後まで選手と共に戦う。この複雑な気持ちの中で1月2日を迎えるのです。
揺れ動く複雑な思いの中で、それでもチームのために走る選手を支えていく。自己犠牲を美化するでも称賛するでもなく、その姿はただただ強く美しいものだと。

我々には見えていないところにこのようなストーリーがあると思うと、自然と涙が止まらなくなるのです。
 

嘘のない4年間


こうして箱根駅伝が終わり、4年生たちの箱根駅伝にかけた人生も終わりの時を迎えます。ある者は引退し、ある者は実業団へ、それぞれの人生を歩んでいくことになります。

ここから先は私個人の思っていることになります。
確かに大学駅伝は結果を残してこそやりがいや面白味があります。だからこそ周りの大学生が遊んでいる間もひたすら大学駅伝に向き合い、覚悟を持って4年間を過ごしているのです。そして、そんな中で結果が出ないなら、意味がないというのも当然分かります。
それでも、そんな中だからこそ自分が過ごしてきた4年間に間違いはないと信じて欲しいのです。過ごしてきた4年間に嘘はないと。

社会は厳しいもので、正直、元箱根ランナーだと言っても「ああそうなんですね、はいはい」くらいのテンションでしか接してくれません。
実際私も以前の職場で「普通の人より走るのが速いだけだろ調子乗んな」というようなことを言われたこともあります。現実はそういうものです。それでも、自分には箱根に向き合ってきた4年間があったから何があっても乗り越えられたのだと思います。それくらい箱根駅伝と向き合うということは大きなことなのです。
 

終わりに


願っても叶わなかったのに。
もう二度と戻ることのできない場所なのに。
それでもなお、苦楽を共にした仲間のために。
襷を託した仲間のために。
想いひとつでこの2日間を駆け抜けてきた4年生に最高の敬意と感謝を。
そして、この経験がいつか、人生の中で自分の支えになるように願ってやまないのです。
 
4年間お疲れさまでした。
すべての4年生に幸あれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?