創作①　「断じて、私は太っていない」

体重は70キロだが、断じて私は太っていない。
ただ、ぽっちゃりと見えるだけである。

その私が、昨年の健康診断で60キロ台の体重になった。
170㎝の、60歳の私にとって、
何と数十年ぶりに見る数字である。

その時の私の歓喜たるや、想像してもらいたい。

私は勝手に、理想体重は65キロだと公言している。

20代の頃は50キロ台だった体重も、
結婚、そして年齢とともに成長し、
今や見事70キロ台になっていた。

それが、何と70キロ台を切った。

これは理想体重に近づけるチャンスだ。
次の健康診断で65キロを目標に決めた。

1年で65キロを目指すことに決めたのである。

年が明けて68キロまで下がった体重も、
夏には72キロまで復活した。
復活、おめでとう。
いやいや、増えてどうする。
今年残り4カ月で7キロなら、1ヶ月で2キロのペースか。

そんなことを考えている時に、コロナにかかった。
食欲がないこともあり、
体調が落ち着いた頃には、2キロ落ちていた。
計画どおり。目指せ65キロ。

だが、そんな甘いものではない。
食欲が戻るとともに、
体重も戻った。
おかえり、こちらの世界へ。
いやいや、帰ってどうする。

10月に入り、残り3カ月で7キロ減量。
1カ月で3キロ、10日で1キロ。
イケる。大丈夫。

長年の目標が達成できる時がきた。
いよいよ、その時が来た。
私は、滲み出る気持ちを抑えられずにいた。

頑張ろう。

あっ！

その時に気がついてしまった。
健康診断が10月であることに。

昨年も10月だった。
今年いっぱいと、途中で勘違いしてしまった。

どうしよう。
でも、1カ月で7キロは無理だ。

もうだめだ。

失意のどん底に打ちひしがれた私は、
失った希望を埋めるように、
食べ続けた。