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煙草についての思い出。喫煙所、雨の中で

僕はむかし、よく、煙草を吸っていた。


銘柄は、メビウスプレミアムメンソールオプションパープルの5ミリ。


今は気管支炎などで吸わなくなったが、
僕は煙草が好きというより、
煙草を吸っている時間・空間に救われていた感覚が好きだった。


廃人のような生活を送っていた大学生の頃、ゼミ終わり、
最上階にある喫煙所で
煙草を吸っている時間が好きだった。

そこには、ゼミの先生と、当時の親友がいつも一緒だった。


僕らは「いや〜、疲れたな〜」とため息をつきながら、
煙草に火をつけて、ゆるく語り合った。

雨の日、目の前に降り注ぐ雨を眺めながら吸う煙草が好きだった。


少し寒かったけど、
それ以上に、その瞬間が好きでたまらなかった。


親友はもともと、煙草なんて吸わない人だった。

真面目で、大人しくて。

でもいつからか吸うようになった。

きっかけは分からない、失恋だったのだろうか。

僕も振り返ると、
なぜ煙草を吸い始めたのか、あまり覚えていない。


友人から一本もらったのがきっかけだったっけ。


僕らはいつも、きっかけを忘れてしまう。

すごく、大事なはずなのに。


それから社会人になり、起業もし、
僕は煙草を吸わなくなった。


気管支炎が理由だったと思うが、
なんだろう、最初にやめたきっかけは別にあった気がしている。


たしか、当時好きだった人から
「もう吸わないで」と言われたんだっけ。


なんとなくそんなシーンを覚えているのだが、
薄い、輪郭しか思い出せない。



練馬で事務所を構え、
BtoBでの事業をメインでやっていた頃、常住スタッフが3人いた。


なぜ練馬かというと、
そのうちの2人が練馬に住んでいたからだ。

1人は大学生で、仙台からわざわざ練馬に来てくれた。

大学の長期休みを使って。


彼はもともと、
僕の講座生であり、初期のコンサル生だった。

なので結構長い付き合いになる。

練馬での思い出を全て話し始めると
時間が尽きるためここでは割愛するが、
彼もまた、煙草を吸っていた。

セブンスターだった。

遅くまで一緒に仕事をして、
彼はよく、ベランダで煙草を吸っていた。


ある日、「一本吸います?」と彼は言った。

僕は久々に煙草を吸おうと思い、一緒にベランダの外に出た。


外は雨だった。

静かで、暗くて、何もなくて。

煙草に火をつけて、外に目を向ける。

「なんか、今この瞬間のことも、そのうち思い出になるんだろうね」

僕は思ったことをそのまま口にした。


彼もいま、練馬という
縁もゆかりもない土地で過ごした日々のこと、

そして、深夜によく一緒に煙草を吸っていたことを、
唐突に、思い出したりするのだろうか。


僕はよく、思い出している。


煙草は体をむしばむ。それは事実だ。

僕も過去の喫煙分を考えると、
2年くらいは寿命が縮んだかもしれない。


でも、その2年を差し出したとしても、
煙草を通して手に入れた思い出には価値がある、と思っている。


全ては書ききれないけど、
煙草を吸っている間に救われていた自分もいるのだから。


またいつかどこか、何かのタイミングで、
誰かの煙草を一本もらいたい。


−ブログやメルマガに書くまでもない話
(by 20代起業家)

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