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エキノコックス報道について②

報道後にTwitterのTL上で大きな波紋を呼び、少しエキセントリックな内容まで見られるようになりました。140文字と言う制約に中で書くと、どうしても事実の羅列で強い口調になりがちです反省しています。本来ならエキノコックスについて詳細に書いた後に対策を書くところですが、先に対策を書いて、時間があればその行間を埋めたいと思います。

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上の図(福井新聞記事より抜粋)はエキノコックスの生活環、感染経路についてです。ここで大事なことは犬やキツネは終宿主で症状はほとんどないのに、人では長い時間をかけて症状が出ることです。さらに犬やキツネでは100%効く薬があるのに、人での治療は手術により病巣を取り除くこととなります。そして、病巣が取りきれない場合は死亡率が極めて高いと言うことです。
ではどのように対策はなされているのでしょうか。

エキノコックス対策はどうしてる?

北海道での対策ですが、行政対策として毎年400頭前後のキツネが解剖検査がなされ、毎年の新規患者数等の情報とともに公表されています。この20年ほどは北海道全域の40%前後のキツネが感染し、毎年20人ほどが新規患者として公表されています。HP上でも色々な注意喚起がなされています。

北海道では年間20例ほどですが、国が注力するには少なすぎる数のため、予算はそれほど多くないのです。しかし、北海道の方々の努力によって下げ止まっているのです。道民には小さい頃から教育がなされ、環境もなんとか整備されています。

①人への対策

・野山から帰宅後は手を洗い、衣服や靴についた泥もよく落とす
・キツネ、犬にえさを与えない
・残飯やゴミを放置しない
・キツネを餌づけや接触をしない
・生水を飲まない
・野山の果実や山菜などを口にする場合、流水でよく洗い、十分熱を加える
などの教育と環境整備がなされています。

②キツネへの対策

・ゴミ捨て場の管理
・生ごみやコンポストなどが荒らされていないか確認
・残飯や生ごみ、犬や猫のエサを放置しない。
・キツネを近づけない
・餌付けは絶対に行わない
キツネや野犬が無闇に近づかないような環境を作り、自宅周辺にエキノコックスを持ち込まれないようにしているのです。

③犬への対策

・放し飼いはしない(野ネズミを食べる可能性)
・散歩では必ずリード(引き綱)を使用
・拾い食いをさせない
・犬を触った後は必ず手を洗う
・糞便を必ず持ち帰る
・飼い犬の感染が疑われる場合は、お早めに動物病院を受診
キツネと違い、ペットとして飼われている犬への対策としてこれらのことが行われています。広い目の届かない場所があるのに放し飼いをさせない、他人のを触った後は必ず手を洗う、自分のペットの糞便は必ず持ち帰るなど、当たり前のことをしているだけです。その上で、ペットの不調がある場合は動物病院で獣医師による適切な医療を受けることがとても大事です。

北海道での対策まとめ

北海道での対策は当たり前のことを当たり前にやる、ただそれだけです。しかし意外と難しいことなんです。キャンプ場やパーキングでゴミをそのままにしていませんか?キツネや犬が可愛いからと餌付けしようとしていませんか?帰宅前に靴についた泥をしっかりと落としていますか?これらのことが小さい頃からしっかりなされていることで年間20人程度で済んでいるのです。

愛知県(特に知多半島)ではどうすればいい?

ここからが本題です。じゃあ、今の状況で愛知県、特に知多半島ではどうすればいいのでしょうか。ペットや野良犬の駆除なんて過激なことをTwitterで言っている方もいますが、そんなことは必要ありません。
北海道での対策で書いた通り、当たり前のことを当たり前に徹底して行うだけです。エキノコックスは本州では馴染みはありませんが、獣医師、医師の国家試験では頻出問題なので知らない獣医師/医師はいません。この地域でペットとして飼っている飼い主は何かあれば獣医師に相談に行きましょう。

どんな時に犬の感染を疑う?どう治療する?

犬はエキノコックスの終宿主です。犬ではほとんど症状がなく、たまに下痢が見られる程度です。虫卵や成虫も小さく、成虫が糞便中に出て来ることもまれです。もし白色で長さ1~4mmの虫体や1mm以下で楕円形のものを見つけたらすぐに獣医師を受診してください。「プラジクアンテル」と言う薬がエキノコックスの成虫に100%の駆虫効果があります。しかし、糞便中に虫卵が残るため、「プラジクアンテル」投与後は数日の間、糞便を適切に処理する必要があります。
そう、「プラジクアンテル」を投与し、糞便を適切に処理するだけなんです。
そして、うちの子にはそんな虫はいないなんてそんな幻想はありません。

環境対策はどうする?

早急に教育を徹底することです。小さい頃から北海道で行っているような教育を徹底させることで、これが当たり前になります。大人への教育はゴミ対策と衣服や靴の泥などをしっかり落としてからその場を離れると言うことです。意外とできていないんですよこれが。
後はとにかく調査が必要です。これは行政頼みになりますが、いつも通りの定点観測ではなく、本当はどれくらい広がっているのかを確認しなくてはいけません。その数で本当に足りているのか、他の地域には本当にいないのかなどを徹底的に調べなくてはいけません。
このSNSでヒートアップしているこの時期に、徹底的な調査をすることが大切です!

その他の対策は何かある?

マスコミやボランティア、野次馬は安易にこのエリアに入ってはいけません。素人がこのエリアで適当に活動し、衣服や靴に虫卵が付けたまま元の地区に戻ると、その地区で拡散します。自身が発症することもありますし、発症するのは5〜20年後です。さらに適切な嚢胞除去ができない場合は死亡率はとても高い感染症です。
調査が終わるまでは水辺での活動を控える、野山に無闇に入らない、ペットを放し飼いにしないくらいの対策は必要でしょう。
行政は野良犬やネズミの対策も必要でしょう。「プラジクアンテル」を混ぜた餌の散布も必要になるかもしれません。

エキノコックス報道をどう考えるか

この報道を聞いてからすぐにTwitter上で発言したため、ややエキセントリックに捉えられたかもしれません。人に感染すると長い期間をかけて人の体内で増殖し、肝嚢胞などを形成し、死亡のリスクがあります。そのため早急な対策が必要と考えてのツイートでした。
過去にペットの犬や野良犬の殺処分などの処置が取られた歴史もありますが、現時点では不要だと考えています。エキノコックス自体はとても怖い感染症です。しかし、北海道では年間20例程度の発症に抑えることができています。教育と環境整備です。そのためには当たり前のことを当たり前にやることが大切です。

まとめ

あまりにTwitter上でエキセントリックなTLが流れてきたため、早急に書かねばと思い殴り書きのような記事になってしまいました。重複しますが、当たり前のことを当たり前にやることがとても大切です。
獣医師の先生方、北海道でエキノコックスを診療されている先生方、訂正や補足などがあれば教えていただけるとありがたいです。


今回も無料記事にしています。特に営利目的では書いていませんが、投げ銭をいただければエキノコックス対策のできる然るべき場所への支援に回していこうと思います。

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