孤独なあなたへ

2023年1月25日

 読書家なのだから書けるでしょう、と人は言う。いやむしろ、本を読めば読むほど自分の文章のダサが分かるからつらくなるのだ。わざわざ私が書く必要がない程この世は才能で溢れていることを知る為、ますます書くことから遠ざかる。もう、おもしろいとか、かっこいいとか、どうでもいい。凡人は凡人なりの、平凡な日常を綴るだけだ。

 月が魚座にあったので、不安を煽るフィクションを見てもいいかなと「不滅のあなたへ」というアニメを見た。評判は聞いていたが陰鬱そうなので避けていた作品だ。

※以下「不滅のあなたへ」1話のネタバレを含みます


 物語は‘’球‘’視点で始まる。それが何なのかは1話では明かされない。それははじめ石になり、次いで怪我をして息絶えたオオカミの姿に擬態する。オオカミの姿になったそれはあてもなく歩き、ひとりの少年と出会う。その少年はオオカミをジョアンと呼び、一緒に暮らしていたことをうかがわせた。

 少年はひとりだった。見渡す限りの雪原に少年が暮らす家があり、それ以外の家は崩壊し雪に埋もれていた。村のみんなは楽園を探しに出て行ったらしい。楽園へ行ったみんなを探しに、少年はジョアンと共に家を後にする。この時点で少年に死亡フラグが立っていて全くそのとおりになってしまうのだが、悲壮感漂うオーケストラや、少年の慟哭が泣かせにかかる。だが、孤独や死を悲しむだけの話ではないようだ。

 少年は『最高に自由』な旅に出た。みんなが帰ってくるのを待つのではなく、先の見えない雪原の更に先へ、何があるのか自分の足で確かめに行った。あそこはきっと危ないよ、ここにいたら安全だよと留まるのではなくて『きっと悪いこともあるだろうけど、それでも世界を知りたいんだ』と。村のみんなが居た形跡が雪に埋もれ絶望し、旅で負った怪我が悪化し亡くなった少年を、かわいそうに、とは思えない。私もこの少年みたいに生きたい、とか恥ずかしげもなく思う。



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