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初詣と家族

 過ぎ行く1年に感謝を捧げ、また新年の無事と平安を祈願する初詣に、今年も多くの人が足を運ぶ。
 例年、学生がどのように年末年始を過ごしたのか話を聴くのは楽しみのひとつでもある。普段はあまり「家族」を口にしない学生から、家で共に過ごした様子から「家族」をほんの少し感じることができる。
 初詣を家族と必ず行くという「家族」、初詣に「家族」とともに行く習慣はまるでないという話が出てくる。あたりまえといえばあたりまえのことなのだが、ゼミの中で話してみると「え、そうなの?」とお互い新鮮な事実に出会ったという表情を向けながら「家族」について語り合う。
 初詣に行ったという話のなかでも、色々な気づきがあって興味深い。
〇いつも初詣に行くと、自治会のおっちゃんらが、「甘酒」を用意して待っていてくれるのだが、今年は、本当の「お酒」だった。何故、「甘酒」をやめてしまったのだろう。とはいえ、自治会の皆さんが頑張ってださっていることをあらためて思った。
〇昨年までは、屋台が一台くらい出ていたのに、今年は真っ暗だった。
一つのグループだけが神社の前で目立っていただけで、人通りもほとんどなく超高齢社会をまのあたりにした。家族でそっとお参りして帰った。
などなど。
 
「自身の家族」について、日々キャンパス内で繰り広げられる会話のなかで学生はお互いどれだけのことを話す機会があるのだろう。

 「家族」は多様である。
 生物学的な親子ではないものの一定の法的承認が論議される「社会的親子」、ウルリッヒ・ベック (著), エリーザベト・ベック=ゲルンスハイム (著), 伊藤 美登里 (翻訳)の「愛は遠く離れて――グローバル時代の『家族』」で描かれる、国際カップル、結婚移住、家事労働移民、国境を越えた代理母、生殖補助医療がもたらす「家族」、あらゆる多様性を内包し、様々な現象をもとに描き出したworld familiesなる「世界家族」という概念定義にまでふれると、あらためてその奥深さを痛感する。
 生殖補助医療における体外授精は1978年にRobert G. Edwards氏が成功させてから、2010年にノーベル医学生理学賞が授与されるまでに32年かかったのは生命の萌芽は受精から始まる、ゆえに、そこに人為的な操作を加えることは許されないとするローマ・カトリック教会の厳しい反対があったという。 
 白血病に侵されている娘の命を救うためにドナー(提供者)に適合する新たな子どもを、体外受精で作る(遺伝子操作)という2009年公開のアメリカ映画「私の中のあなた」で、子どもをつくることを目的にした医療における「生まれてくる子の同意が得られない」という生命倫理の問題を突きつけられ思考を深めると、その「厳しい反対」の意味をほんの少しだけだがわかるような気持ちになる(わかっていないのだが)。

私の中のあなた

 大分、話がそれてしまった。
 1973年の第1回から 5 年ごとに同じ質問、同じ方法で世論調査を重ねることによって、日本人の生活や社会についての意見の動きをとらえる「日本人の意識」調査がある。2018年に行われた第10回「日本人の意識」調査結果概要から、45 年間にわたる調査を通して、明らかになった意識変化の主な特徴の一つに「職場、親せき、近隣の3つの人間関係において、『なにかにつけ相談したり、たすけ合えるようなつきあい』を望む人が長期的に減少している。最近の 5 年間では、親せきでさらに減少した。こうした密着した関係を望む人は、職場で最も多く、近隣で最も少ないという関係は 45年間変わっていない。」がある。

つきあい方

図引用https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20190107_1.pdf 
 学生の「家族」「親せき」「友人」の話を聴いていても、あるいは、フィールドでお話を伺っていても、本当にそうなのかと思うふしがあるので、また、お伝えしたい。
 今週もお疲れさまでした。

#初詣 #家族

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