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『植物は〈知性〉をもっている』

著者 ステファノ·マンクーゾ
   アレッサンドラ·ヴィオラ
訳者 久保耕司

【要約】

私達は、人間の驕りという高い垣根を
想像力で飛び越える必要がある。
さもないと、自分たちが植物に完全に依存しているということも、植物は見た目ほど“受け身”ではなく、むしろ彼らの世界、さらには私達の世界のドラマにおける“したたかな主人公”なのだということも理解できないだろう。

第1章 問題の根っこ

●植物研究は軽んじられている
 バーバラ·マクリントック
「動く遺伝子」で1983年ノーベル賞受賞
 ゲノムは固定的で変化することがないと考えられていたが1940年代にトウモロコシを使った一連の実験によりこの原理を覆した。が、ノーベル賞受賞に40年もかかっている。
植物についての発見だったからだ。

第2章 動物とちがう生活スタイル

●「動かない」という錯覚
「速い」「遅い」という尺度は絶対的なものではない。
それでもやはり、人間は「速く」、植物は「遅い」といえるだろう。
●植物なしでは私たちは生きられない
「植物は地球と太陽とをつなぐ環である」
クリメント·チミリャーゼフ
食べ物、空気、エネルギー。
人間が植物に依存している基本的な要素三つだけでも、植物を「崇め奉る」動機としては充分だろう。
薬についても考える。植物は薬を作るために欠かせない基本材料だ。
それだけではない。
植物をそばに置いておくことで、ストレスの軽減、注意力の増大、病気からの早い回復といった効果があることが分かっている。
植物をただ見ているだけで心が落ち着き、リラックスできることが、生理学的な測定によって明らかにされている。

第3章 20の感覚

●根っこの視覚
根の部分にも光を感じる力がある。
ただし葉と違って、根は光が大嫌いだ。葉は光の方向へ向かって成長していこうとする「正の屈光性」根はどんな光からも急いで遠ざかろうとする「負の屈光性」と呼ばれる。
落葉性の植物は冬眠に入る。植物では「休眠」と呼ばれるが、意図するところは動物の冬眠と全く同じだ。
●トマトの嗅覚
植物は「におい」正確にいえばBVOC(Biogenic Volatile Organic Compounds=生物由来揮発性有機物)の微粒子によって、周囲の環境から情報を得たり、植物どうしや昆虫とのコミュニケーションをはかったりしている。
トマトは、草食の昆虫に襲われると、数百メートルも離れた場所に生えている他の植物にも警告が届くほどの大量のBVOCを出す。●ハエトリグサの味覚
●オジギソウの触覚
●ブドウの聴覚
音楽が流されるなかで育ったブドウは、全く音楽を流さずに育てられたブドウよりも成熟が早いうえに、味、色、ポリフェノール含有量の点で優れたブドウを実らせた。
低周波数(100〜500ヘルツ)がいい影響を与える。
●植物には、さらに15の感覚がある!

第4章 未知のコミュニケーション

●植物どうしのコミュニケーション
物質の放出によるコミュニケーションは、植物ならではといえる。
植物も、触れ合ったり、独特の姿勢をとったりして、近くの植物とコミュニケーションをとることができる。
植物は攻撃や防御を行う前にライバルの素性を調べ、遺伝子が似ていると分かったら、手を組むことを選ぶ。
●植物と動物のコミュニケーション
ライマメはナミハダニから攻撃を受けると、揮発性化合物を放ちナミハダニを餌としているチリカブリダニを呼ぶ。
トウモロコシはハムシの幼虫に根を攻撃されるとカリオフィレンという物質を作り、助けてくれる線虫を引き寄せる。
花粉の配達人として、「虫媒」「動物媒」「鳥媒」「コウモリ媒」がある。どうやってそれを行っているかはまだ分かっていない。

第5章 はるかに優れた知性

●知性の境界線
「多くの動物は知的である、なぜなら、他の動物を利用して食べ物を手に入れたり、言葉を作り出し、いろいろなタイプの問題を解決する能力を示しているからだ。」「植物に、これと同じことはできないのか?」もちろんできる。
確かに人間の知性は、細菌や単細胞の藻類の知性よりもはるかに優れている。ただ、その違いも、結局は量の違いに過ぎず、質の違いではない。
もし知性を「問題を解決する能力」と定義するなら、境界線を引くことなど不可能だ。
●根端はデータ処理センター
脳は本当に知性の唯一の生産の場なのだろうか?
植物は個々の器官に機能を集中させずに、体全体に機能を分散させたモジュール構造の体を作り上げてきた。
根端は根系を構成する他の無数の根端とネットワークを築いている。

おわりに

植物はどこからどう見ても知的な生物だ。
植物は、地球上の生命にとって必要不可欠な要素というだけでなく、人間の知性への素晴らしい贈り物でもあることは疑いない。

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