三浦春馬 出演ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」(上)

地面すれすれに落ちた気持ちのまま、日々を過ごしている。
基本、何事に対しても、あまりやる気が出ない。
何か問題があったわけではないけれど、何だか仕事も嫌になってしまったな、辞めたいな、辞めないけれど、みたいな感じで、あらゆることに対して熱意とか集中力とかも下がっている気がする。
これはよくない。

そろそろ「カネ恋」についての思いを言語化してみよう。
最終回が放送されてから、色んな感想が世に溢れていたが、正直言って、私が思ったような感想を表明している人はあまり見あたらない気がして、自分の思いは異質なのかもしれない、それを世に放つことは良くないことなのかもしれないと躊躇い、とりあえず、自分の思いには蓋をしていた。
しかし、思いをそのまま欝々と抱えているだけでは、私のサニティを保てそうにないとも思い始めた。
今も、この記事の公開を迷っているが、何か吐き出したら変わるのかもしれないとも思い、ここに置いていく。
考えが合わなかったらサラッと流していただければありがたい。
また、辛くてまだ「カネ恋」を観ることができない方、今も気持ちが沈んでいる方は、私が更に下の方へ引っ張ってしまうかもしれないので、無理せずに読むのは控えてもらっても良いかもしれない。

春馬君が春馬君に見えない。

亡くなる直前までこのドラマの撮影を行っていたこともあって、春馬君が亡くなったすぐ後、結構、このドラマのヴィジュアル広告がテレビでも映っていた。

「え、三浦春馬君なの?」
これは衝撃的だった。
髪型のせい?表情のせい?修正され過ぎ?
それまで、春馬君を熱心にずっと追ってきたわけではなかったので、直近の彼の様子はよく知らないし、何が違うのかもよく分からないが、私の記憶にある三浦春馬君はこんな感じではない。
このヴィジュアルだけ見せられたら、私はこの男性が誰だかわからなかっただろう。
申し訳ないが、それくらい、私には違う人に見えてしまった。

そしてこの動画。
動いている春馬君を見れば、ようやく「あぁ、春馬君だな。」とは思えるところもあれば、表情によっては「ん?」と思うところもある。
ずいぶんと痩せて頬がこけたように見え、目の見開き方に違和感を持った。
すごくショックだった。
どうしたんだろう、何が起こっていたんだろう。
何がどうしたかは本当にわからないが、私の知っていた三浦春馬君とは、何かが違っている。

代役を立てず放送へ、絶対に見届ける。

その後、TBSは春馬君の代役は立てずに、脚本を書き換え、話数も変更し、放送を行うことを決めた。
絶対に観る。
最後の春馬君がどうだったのか、見届ける。
そんな思いで、放送を待った。

「カネ恋」はラブコメディだ。
そして、春馬君の演じる猿渡慶太は、破滅的にお金にルーズだけれども、明るく前向きな御曹司。
ここまで「陽」の要素が強いキャラクターを、春馬君はこれまで演じたことがあっただろうか。
一般的に、シリアスで泣かせる演技よりもコメディで笑わせる演技の方が技術が必要で、難しいと言われている。
慶太を演じるにあたっては、天真爛漫に見えるように、明るさをどう突き抜けさせるか、突き抜けさせても金持ちの嫌味な感じや、傍若無人に見えないようにするにはどうしたらいいか、キャラ設定、声色、セリフの間合い等、結構考えたのではないかと思う。
どちらかと言えば、難しい役作りだったのではないか。
私の期待値はブチ上がっていた。
春馬君が亡くなってから「カネ恋」の放送まで、春馬君の出演作をたくさん見て、もう春馬君の演技には1億%以上の信頼を置いていたし、コメディだって出来ることも観て知っている。
きっとこの「カネ恋」でも、最高の演技を見せて、笑わせてくれたらいいなと思っていた。

第1話「私達は日々お金に振り回されている」

清貧女VS.浪費男!! 最悪で最高の出会い!! 夏恋始まる。

初登場シーンは、ジョルジオ・アルマーニでのショッピングシーン。

「あはは、かわいいなぁ。」
「どっちが似合うと思う?俺もそう思ってた。両方頂戴!」
「このシャツ色違いある?両方下さい!」
「(金額がぞろ目で)ビンゴォウ!(ブラックカードを出して)お願いしまっす!」

おっ…、おぅっ。このファッションにこのテンション、このドラマではそう来たか。声は高めで行くんだな。店を出た後、スキップしてる。正直、いきなりこれはキツいぞ…。

金持ち御曹司だから、衣装はハイブランドを使っているのだろうけど、これってちょっとイタい感じを醸すために、ワザと格好良さからハズしてると理解して良いのだろうか。ジョルジオ・アルマーニのブルーのシャツも、サンローランと思しきオレンジのシャツも、ブラウンのスーツはポール・スミスだろうか、どれもこれも、格好良くなり過ぎないようにしているのか。あえての帽子とか。衣装合わせの時と体形が変わってしまったからなのか、それとも、細身の体を強調させないようにシルエットの大きめな服を着ているのか、服のサイズ感も合っていないような気がする。本来ならば、春馬君は着飾らせたら最高にカッコいい人なんだけど、あえてのこのファッションということでイイのだろうか。

バーベキュー用の皿を買おうと「ここで買っちゃおうよぉ!」と「よぉ!」にアクセントを置くのも、出来もしないのにラッパーの物まねをしたときのように、「Hey, Yo!」みたいなチャラいノリを出すためか。今までの春馬君に無いノリで面食らう。ウィンドウ越しに玲子さん(松岡茉優さん)に向かって微笑みながら会釈する春馬君。貴方の笑顔は尊い。店を出てお皿を持って走る時、肩が上にあがるせいか、余計に肩から胸にかけて骨張った感じが強調される。ドラマの中の春馬君は、私には、春馬君っぽく見えるところもあれば、春馬君っぽく見えないところもあったりで、その行き来がちょっと辛い。

慶太のお父さん(草刈正雄さん)に呼び出されての、出張費についてのやり取りは、セリフを言う間合いもよくて面白かった。このあたりから慶太のテンションに慣れてくる。

このドラマでは、ビジネスとしてのリアルさは排除しているのだろう。実際、700万も会社の金使いこんでたら、まともな会社なら、例え社長の息子であろうと、ただの異動では済まず即刻処分がなされるだろうし、その異動先が経理だなんてあり得ない。そう思っていたら、後から、慶太は何が経費かそうでないのかわからなくて全部自腹だと言う。さっきの700万円も自腹なのか。会社の金を使い込んでいるというわけでもないのだろうが、業務の為に私費をつぎ込むのもどうなんだ。本話の終盤で明らかになるガッキー(北村匠海さん)の出張費や通勤費の不正申請も、ここでガッキーに何かあったらストーリーが進まないからだろうが、サラッと済まされている。実際はそんなわけにはいかない。もっと言うと、そんなおカネにまつわる不正をしているのに、経理に所属している人に恋心を抱くとか、よくわからない。

カフェテリアでの玲子の隣に座って、3つ目のお弁当を袋から出すときに、口を大きく開ける慶太。春馬君ファンならおなじみの、口を全開にして笑うあの顔ですよ。ここで見れるとは。顔をくしゃっとして笑うのも良いけれど、私は口全開で笑う春馬君の方が好き。

「甘いの冷たいの温かいの、全部飲みたいじゃん?トライアングルで飲みたいじゃん?」

そんなに一遍に飲み物を摂る方ではないが、人生のどこかで、このセリフを言ってみたい。

酔って、まりあ(聖蘭ひとみさん)に会いに行く慶太。酔ってるならば、もっとぐでんぐでんの演技をしてくれた方が、慶太の可愛さは倍増したのではないか。「鶴瓶の家族に乾杯!」に出ていた春馬君が、日本酒を飲んで相当酔っ払ってしまったところを見たが、喋り方とかすごい可愛かったぞ。あの上目使いの「やっぱり好き。」。あれだけでもクラっと眩暈がするぐらい良かったが、私にとっては中途半端だ。本来の、本気を出した三浦春馬はあれどころではない。もっと、人たらしっぽく、甘~く言うこともできたはずだ。ほら、やっぱり私はジェシーとか佐伯広斗君とか、色気のある役を演じた春馬君が好きだから、どうしてもそっちに寄せたいと思ってしまうけど、慶太はそういうポジションには寄り切らないのか。あぁ、もったいない。このドラマのテーマは「じれキュン」らしいが、私には「じれキュン」では物足りない。焦れてる場合じゃない。もっと勢いよく「ズッキューン!」とハートを撃ち抜くぐらいに、眩暈どころでなく気絶するぐらいの、甘い甘い甘~い三浦春馬の一面をここで出して欲しかった。

「30超えた男がクネクネと。体幹すこぶる弱し!」と玲子に言われる「ね~!」と慶太が言うシーンは、本当に気持ち悪いと思わせるぐらいにクネクネしてて良かった。(それぐらい演技ができているという意味での褒め言葉です。)

全然関係ないけど、金継ぎ、やってみたい。

早乙女クリス健(三浦翔平さん)のセミナーで、居眠りをする慶太。寝ながら「うぁっ!」って寝言を言う慶太。あるある、そういう時。玲子さんか大きなバッグを抱えて慶太の前を通り、慶太が「何よ~。」と言う。「な・に・よ~」の「に」だけが下がる。「な」にアクセントを置かなかったのはなんでかな。

倒れたガッキーを介抱し、話を聞く。このシーンのセリフの言い方、難しかっただろうな。慶太っぽく突き抜けた明るさを出すか、ガッキーの身の上を知ってシンパシーを寄せるように言った方が良いのか。結果、ポジティブの方向で行こうとしたんだろう。

蕎麦屋での春馬君は良かった。店員さんからお蕎麦を出されて、聞き取れるかどうかわからないぐらいの小さい声で「ありがとうございます。」って言う。そういう謙虚さ、丁寧さがあるのが慶太なんだ。その後は、セリフもなく、お蕎麦を食べて、ガッキーらの表情を見て、お小遣い帳に「かけそば 180円」と書いて、またお蕎麦を食べる。そして、少し微笑む。目の緩め方、目線の持っていき方、口角の上げ方、顔の上げ方、春馬君の演技最高。慶太は二人から何かを感じ取った。何も言わなくても、そんな慶太の思いが伝わってくるようだ。

第2話「その恋、投資する価値アリですか?」

15年間の片思い!! 涙の告白…

玲子のママや慶太の「15年」の言い方は、何でああなのだろうか。じゅう・ご・ねんの「じゅう」の「う」で一回下がって、「ご」にアクセントが付いて「ねん」で下がる。特に慶太が玲子ママに言う所では「じゅうご」まではフラットで、「ねん」で上がっていく言い方の方が面白くなりそうなのに。

経理部の人たちに、頼ったりねだったりする慶太。「イケメン×甘えん坊」なにげに最強説、その説に異論はないが甘え方が幼い。もうちょい大人の甘え方してくれないか。その方が、三浦春馬の魅力がアップするはずだ。指サックをはめて、親指と人差し指をパチパチさせるの、イイね!

「シャツを着ないと乳首が見えちゃうから!消費だよね!」

ここは笑いを誘うべく設定されたセリフだろう。もっとバカっぽく、ぶっきらぼうな感じ、例えば、サンシャイン池崎みたいな勢いで言ったらかなり面白味が増しただろう。そんな風に春馬君が言ったらイメージダウンでは?と思うかもしれないが、大丈夫。春馬君の持ち前の上品さが効いてちょうどよくなる。むしろ、そのギャップが笑いに転化するだろう。

ガッキーの映画デート中の

「僕がおごったポイントで勝手に映画を?え?え?それ違くない?絶対違くない?6回見たら1回無料だから、今日はタダで観られるねって二人で行くのが筋ってもんじゃない?それ位の空気読めない?」
「ポップコーンぐらい自分で買えよ!」

とモノローグが面白い。慶太のママ(キムラ緑子さん)が創業者の父親の肖像写真(画?)に向かって

「パパ~~~~~っ!あの子、ファザコンなのに~~~~っ!」

が面白い。早乙女がテニスコンペに来ると知って、頭が横に震えるほどの衝撃を受ける玲子さんが面白い。再び、テニスする前、早乙女への玲子さんの貢ぎっぷりを呆然と見つめ、玲子が早乙女にハマっていることに気づき、慶太をガン見するガッキー。慶太がやがては会社の経営を任されていると豪語した後の、眉間にしわ寄り気味の無の表情のガッキー、面白い。玲子さんのショットが決まった後の「っしゃ~~~っ!」の一声が面白い。2話目で、大島里美さんの脚本の面白さが出てきた感じがする。去年の夏、大島さん脚本の「凪のお暇」では、まんまと私はゴンの沼にハマったものだ。私は春馬君のセリフで、春馬君の演技で笑いたいのだ。このドラマでも、私は慶太の沼にハマりたい。

結局、買ったグリーンの猿柄アロハ、あれはすごく似合っている。これを着ているときの春馬君はカッコいい。「慶太、行っきまーす!」は「アムロ、行っきまーす!」からだろう。企画を投函した巨大目安箱もザクっぽかったし、ガンダムへのオマージュか。そのアロハ着て、オフィスでまりあの彼氏に名刺を渡した後の、慶太パパを見る表情。っかわいいなぁ~~~~!この笑顔は一生取っておきたい。パパをじっと見つめての笑顔、ニッと口を開いての笑顔。貴方の笑顔に乾杯(何それ)。あの名刺に書かれたアドレスにメール送ったら、慶太から返事来ないかな。

まりあに「本当にあいつでいいの?」と尋ねるシーン、玲子に「ほっといてください!」と言われた後のシーン、豆皿を渡そうとしたのに玲子に早乙女の話をされて渡せずじまいだったシーン、早乙女に誘われる玲子を見て、自分が描いた猿の絵の小皿をポケットにしまうシーン、やっぱりこういう人の心の機微を表現させたら上手だ。

小皿を売ってる店の店員(店主?)が安齋肇さんなのだけど、1話、2話ではちょっとしか出てこない。無駄遣いとまでは言わないが、安齋さんの面白さを十分に活かしきれていないように感じた。この先もストーリーが続いていたら、安齋さんが良いスパイスとなって笑いを展開してくれたのだろうか。だとしたら、すごく惜しい。

洋服をミシンで縫っている時、コンコルド効果の説明をまりあにしている時、玲子が来ているTシャツ、デビッド・ボウイの写真がプリントされて、その上に「デビッド・ボウイーー」と片仮名で書いてある。何だよ、この細かい芸は!ストーリーが進んでいけば、どこかで玲子がデビッド・ボウイ好きであることの回収がなされたのかもしれない。これも勿体ない。

小皿に猿の絵を描いているとき、チラッと画面の端に猿柄のグリーンのアロハが映る。そうか!慶太は小皿に猿の絵を描くとき、アロハの猿をお手本にしたのかもしれない。このドラマには、そういう細かい伏線がいっぱい仕組まれていたのかもしれない。そして気づかないまま、回収しきれないままで終わってしまったのもあるかもしれない。残念だ。

この2話から、大島さんの脚本の面白さにキレが出てくる。それから、実際に登場人物がセリフを言うのではなく、視聴者に想像させるところ(玲子ママが慶太に豆皿の話をしたのだろうが、そのシーンは出てこない。)とか、そういう手法を使ってくるのも面白い。

最後に、慶太と玲子が帰ろうとして、玲子が「焼けますよ。」と言い、慶太が「ですね!」と言うシーン。玲子は日に「焼ける」という意味合いで言ったのだろうけど、慶太は「妬ける」の意味合いで返事したのではないか。慶太の玲子への恋は、このあたりからもう始まっていたのかもしれない。豆皿に描いている最中から、玲子のことを考えていたのでは。だから、玲子に豆皿を渡せなくて、あんな顔をしたんだろう。

次へ続く。

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