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いちごミルク

メリア「あ! 見てください、ますたー! いちごミルクがありますよ!」

敗斗「なるほど。いらん」

メリア「なんでですかぁー!!」

敗斗「ええい、しがみ付くな暑苦しい! 今日はスーパーに食料を調達に来たんだ! いちごミルクは食料ではない!」

メリア「でもでも! とってもおいしいんですよー!?」

敗斗「必要性を感じない。水分の最高効率は水だし、糖分を摂るならブドウ糖が最高効率だ。脳はブドウ糖で動くからな」

メリア「むずかしい話はわかりませんけど、いちごミルクは飲みたいです!」

敗斗「交渉力ゼロか! 少しは俺をその気にさせてみろ!」

メリア「ますたーをその気に……。え、えーっと……いちごは、とっても甘くて、おいしくて……」

敗斗「ふむ……。今日は豚肉が安いな」

メリア「ミルクと混ぜるととってもきれいなピンクになって、見てるだけで幸せになりますし……」

敗斗「結局、米だな。日本人の炭水化物は米に限る。保存もきくし、少し多めに買っとくか」

メリア「それに、ほら……えーっと……」

敗斗「問題は野菜か……。野菜の最高効率はブロッコリーと聞くが、調理が面倒なんだよなぁ……。切らないといけないし、煮ないといけないし……」

メリア「ますたー! わたしの話、ちゃんと聞いてますかぁ!?」

敗斗「え? なんだって? ……っと。スマホにメールが」

遊部『難聴系主人公っスか! てか、なんでそこに百合ちーいないんスかぁ!!』

敗斗「……(そっとスマホを仕舞う)」

メリア「ますたー? どなたからだったんですかー?」

敗斗「気にするな。ただのハッカーだ」

メリア「と、とにかく! いちごミルクは世界を平和にするんですっ!」

敗斗「いちごミルクがなんかの宗教みたいになってるが大丈夫か?」

メリア「ううー……。買ってくれないと、また『すたー◯っくす』でいちごのドリンクをおねだりします!」

敗斗「なん……だと……」

メリア「ううー……」

敗斗「……(ス◯バのフラペチーノは、およそ600円前後。対して、スーパーのいちごミルクは特価で88円。500円以上のアドバンテージがある。今後、高額ドリンクをねだられることを考えると、「あの時、いちごミルク買ってやっただろ」の一言で余計な出費を避けられるのはでかい。そしてそれ以上に、こんなしょうもないことを考える時間を大幅に削減できる。俺の頭脳は500円程度の儲けを考えるために存在しているわけがない。となれば、今こうしている間にも俺は”損”をし、現在進行形で損失を計上し続けていることに――)」

メリア「うぅ〜……」

敗斗「……仕方ない。買ってやろう」

メリア「え! ほんとですか、ますたー!?」

敗斗「ああ……。俺の頭脳が人質に取られてしまったんだ……。この件は、ここで『損切り』すべきなんだ……」

メリア「い、いったい、この短い間になにがあったのでしょう……」

敗斗「俺はもう、今後一生、いちごミルクは飲まない!」

メリア「あ。じゃあ、ますたーにはコーヒー牛乳を買っておきますね♡」

敗斗「……そういうことじゃないんだよ」

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